工務店とは?ハウスメーカーとはどう違う? 新築戸建てを建てる際に選ぶときのポイントは? 一級建築士に聞いてみた

最終更新日 2023年06月02日
工務店とは?ハウスメーカーとはどう違う? 新築戸建てを建てる際に選ぶときのポイントは? 一級建築士に聞いてみた

注文住宅を建てるときには、工務店やハウスメーカーなどさまざまな依頼先がある。工務店もハウスメーカーも、依頼を受けると間取りや外観など設計プランを立て、家を建築する点では同じだ。では、ハウスメーカーと工務店の違いはどこにあるのだろう? 一級建築士の佐川旭さんに、工務店とは何なのか、選ぶときには何をポイントにすればいいのかなどを聞いてみた。

工務店ってどんな会社? 最近の工務店の特徴を一級建築士が解説

地域密着型の小さな会社というイメージをもつ人が多いのが「工務店」。社長が経営や営業だけでなく自ら職人として現場で腕をふるっていたり、その町で家を建てるときや、修繕してもらうときに必ず頼りにされていたり……そんな会社を思い浮かべる人も多いだろう。ところが最近では「工務店」と名のつく会社は数多くあり、その特徴は「小規模」だけでは説明できなくなってきている。

「全国に営業拠点やモデルハウスを持ち、知名度もある大手ハウスメーカーに比べて、狭い範囲で営業を行っているのが工務店です。最近は、ひとことで工務店といってもさまざまで、会社の規模や営業スタイルによって大きく次の3つに分けられるといえます」(佐川さん、以下同)

1.町の小さな工務店
拠点を置く市や町を中心に、地域密着型で施工を行う工務店。社長以下数名からの小規模な会社で、昔ながらの「ご近所にある町の工務店」のイメージに近い。

2.フランチャイズの加盟店
本部が開発、指導する工法や規格を使い、各地域の工務店がフランチャイズ加盟店として施工するスタイル。加盟している工務店は、本部が一括で仕入れた建築資材を使うことでコストが抑えられる、本部や他の加盟店と技術や経営に関する情報を共有できるなどのメリットがある。工務店によっては、複数のフランチャイズに加盟し、さまざまな工法、デザインテイストの家づくりを手がけているところもある。

3.地域での中堅ビルダー
地域密着型だが、着工棟数が他の工務店より多く、大手ハウスメーカーのようにモデルハウスや住宅展示場を設けるなど、積極的な営業を行う工務店もある。社名ではなく、「○○の家」「○○ホーム」など自社で開発した住宅ブランド名で営業展開をする工務店も。本社のほか、近隣の県や市に支店や営業所を置き、広域にわたって施工を行うケースが多い。

工務店とハウスメーカーの特徴の違いは何?

工務店にはさまざまな規模や営業スタイルの会社があることがわかった。では、ハウスメーカーと比べてみたとき、どのような違いがあるのだろう。

大きな違いは企業規模だ。
「工務店は小規模な会社が多く、営業拠点が複数あるところでも、施工エリアは市内や県内、近隣の県までなど、ハウスメーカーに比べると地域密着色が強いのが特徴です。それに対してハウスメーカーは全国に支社や支店など営業拠点を置き、住宅展示場でモデルハウスを公開しています」

そのほか、間取りやデザインの自由度、工期、アフターメンテナンスなども工務店とハウスメーカーには違いが出やすい。これらの特徴は、工務店を選ぶメリットやデメリットにつながる。次で詳しく説明しよう。

工務店を選ぶ5つのメリット

工務店に家づくりを依頼するメリットはさまざま。主なものを挙げていこう。

メリット1 間取りやデザインにこだわった家づくりがしやすい

ハウスメーカーの場合、グレードやデザインテイストによっていくつかの住宅商品があり、予算や好みに合わせて選ぶのが一般的。間取りも、床面積や家の形ごとに用意された数パターンから組み合わせたり、一部を変更したりしながらつくっていくケースが多い。一方、工務店は担当者と施主が話し合いながら、実現したい間取りやデザインを形にしていく。

「工務店は、間取りや外観デザインなどのプランを、施主といっしょにつくりあげていきます。例えばキッチンは、施主が気に入ったシステムキッチンを使うことはもちろん、オリジナルキッチンをつくることも可能。床にはムク材を使いたいという希望があれば、かなえやすいのも工務店との家づくりです。プランの自由度は高いといえます」

ほかにも、施主が取り寄せた洗面ボウルやキッチンを施工したり、実家の建具を生かしたりなど、さまざまなこだわりを実現する家づくりがしやすい。

メリット2 建築費を安く抑えやすい

工務店の場合、広告宣伝費やモデルハウスの建設費などの出費が抑えられたり、会社の管理にかかるコストがハウスメーカーに比べると少なかったりする。そのため、建築費を抑えやすい傾向にある。

メリット3 地域の気候や文化に合わせた家づくりが得意

例えば、沖縄県では大きな開口部には強い日差しと台風の雨をさえぎる深い庇が設けられた家を多く見かける。北海道では冬の寒さを快適にするため高気密・高断熱に力を入れた家が多い。また、親戚が集まるために複数の和室がつながった続き間が欠かせない地域もある。快適な家づくりには、地域の気候や文化をよく知った地域密着型の工務店が強みを発揮する。

メリット4 入居後のトラブルにすぐに対応してもらいやすい

長く地元で営業を続けている地域密着型の工務店は、家が完成してからも親身になって対応してくれるケースが多い。住んでから不具合に気がついた時に、フットワーク軽く柔軟に対応してもらえる可能性があり安心。将来、リフォームや建て替えをする際にも、近くにある工務店なら気軽に相談もしやすい。

