犬走りとは?意味や目的を解説!素材や施工方法も紹介

最終更新日 2024年01月23日
犬走りとは?意味や目的を解説!素材や施工方法も紹介

「犬走り」という建築用語をご存知ですか?住宅だけでなく、広く日本の建築で施工されてきた犬走りですが、最近では見かけることも少なくなりました。犬走りとは何か。また、犬走りを施工する場合、素材はコンクリートがいいのか、または砂利にするべきかなど、東京ガスリノベーションにお話を伺いました。

犬走りとは?

家の外壁周りに設けられた通路

犬走りとは、建物の外壁の周囲に施工された、幅1m前後の通路を指します。サイズや施工素材について明確な決まりはなく、そもそもは、家を保護する目的で施工されていたものだそうです。

「日本家屋にはもともと雨樋がなかったため、雨から家を保護するために設けられるようになったのが犬走りの始まりだといわれています。雨樋がないと軒先に落ちた雨は地面で跳ね、家の壁を汚してしまいます。現代の家のようにシリコンやウレタンなどで塗装されていれば洗い流すこともできますが、昔の家は土壁や漆喰(しっくい)壁などの塗り壁が多かったため、犬走りをつくることで泥汚れがつくのを防いでいました。また、汚れを防ぐという目的に加え、昔の木造家屋は土台がむき出しになっているものが多く、雨水などによる基礎部分の腐食を防ぐというも意味もあったようです」(東京ガスリノベーション、以下同)

犬走りのイメージ
外壁の周りに施工された細い通路が犬走り(イラスト/杉崎アチャ)

犬走りは必要?つくる目的やメリットは?

雨から家を守るためにつくられることが多かった犬走りは、雨樋のある現代の住宅の場合は必ずしも必要なものではなく、つくらないというケースも少なくありません。限られた予算内で家づくりをする際、予算削減の対象となってしまいがちな犬走りですが、つくることによって得られるメリットもあります。

メリット1 外壁に泥や雨が跳ねるのを防ぐ

雨樋があっても、雨が降ったときの泥はねがゼロになる訳ではありません。現代の住宅においても、犬走りは雨や泥から家を保護する役割を担っています。

「古い日本家屋において犬走りが果たしていた役割と同様に、現代においても、犬走りをつくることで、建物が汚れたり、濡れたりということを軽減することができます。

木造の家は本来とても長持ちするものですが、長持ちさせるには、“床下の湿気対策がきちんとされていること”、“屋根や外壁の雨仕舞がしっかりしていること”、“十分な耐震性能があること”という3つの条件が必須です。

雨水対策が家を保護する上で非常に重要になるわけですが、犬走りがあると、雨水を建物本体から遠ざけることができます。一方、犬走りがなく建物が土で囲まれている場合は、雨の後、建物の周りの土壌がしばらくの間、水を多く保有してしまうことがあります。そのような状態は木造の家にとってはあまり良いものではありません。

つまり、犬走りによって雨水や泥を建物から遠ざけることができるということは、家を守ることにつながります」

雨が降った後の庭
(画像/PIXTA)

メリット2 歩きやすくなる

日常的に勝手口からゴミ出しをしたり、敷地の奥に自転車を止めたりするような場合は特に、犬走りを設けておくことで建物周囲を歩きやすくなるというメリットもあります。

「雨が降った後、家の周りが泥だらけになっていると、家に泥や土を持ち込むことになってしまいます。犬走りが設けてあると、歩きやすいことに加え、玄関や勝手口などに泥を持ち込んで汚さずに済みます」

玄関と長靴のイメージ
(画像/PIXTA)

メリット3 雑草が生えにくくなる

「犬走りはコンクリートや砂利などで地面を覆うため、雑草が生えにくくなります。家の周りに雑草が生えにくくなることで、お手入れがラクになるのはもちろん、家の床下などに害虫などが入ってくることを防ぐ効果もあるようです」

