私道負担とは? トラブルはないの? 私道に接する土地を買う際のメリット・デメリット

最終更新日 2022年07月20日
私道負担とは? トラブルはないの? 私道に接する土地を買う際のメリット・デメリット

道路には「公道」と「私道」があります。そのうち私道に面している土地に家を建てる際には少し注意が必要です。そんな私道にまつわる注意点や基礎知識を不動産コンサルタントの田中さんに教えてもらいました。

「公道」と「私道」の違い

「公道」「私道」よりもまず「建築基準法上の道路」かが重要

国や各自治体が所有している道路が「公道」と呼ばれるのに対して、それ以外の、個人や団体等が所有している道路は「私道」と呼ばれます。

「公道」は国や地方公共団体が所有し、道路整備などを彼らが行います。対して「私道」は所有者が行います。通行の許可の権限も所有者にあります。これに起因して注意すべき点があるのですが、それは後でまとめて説明します。

「それよりも家を建てるなら、まずは『建築基準法上の道路』かどうかを調べる必要があります。公道であれ私道であれ、建築基準法上の道路ならば、その道路に面した土地に家を建てることができます。中には『通路』としか認められていない公道や私道もあります。その場合は家を建てることができません」

建築基準法上、建築物の敷地は「幅員(ふくいん。要は道路の幅)4m以上の道路に2m以上接しなければならない」と定められています。いわゆる「接道義務」です。それが公道か私道かは関係ありません。

ちなみに4m未満の道路でも建築が認められる場合もあります。「例えば昔は幅が一間(約1.8m)など4m未満の道路が多かったのですが、その中には建築基準法ができる前から周囲の人々が道路として使っている道もあります。それらの中には建築基準法上の道路として認められた(建築基準法42条第2項)道路もあります」

その他にも建築基準法の43条の但し書きにより、建築基準法上の道路でなくても建築が可能な場合もあります。まずは、建築することができる道路かどうかを、各自治体の窓口で調べるようにしましょう。

よくある私道のパターンと私道の所有者について

私道はさまざまな事情によって生まれるため、いくつかパターンがあります。その中でもよくある3つのパターンを下記に挙げてみましょう。

よくある私道のパターン

よくある私道のパターン

上記のような私道でよくあるのは、地主や不動産会社が所有する土地を分譲地として販売する際に、道路をつくったケースです。

誰が私道の所有者になるの?

私道の所有者は以下の3つが考えられます。

(1)地主
(2)土地を購入した人々の共有名義
(3)土地を購入した人々で私道を分筆して持ち合う(下記図参照)

土地を購入した人々で私道を分筆
土地を購入した人々で私道を分筆
黄色が私道。Aの敷地の所有者がa、Bはb……というように私道に面する土地の所有者同士が、私道を分筆して(分割して)持ち合う。自分の土地の目の前の私道部分を所有することもあるが、図のようにあえて別の所有者の土地の前の私道(飛び地)を所有(ex.Fがaを所有)していることが多い。

(2)の土地を購入した人々の共有名義になっている私道とは、マンションに例えた場合、ゴミ置き場やエレベーターのような共有部分だと捉えると分かりやすいでしょう。一方(3)の土地を購入した人々で私道を分筆は、一見特殊なケースに思えるかもしれません。

「ところが30年ほど前までは(3)土地を購入した人々で私道を分筆して飛び地で所有することが意外と多かったのです。他の所有者との関係が悪化しても、私道の通行上の不利を被らないようにお互いが牽制する意味合いがあったようです。しかも理由ははっきりしませんが、図のようにランダムに持ち合うことが多いのです」

「私道負担」とは?