メリット5 地域の人のクチコミを集めやすい

実際に家づくりを依頼した人たちからのクチコミは参考になる。地域での家づくりの実績が多い工務店なら、どんなデザインが得意か、間取りづくりの際にどんなアイデアを出してくれるか、施工は丁寧か、完成後のメンテナンスへの対応はどうかなどの情報を地域のネットワークの中で集めやすい点がメリット。

工務店を選ぶ5つのデメリット

さまざまな会社がある工務店には、いくつかのデメリットがあることを知った上で家づくりを依頼しよう。

デメリット1 会社や担当者によって品質にバラツキが出ることがある

会社としての規模が小さく、スタッフも少人数な工務店の場合、職人の技術や営業担当者の知識によって、家の完成度が左右される。会社によって、また、同じ会社に依頼してもスタッフによって品質にバラツキが出てしまう可能性がある。施工事例や担当者の対応をしっかり確認してから工務店を選ぶことが大切だ。

デメリット2 モデルハウスがないため出来上がりをイメージしにくい

工務店はモデルハウスを持っていないことが多く、この工務店に家づくりを依頼すると、どんな家ができあがるのかをイメージしにくい点がデメリット。担当者の説明や施工例の写真だけでは不安もあるでしょう。最近は、完成した家や施工中の現場の見学会を行う工務店も増えてきているので、機会があれば積極的に参加するようにしよう。

デメリット3 ハウスメーカーに比べて工期が長くなりがち

同じ規模の家でも着工から完成までにかかる期間は、ハウスメーカーに比べて長くなりがち。
「工法やプラン、住宅の規模、時期などにもよりますが、延べ床面積が35坪程度の住宅の場合、工務店なら工期は約4カ月~4.5カ月、ハウスメーカーは約3.5カ月。同じ規模の家を建ててもハウスメーカーのほうが工期が短くなるのは、全体の流れがシステム化されていて効率がいいからです」

設備機器や建築資材不足が起きると、仕入れ力が弱い工務店の場合は着工後に工事がストップしてしまうケースも。工期が長いと、賃貸住宅の家賃が予定よりもかさむことや、子どもの入園や入学など希望の時期までに入居できない可能性もある。余裕を持って家づくりのスケジュールを立てることがポイントになる。

デメリット4 完成後のメンテナンスへの対応が会社によって異なる

ハウスメーカーの場合は入居後の定期点検や無料で修理してもらえる範囲や期間などが細かく決められているのが一般的。しかし、工務店の場合、点検や修理への対応はケースバイケースだ。
「定期点検や保証の制度も設けているところもあれば、不具合があればすぐに駆けつけて修理してくれるという地域の工務店ならではの手厚い対応が強みのところも。ただし、忙しい時期には修理を頼んでも待たされることがあるなど、対応はまちまちです」

工務店を選ぶなら、アフターメンテナンスについてきちんと確認しておく必要がある。

デメリット5 ハウスメーカーに比べて倒産のリスクが高い

企業としての規模が小さな工務店は、大手ハウスメーカーに比べると倒産のリスクが高いといえる。施工中に工務店が倒産してしまうと工事がストップし、工事を引き継ぐ施工会社が見つからなかったり、すでに支払った着工金や中間金が戻ってこなかったりという事態も生じる。こうした事態に備えて、依頼する工務店が「住宅完成保証制度」に加入しているかを確認しよう。「住宅完成保証制度」とは、注文住宅の建築中に工務店の倒産などで工事が継続されなくなった場合、施主が最小限の追加負担で住宅を完成できるようにする制度だ。

工務店とハウスメーカー、それぞれの特徴
工務店 ハウスメーカー
企業規模、施工エリア ハウスメーカーに比べると小規模。施工エリアは地域密着型 全国や広いエリアに支社や支店など営業拠点を置く。施工エリアも全国や広域
プランの自由度 自由度は高い。希望の設備や内装材、間取りを実現しやすい 家族構成やライフスタイルに合わせたさまざまなバリエーションが用意されているが、プランや設備には制約がある
施工の精度 現場で施工する職人によって、品質が左右される 建築部材を工場生産する割合が高いため、均一な品質が保たれやすい
工期(延べ床面積が35坪程度の住宅の場合) 約4カ月~4.5カ月 約3.5カ月
アフターメンテナンス 点検や修理などメンテナンスは会社によって対応が違う 定期点検や無料修理の範囲など、会社によって細かく決められている

自分に合う工務店を選ぶときのポイントは?

広告やテレビCM、住宅展示場などで目にする機会が多い大手ハウスメーカーに比べて、会社の特徴が見えにくいことが多いのが工務店。家づくりの依頼先として複数の工務店を考えているとき、その会社の特徴はどうやって見極めればいいのだろう。

「地域密着型の工務店で多いのは、口コミで長く営業を続けているケース。その工務店で家を建てた人から技術力や対応の評価は重要な情報です。また、工務店が何を大切にして家づくりをしているかは、ホームページを見ると分かります。『自然素材を活かした家づくり』、『木を知り尽くした匠の技』など、アピールポイントが書かれていることが多いので、自分の好みと合っているかを確認するといいですね。

施工例の見学会でも工務店の特徴を知ることができます。建築途中の家を公開する構造見学会や、間取りの工夫やデザインを目で確かめることができる完成見学会に参加してみましょう。完成見学会は工務店と施主に信頼関係がなければ開けないものです。見学会が多い工務店は、多くの施主といい関係を築けているといえる点でも安心です」

工務店には、ハウスメーカーに比べて規模は小さくても、プランの自由度が高いなどのメリットがある。ただし、工務店によって、施工の品質や建てたあとの対応に違いがあるため、地域での評判や家づくりの特徴、現場見学会での対応などを確かめてから、依頼先を選ぶのがオススメだ。

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取材・文/田方みき
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