虫が好む湿気を含んだ土や、住処となる雑草を家から遠ざけることで、建物の中に虫が入りにくくなるというのは嬉しいポイントです。一方で犬走りをコンクリートで施工した場合は、ひび割れなどが生じると、そこからシロアリが建物内に侵入するケースもあるため、メンテナンスや予防は必要です。

外壁のまわりに生えた雑草
(画像/PIXTA)

メリット4 防犯効果を期待できる

犬走りを砂利で施工する場合は、踏むとガリガリと大きな音がする“防犯砂利”を使用すると防犯効果も期待できます。

「都内の住宅などは、隣の家との間が狭く、建物の正面からは死角になっている場所に勝手口があるケースも少なくありません。防犯砂利は見る人が見れば、すぐにそれとわかるので、家を囲む犬走りに防犯砂利がまいてあると、防犯への意識が高いというアピールになり、防犯につながります」

防犯砂利のイメージ
(画像/PIXTA)

メリット5 外構のデザイン性を高められる

一般的にコンクリートや砂利でつくられることが多い犬走りですが、意匠性にこだわったものをつくることもできるため、エクステリアのデザイン性を高める目的で施工されることもあります。

「コンクリートの上にタイルやレンガなどを組み合わせて、外構をおしゃれな雰囲気にすることもできます。また、小さなお子さんがいる場合は、手形をスタンプしたり、ビー玉をはめたり、遊び心を加えて楽しむこともできます」

手形をスタンプしたコンクリートのイメージ
(画像/PIXTA)

犬走りの施工素材別、メリット・デメリットや費用目安

犬走りをどのような素材でつくるかで、得られるメリットや費用は異なります。素材別にそれぞれの特徴を見てみましょう。
※記事内の費用目安の金額は施工事例ごとに異なるため、実際とは異なる場合がある

コンクリート

固くてしっかりしており、歩きやすいという特徴があるのはコンクリートの犬走りです。一方でひび割れが起きたときに直すのが面倒だったり、施工にはある程度技術が必要になります。そのため、DIYでつくる場合は難易度が高い素材でもあります。

「コンクリートの犬走りをつくる場合は、まず土を掘ってから砂利を入れて固め、場合によっては鉄筋で編まれたメッシュというものを入れて、型枠を差し込んでからコンクリートを流し込むという作業になります。施工が上手くいかないと、ひびが入ったり、まだらになったりすることがあるので、DIY初心者の場合は、プロに依頼して施工する方が安心です」

プロに依頼するとなると気になる費用ですが、施工費用も含めて大体1m2当たり1万2000円からが目安になります。ただしコンクリートを打つ作業に至るまでに、どのような作業が必要になるかで費用は左右されるそうです。

ひび割れが起きたコンクリートの犬走り
ひびが入ってしまったらすぐに修理を(画像/PIXTA)
コンクリートの犬走りの施工にかかる費用の目安
素材 費用目安
コンクリート 1m2当たり1万2000円~(施工費用含む)

砂利

コンクリートよりも比較的DIYしやすく、費用も抑えられるのは砂利の犬走りです。プロに施工を依頼する場合も、できるだけ費用を抑えたいという場合は砂利を選択することが多いそうです。

「犬走りを砂利でつくる場合、砂利を3~4cm位の厚みに敷くので、まずその分の土を掘る必要があります。また、砂利を敷く前に雑草を防ぐため、防草シートを敷くのが一般的です。

砂利はコンクリートに比べるとDIYも手軽にできる素材ですが、重量があるため、ホームセンターで購入した砂利を運ぶ作業というのは、意外と大変な作業になると思います」

砂利は防犯砂利や那智石など価格が高いものから、1m2当たり1000円未満で購入できる砕石もあるため、どのような砂利を選ぶかでかかる費用は異なります。砂利の材料費の目安としては、1m2当たり2000円程度~と考えておくといいでしょう。また、砂利を敷く場合は防草シートや、砂利がこぼれないよう入れる枠などが必要になるので、その分の費用もプラスで必要になります。