接道義務を果たすための私道を負担する

不動産の広告で「私道負担」という言葉を見かけたことはないでしょうか。私道負担とは、敷地内に私道部分が含まれていることを示す言葉です。中でも多いのは接道義務を果たすために道路を広げる、つまり敷地の一部を道路(私道)とすることで、道路の幅を4m以上にするケースです。

セットバックのある私道負担
セットバックのある私道負担
現状の公道が2mだった場合、その道路に面したAとBはそれぞれ道路の中心から2mセットバックすることで道路幅を4m以上にする。上図では真ん中が公道だが、私道のケースもある。

これまでは宅地として使用していなかったので道路幅は問題なかったけれど、宅地として造成した際に図のようなセットバックをしないと接道義務を果たせないという場合に、こうした「私道負担(セットバック)」が必要になるケースがあります。こうした土地は販売時に「私道負担(セットバック)」などと広告等に記載されていますし、不動産会社からも説明されるはずです。また既にセットバックされている中古住宅を購入する場合も引き続き「私道負担」する必要があり、セットバックした私道には何も建てることができません。

また先述した(2)土地を購入した人々の共有名義にしている私道や、(3)土地を購入した人々で分筆している私道に面した土地を購入する場合も、「私道負担」があるということになります。

例えば上記図の(2)土地を購入した人々の共有名義の私道に面した土地を購入する場合、購入者は売主の代わりに敷地以外に私道の負担分も購入して共有名義に加わることになります。そうしないと、下手をすれば私道を通行できなくなるリスクを負うことにもなりかねません。

(3)土地を購入した人々で私道を分筆の場合も、売主が所有している私道部分のみ買わないこともできますが、将来不都合が生じる可能性もありますからたいていはセットで購入することになります。

私道負担部分の税金はどうなる?

私道には固定資産税がかかります。先述した私道の所有者別に言えば(1)地主がすべて所有している場合は地主が支払う義務があります。自分の敷地をセットバックしてつくった私道も同様です。(2)共有名義の場合は名義人それぞれが所有する持ち分割合を支払います。(3)分筆した場合は、それぞれ所有する私道部分の固定資産税を支払います。

同様に私道を取得すれば不動産取得税が、都市計画法の市街化区域内に指定されていれば都市計画税が、相続すれば相続税がかかるのは他の土地の場合と同様です。

私道であっても、各自治体に申請して『公衆用道路』と認められれば固定資産税・都市計画税・不動産取得税が非課税になります。公衆用道路とは一般公衆の交通のために利用されている道路ということです。公衆用道路かどうかは、私道の登記簿謄本の地目に『公衆用道路』と載ります。そうでない私道は地目が『宅地』となっています」

土地を購入する場合は売主の納税通知書も見せてもらうといいでしょう。「納税通知書には売主の所有する土地と建物の地番が載っています。地番に「非課税」とあればその私道が公衆用道路として認められていることになります」

公道か私道かを調べる方法

公道か私道かを調べるには、各自治体の役所へ行って確認することができます。また公図(土地の形状や地番などが分かる地図。法務局で入手できる)で調べる方法があります。「公図で道路のような形をしているけれど地番(土地につけられた番号。住所とは違う)がついているところは私道です。公道は地番がありません」

私道には地番がついている
私道には地番がついている
図の黄色の部分は私道。「道」とある水色の部分は公道。このように私道には地番が振られている

私道に面した土地を購入するときのデメリット

道路や水道などのインフラ整備の負担が必要なケースも

では、私道に面している土地を所有している場合のデメリットについて紹介します。

公道の道路整備や上下水道本管の配管・整備は各自治体が行いますが、一般的には私道所有者の許可を得て、私道や所有している土地の配管や整備などの維持管理を行うことが原則です。

道路が荒れていたり水道管の本管が老朽化していても、私道所有者以外の人が勝手に道路を直したり水道管本管を修復したりすることはできませんし、実際に修繕等を行うか否か、費用負担をどうするかなど私道の利用者が合意しないと実行に移せません。私道が共有名義なら名義人全員の同意と費用の負担が必要になります。私道を分筆した場合も、工事が私道全体に及ぶ場合は同様です。

