注文住宅を建てるときやリフォームをするとき、階段の照明をどうするかは意外と迷うポイントです。階段の照明も家の雰囲気にあったおしゃれなものを選びたいものですよね。今回は階段照明を計画する際のポイントを、株式会社YAMAGIWAの武川さんに教えてもらいました。
階段照明の場合、何よりも忘れてはいけないポイントは安全性。階段の最初の1歩と最後の1歩は、住宅の中で事故が多い場所と言われているそうです。
「住まいにとって安全であるということは最も大切にすべき点なので、階段照明を計画する際も、まず優先すべきは安全性です。
安全性を考えた場合、照明は暗すぎたり、眩しすぎたりしないものを選ぶのがいいでしょう。夜、寝室からトイレへ移動するときなど、安全に歩くためには段差がしっかり見える明るさは必要ですが、眩しい光が目に入るのは危険です」(武川さん、以下同)
次に、安全性に加え、メンテナンス可能かどうかという点も忘れてはいけないポイントだといいます。
「お客様からの階段照明の相談で多いのは、取り付けた照明器具に不具合が生じたり、電球の取り換えが必要になったときに、手が届かず対処できないというものです。最近ではLEDが主流となり、電球の寿命は長くなってきたものの、やはり照明器具のメンテナンスは必要なものですし、意図せず壊してしまうということもあります。そういった場合に、脚立を立てられる平場の上や、手が届く場所に照明器具があれば交換が安全でスムーズです。計画を立てる段階で注意しておく必要があるでしょう」
安全性やメンテナンスのしやすさを考えて照明を選ぶことが大事ということですが、階段ではどのような照明器具が使用されることが多いのでしょうか。階段で使われる照明について、それぞれの特性や選ぶ際の注意点を見てみましょう。
ブラケットライトは壁に取り付ける照明で、一般的に階段でよく使われる照明です。
「階段にブラケットライトを使用する場合、光は上下に廻ったほうがいいので、ガラスやアクリルなど、透過性のある素材を選ぶといいと思います。透過性のない金属性のものでも、多方向へ光が十分に出るようなものであれば構いませんが、上方向へだけ、細い光しかでないようなものの場合、階段の照明としては不向きといえるでしょう」
また、壁付けになるブラケットライトは、奥行きのあり過ぎるものだと、歩行の邪魔になったり、物を運ぶときにぶつかって壊してしまう可能性もあります。安全性を考えて、奥行きのないものを取り付けることが一般的だそうですが、どうしても奥行きのあるものを取り付けたい場合は、気をつけて使用する必要があるそうです。
ペンダントライトは天井からつるして取り付けるタイプの照明です。天井に取り付けるものなので、前述した通り、安全に手が届くような位置に取り付けられるかどうかは気をつけたいポイントです。
「踊り場がないストレート階段の中央にペンダントライトを取り付けてしまうと、照明器具のガラスやアクリルが割れたときなどに、メンテナンスに大変な費用がかかります。では、中央ではなく、2階の下り口にペンダントライトをつるせばいいかというと、天井の高さとの兼ね合いで、コードを長くつるすことができないということがあります」
安全性とバランスを考えると、階段の形状によっては使用するのが難しいペンダントライトですが、階段の上部に十分な空間があれば、ペンダントライトをつるしてアクセントにするというのもおしゃれな方法です。
ダウンライトは天井などに埋め込むタイプの照明で、空間をすっきり見せることができます。
「ダウンライトは、光を広げずポイントに光を落とす集光型と、全体的に光が広がる拡散型がありますが、階段全体明るくするためには、集光型のものではなく、拡散型を選びましょう。集光型のものを階段の上り口、下り口、中央などの複数カ所に取り付けるという方法もありますが、ペンダントライトの場合と同様、ダウンライトは天井に取り付けるタイプのものなので、踊り場のないストレート階段に複数取り付けるというのは避けた方がいいでしょう」
フットライトは壁の下の位置に取り付ける、足もとを照らす照明です。
「夜間の歩行の安全確保のために、フットライトを階段に取り付けるのはオススメです。上り口と下り口付近、上下に2つあれば十分ですが、いくつ取り付けてもいいと思います。フットライトだけでなく、ブラケットライトなどと合わせて使用するといいですね」
さまざまな照明器具の中から、自分の住まいの階段の形に合わせて、どのようなものを選べばいいのか、階段のタイプに合わせて、照明計画のポイントを見てみましょう。
玄関ホールなどから、直接上階へ上がるホール階段ですが、壁に覆われている独立性の高い形状の階段の場合、定番のブラケットライトを使用することが多いそうです。
「途中に踊り場がある折り返し階段でも、まっすぐに上り下りするストレート階段でも、ブラケットライトを設置する場合は、最初と最後の壁面に一つずつ取り付けるのが一般的で、折り返し階段の場合は、踊り場付近にもう一つ追加することもあります。ブラケットライトに加えて、フットライトを取り付けると、より安心です」
リビングを通って二階へ上がるリビング階段は、独立性の高いホール階段と対照的に、オープンな形のものが多くなります。
「リビング階段は壁に覆われたホール階段よりも、照明計画の自由度は高くなります。階段がリビング空間の一部になるので、リビングから光をもらうことができる場合は、階段に間接照明を取り入れることも多いです。例えば、手すりの下にライン上の間接照明を入れたり、スケルトン階段の場合は階段下にスタンドを置いてフットライトのような使い方をすることもできます。
また、リビング階段は階段自体のデザイン性が高いものも多いので、階段のデザインを際立たせるために、あえて照明はシンプルに、ダウンライトにするという方法もありますね」
リビング階段であれば、間接照明やペンダントライトを使って演出性の高い照明にするもよし、壁に囲まれたホール階段であれば、ブラケットライトのデザインで個性を出すのもよし。安全性やメンテナンスについても配慮して、自分の住まいにぴったりの、おしゃれな階段照明について考えてみてはいかがでしょうか。
階段の照明を計画するときは、安全性とメンテナンスについての配慮が重要
よく使われるブラケットライトに加え、夜間の安全性確保のためにフットライトを設置するのも効果的
リビング階段の場合、ペンダントライトやダウンライトも使用しやすく、計画の自由度が高い