また、砂利の場合はコンクリートよりも費用を抑えられるというメリットがある一方、コンクリートよりも雑草が生えやすかったり、野良猫の糞尿対策が必要になることもあるので注意が必要です。

砂利と雑草
砂利の場合、コンクリートのように雑草を完全に防ぐのは難しい(画像/PIXTA)
砂利の犬走りの施工に必要な材料費の目安(施工費用は含まない)
素材 費用目安
砂利 1m2当たり2000円~(材料費のみ)

タイル

コンクリートの上にタイルを張った犬走りの場合、コンクリートを打った上にタイルを施工することになるため、ほかの素材でつくる場合よりも費用は高くなります。タイルの場合はコンクリートの犬走りの費用に加え、1m2当たり1万円~程度の費用がプラスされるイメージだそうです。

「タイルの場合費用はかかりますが、タイルを使用することで見栄えが良くなることに加え、コンクリートだけの場合よりも、水はねを抑えられるというメリットもあります」

コンクリートに貼られたタイル
(画像/PIXTA)
タイルの犬走りの施工にかかる費用の目安
素材 費用目安
タイル 1m2当たり2万2000円~(施工費用含む)

レンガ

レンガの犬走りをつくる場合、レンガ自体の材料費は安価ですが、そのまま土の上に敷いてしまうと、表面がでこぼこしてしまうので、薄くコンクリートを打ってからその上にレンガを施工することになります。

「コンクリートの犬走りをDIYでつくるにはある程度の技術が必要ですが、レンガを使うことでコンクリートの表面の仕上がりを過度に気にする必要がないので、コンクリートの上にレンガを施工する犬走りの方がDIYはしやすいでしょう。

施工にかかる費用については、コンクリートの犬走りよりもコンクリートの厚みが薄くなる分、コンクリート部分の材工費はレンガの犬走りの方が抑えられると思います。コンクリート部分に加え、1個当たり数百円程度のレンガ代が加算されます」

レンガが敷かれた通路のイメージ
(画像/PIXTA)
レンガの犬走りの施工にかかる費用の目安
素材 費用目安
レンガ 1m2当たり1万6000円~(施工費用含む)

ウッドチップ

犬走りにウッドチップを用いるケースもあります。見栄えの良さに加え、柔らかく歩き心地がいいというメリットがあります。

「コンクリートの犬走りは照り返しが強く、夏は温度の上昇が気になることがあるかもしれませんが、ウッドチップであれば、照り返しなどを気にせずに済みます。

一方で、コンクリートのように洗うことができず、砂利の場合と同様、雑草や猫の対策が必要になることもあるので、メンテナンス面でコンクリートの犬走りに比べるとデメリットを感じることがあるかもしれません」

費用についてはどのようなウッドチップを選ぶかでも異なりますが、通常、コンクリートの犬走りよりは低予算で施工することが可能です。

ウッドチップ
(画像/PIXTA)
ウッドチップの犬走りの材料費の目安(施工費用は含まない)
素材 費用目安
ウッドチップ 1m2当たり2500円~(材料費のみ)

メンテナンスがラクで歩きやすいコンクリート。手軽にDIYも可能で防犯効果も期待できる砂利。意匠性を高められるタイルやレンガ、照り返しを抑えられるウッドチップなど、一口に犬走りといっても、素材によって得られるメリットはさまざまです。施工費用も異なるため、犬走りをつくることを検討する場合は、素材による違いも理解した上で選択すると安心です。

まとめ

犬走りは家の外壁周りに設けられた幅1m前後の細い通路

外壁に雨や泥が跳ねるのを防ぐ目的に加え、歩きやすさやデザイン、防犯などの目的で施工される

さまざまな施工素材があり、素材によって得られるメリットや施工費用は異なる

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取材・文/島田美那子 イラスト/杉崎アチャ
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