ログハウスの暮らしって憧れるけれど、どんな種類があるの? 価格はどれくらい? 実際暮らしてみるとどう? そんなログハウスの魅力からメリット・デメリットなどをログハウスメーカーの「BESS」さんと、実際にログハウスで暮らしている人に教えてもらいました。
ログハウスの「ログ」とは丸太のこと。「実は『ログハウス』とは和製英語、つまり造語で、本国ではログキャビンやログホームと呼ばれています」。同じく木材を使う日本の木造軸組工法(在来工法)や北米や北欧に多いツーバイフォー工法(2×4工法)とはどこが違うのでしょうか。まずは構造から見てみましょう。
ログハウスとは、一般的に丸太を積み重ねた壁によって構成される建物を指します。一方、木造軸組工法は垂直方向の柱と水平方向の梁で建物を支える構造です。またツーバイフォー工法(2×4工法)をはじめとした木造枠組壁工法は、木製のパネルで壁や床、天井という面をつくり、この面を組み立ててできる6面体の構造を基本にします。下記の図を見るとわかりやすいでしょう。
構造の違いによって、ログハウスと木造軸組工法、木造枠組壁工法ではまず間取りの自由度や将来の間取りの可変性が異なります。その他の耐震性・防火性などについては多少の有利・不利はあるものの、ほぼ同じと言えるでしょう。
先述の通りログハウスは丸太を重ねた強い壁で建物を支えるため、60m2までの大きな空間をつくることができます。そのため空間を仕切る壁を自由に配置しやすくなります。また傾斜の強い三角屋根という特徴を活かし、2階の屋根裏空間を収納や部屋にするなど、他の木造住宅とはひと味違った間取りをつくれます。
数十年程前までログハウスといえば職人が加工した丸太を使って建てられていました(ハンドカットログハウス)。しかし最近では別荘などごく一部のログハウスに限られ、現在の主流はコンピューターと機械で丸太を加工するマシンカットログハウスです。マシンカットログハウスは大量生産に向いていることもあり、主に居住用のログハウスに使用されています。
また機械加工のため、従来のログハウスとは違う形状の丸太を用いることができるようになりました。これにより外観デザインのバリエーションが増え、室内側の壁をフラットに出来るので家具が置きやすくなる、といったメリットが生まれています。
ログハウスに使用される木材に適しているのは、まっすぐに育ち、加工もしやすい針葉樹です。「BESSでは現輸入材(北欧パイン等)のほか、国産杉も積極的に採用しています」
丸太を組み上げて壁をつくるログハウス。「地震で揺れると丸太同士が摩擦を起こし、その摩擦力で揺れを吸収します。いわば丸太で組んだ壁が制震装置として働くのです。そのためBESSのログハウスは耐震等級の最高レベル、耐震等級3で建てることができます」
BESSや、ログハウスの業界団体「日本ログハウス協会」でも実物大ログハウスで振動実験を行った結果、阪神・淡路大震災並みの振動を与えても建物の傾きが数mm、小さな亀裂も数カ所だけで済んだことが確認されています。
木は燃えると言われますが、「分厚いログ壁は表面が燃えると炭化層ができて表面を覆います。すると表面に出来た炭化層の膜が丸太の内側まで酸素がいくことを遮断するので、丸太内部まで燃え進むまでかなりの時間がかかります。その間に十分退避や消火がしやすくなるので安全だと認められています」
ログハウスの耐火性は、市街地に多い準防火地域に建てることのできる、準耐火建築物として認められていることからも証明されています。
ログハウスも他の木造住宅も、木の家は湿気やシロアリによる被害が心配でしょうが、しっかりと対処さえすれば長持ちします。例えば759年に建てられた奈良の正倉院は、ログハウスと同じように木材を積み上げた構造です。「海外にも200年~300年前に建てられたログハウスがいくつも残っています。きちんとメンテナンスを怠らなければ長持ちします」
小さな細胞で出来ている木は、細胞内に空気が入り外部からの熱を遮るため、断熱性はコンクリートの約12倍あるといわれています。さらにログハウスの場合、丸太の厚みが100mm以上もあるので外部の熱が伝わりにくく、内部の熱が逃げにくくなります。つまり丸太は天然の断熱材なのです。そのため断熱材を使いません。「実際住んでいらっしゃる方にお話を伺うと、夏はほとんどエアコンを使わず、冬は薪ストーブだけで十分暖かいとおっしゃる方が多いです」
機械で丸太を精緻に加工するマシンカットログハウスは、丸太の上下に凹凸をつけて組みあわせるなどして隙間をしっかり塞ぐことができるため、気密性は他の住宅と変わりませんし、外から雨風や土埃、虫などが入ってくる心配もありません。また丸太は木材ですから、室内の湿度が高ければ水分を吸収し、低ければ水分を吐き出す調湿機能がありますから、室内の湿度を一定に保ちやすくなります。
ログハウスの構造で述べたようにログ壁で建物を支えるため、柱や仕切り壁を家族構成の変化に合わせて変更できます。またキッチンや浴室といった設備選びも他の木造住宅と何ら変わりはありません。