「最近問題になりがちなのが、こうした道路や水道管の老朽化対策です。分譲されたころは老朽化する将来のことまであまり考えられていなかったこともあり、維持管理の負担方法などについて全く議論がなされていないことが多いのです」

なお、公道+セットバックで一部私道を負担しているケースでは、配管に関する費用負担は本管から自分の土地へ引き入れる部分のみになります。また、自ら私道を提供している部分は自分の所有ですから、だれかの許可を得る必要はありません。

土地を売買する場合には注意が必要

私道の所有者が地主など一人の場合は、敷地のみの売買ですから他の土地の売買とほぼ同じです。共有名義の場合は、先述した「私道負担」の通り、買主は私道の共有名義部分も取得することになります。飛び地として私道部分がセットになっている場合は、買主は私道部分を買わないということもできますが、後述する後のトラブルを避けるためにもセットで購入しておいたほうがいいでしょう。

「飛び地として私道を持ち合っている土地の購入を相談された場合、購入前に持ち合っている所有者全員に、通行の自由や掘削の自由などを書いた承諾書に捺印してもらうようにしています。そうすることで後のトラブルを防ぎやすくなります」

私道の所有者との関係がトラブルの元になることも

私道には所有者がいますが、所有者との関係が悪くなると通行や、道路等のインフラ整備に制限がかかる可能性があります。

「例えば通行させない・自動車の通行は認めない・通行料を請求されるなど、私道を使いにくい状況になる場合があります。その私道が建築基準法上の道路であれば、裁判で勝てる可能性が大きいですが、そもそも裁判をする費用や手間がかかりますし、裁判をすることで所有者との関係がさらに悪化する恐れもあります」

また現所有者との関係が良好だったとしても、相続や売買などで所有者が変わった場合に関係が悪くなることもあります。道路整備などインフラ整備も、関係が悪化するとうまく整備ができなくなる可能性もあります。

「もちろんすべての私道でトラブルが発生するわけではありません。ただし私道に面した土地にはこのようなリスクがあることだけは知っておいた方がいいでしょう」

私道に面した土地のリスクのまとめ

以上の私道に面した土地のリスクを、所有者が誰であるかという観点から、次のようにまとめることができます。

(A)所有者が一人の場合
通行の自由やインフラ整備は私道の所有者次第です。特にインフラ整備は所有者あるいは利用者が費用を負担せざるを得ず、そこで暮らす人の思うように進まないこともあります。特に昨今は水道管の老朽化対策が必要ですから、そうした私道に面する土地を購入する際は確認しておきたいところです。

(B)私道負担(セットバック)の場合
道路の真ん中が公道で、敷地をセットバックして私道を足すことで接道義務を果たしている場合は、私道部分のみインフラ整備の負担を追います。道路を挟んで対面する2戸の家がそれぞれ2mずつセットバックして私道をつくった場合、目の前の家の人との関係に注意を払ったほうがいいでしょう。道路の真ん中が地主など第三者の所有する私道だった場合も、その第三者と良好な関係を築くようにしましょう。

(C)共有名義や分筆の場合
通行の自由もインフラ整備も、共有名義や分筆している人々との関係が左右する可能性があります。先述のように、田中さんがオススメする『分筆による持ち合いの私道に面する場合は、分筆で持ち合っている所有者全員に、通行の自由や掘削の自由などを書いた承諾書に捺印してもらう』といいでしょう。またインフラ整備の費用はどのように捻出するのか、マンションの修繕積立金のような仕組みがあるのかなど確認したほうがいいでしょう。

このように私道に面した土地を購入する場合はいくつかのリスクがあります。とはいえ、たいてい私道に面した土地は比較的手ごろな価格であるというメリットもあります。私道だからといって怖がらず、どんなリスクがあるのか事前に調べてから購入を検討するようにしましょう。

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取材・文/籠島康弘 
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