一つ注意が必要だとすれば「ログ壁に埋め込み型のコンセントやスイッチを設置する場合、分厚いログ材に加工するので建てた後で位置を移動させることができません。そのためコンセントやスイッチの位置は設計時に慎重に計画したほうがいいでしょう」
ただ最近は、マンションのリノベーションでもそうですが、敢えてコンセントやスイッチと配管を見せるというインテリアも人気ですから、あまり神経質にならなくてもいいのではないでしょうか。
ログハウスの価格はメーカーや商品によって異なりますが、BESSでは「例えば『G-LOG なつ』は26.0~37.9坪で1920万円~2730万円、『カントリーログ』は23.9坪~40.0坪で1840万円~3010万円です」。建てるエリアや付帯設備などで異なりますが、目安としては30坪で約2000万円といったところです。
ログハウスの魅力の一つは、なんと言っても木の香りでしょう。最近は樹木から発散されるフィトンチッドのリラックス効果が注目されていますが、天然木をふんだんに使用しているログハウスゆえ、その効果が高いといえます。
また木には調湿効果があるため、室内が極端に乾燥したり湿度が高くなることがありません。断熱性能が高いことと相まって結露による健康被害の心配が少ないこともメリットといえそうです。
ログハウス特有のメンテナンスとして「セトリング」対策があります。「セトリングとは竣工後2~3年で、乾燥による木材の収縮と丸太の自重によって、ログ壁が約3~5cm沈み込む現象のこと。そのため各メーカーでは最初から沈み込みを計算して、例えば階段の下に板を1枚入れておき、セトリングが起こってからそれを抜いたりします。また柱にジャッキを備えておき、セトリング後に調整することもあります」
ただし、これらはたいていメーカーが定期点検時に行うそうです。
また木材は水による腐食の心配があるのでログ壁の定期的な塗装や防腐対策も欠かせません。しかし「正倉院が1000年以上も長持ちしているのは、きちんと大事にされてきたからです。つまり長持ちさせるためには『大事にしたくなる家』であることが重要だと思います。実際、ログハウスに住む人はログハウスで暮らす毎日を楽しいと感じて大事にするため、メンテナンスを手間とは思わず、天然木ゆえにできる傷や色の変化も味として楽しめる人がほとんどです」
竣工時期:2017年12月竣工 住所:埼玉県飯能市 間取り:3LDK
Sさん夫妻(いずれも30代)と愛犬の花梨(かりん)ちゃんが暮らしている
結婚を機に、いつかは家を建てたいなと思い始めたSさん夫妻。「2人とも木の家が好きなので、なんとなく木造住宅がいいと思っていた」そうですが、ログハウスについてはよく知らなかったのだとか。ところがテレビでたまたまBESSの展示場が遊び感覚で楽しめる場所だということを知り、木の家だし、遊びに行く気分で展示場を訪れたそうです。「そのときに、木の香りがとても印象に残りました」
展示場に行ったことをきっかけに、次第に家を建てたいという気持ちが高まり、他の住宅展示場もめぐるようになったという二人。「木造住宅の展示場ばかり見て回ったのですが、ログハウスほど木の香りがしなかったんです」。木の香りに包まれていると何だかくつろげるし、癒やされるよね、と話し合った結果、ログハウスを選ぶことにしました。
「杉材の床は柔らかいので、モノを落とせば傷が付くんですが、それも味だと思っています」とSさん。一方で飲み物をこぼしてもすぐに拭けばほとんどシミにならないそう。またSさんの妻は「杉の節がたくさんある床だからか、傷やシミもそうですが、意外とホコリも目立たないので掃除がラク(笑)。妙に高級な床や壁に囲まれて生活するより、気を使わなくていいから暮らしやすいですね」
夏はクーラー一台で十分足りるそう。床暖房や薪ストーブはないですが、冬は2階が暖かいのでそこに置いたこたつに入って過ごすことが多いそうです。
夏はひんやり、冬は温かみのある杉の床。裸足で歩く感触は他に代え難いものがあり「カーペットを敷くことは考えていません」と言います。
ログハウスで暮らすようになって、実は自然への意識が高くなったという2人。「散歩中に鳥が鳴けば『何ていう鳥だろう?』とか、道端で花を見かけたら『何の花?』とか。そういったことが次第に増えました」
だから会話が増えた気がするよね、とSさん夫婦。休みの日も買い物ではなく、一緒に近くの山や川へ散策に出かけることが多くなったと言います。「そういえばポイ捨てとか、以前は気にしたこともなかったのに、街で見かけると気になるようになりました」
メンテナンスも気を張らずに取り組めると、Sさん。「デッキの塗装を毎年1回、夫婦2人で作業しますが、年に1回だけですし、DIY気分で楽しんでやっています」。将来、子どもが生まれたら2階に部屋を設けるつもり。「子どもが増えたら部屋を仕切ることもできますが、1部屋で子どもたちが一緒に暮らすのも、コミュニケーションの育成の意味で良いのかなとも思います。まあ、生まれてから考えますけど」
きっと彼らが生まれたころには、Sさん夫妻はいろんな鳥や花の名前を知っていることでしょう。将来子どもたちにそういったこともたくさん教えたくなる、そんなログハウスの暮らしぶりでした。