断熱材とは?どんな種類がある?グラスウール、ロックウールとは? 価格は? 家の断熱基礎知識

最終更新日 2023年05月11日
断熱材にはどんな種類がある? 価格は? 家の断熱基礎知識

家の断熱材はいろいろ種類があるらしいけれど、何が違うの? 断熱性能は同じ? 価格は? そんな断熱材に関する基本的な知識を、断熱材についての著書もある一級建築士の西方里見さんに教えてもらいました。

断熱材の種類と費用の目安

断熱材は原料の違いで3種類に分けられる

吉田兼好が『徒然草』で「家の作りやうは、夏をむねとすべし」と書いたのは鎌倉時代の末期。蒸し暑い日本の夏を過ごすために開放的な家のつくりがよいだろう、というような意味ですが、確かに戦前までの長い間、日本家屋は開放感を大切にしていた一方で、気密性や断熱性はあまり注目されていませんでした。

しかし戦後の住宅ブームの中で洋風住宅が人気を集めるようになると、欧米の建築思想が採り入れられて急速に高断熱・高気密の住宅が主流に。それに応じて家の外と内の熱の出入りを防ぐ断熱材が注目され、進化してきました。西方さんによれば現在の断熱材の種類は22種類もあるそうです。

断熱材というと「寒さ対策」と考える人も多いでしょうが、昨今の日本の夏は40度を超えることもしばしば。「暖かい地域でも窓を遮熱した家の断熱性能が高いほうが効率良く家の中を冷房することができます」(西方さん)。

ではどんな断熱材があるのでしょうか。断熱材はまず原料の違いで「鉱物系」「石油系」「自然系」の3種類に分けることができます。それぞれ主に下記のような断熱材があります。

●鉱物系
「グラスウール」

ガラスを熔解して繊維状にし、接着材を吹き付けて成形した断熱材。グラスウール板は国に不燃材料として認められていて、日本だけでなく北欧や北米でもよく使われている。かつては結露やズレ下がりなどが指摘されたこともあったが、施工技術の進化や性能の向上などにより現在はそうしたマイナス面が解消されている。形状はボードやマット状、バラした綿のようにした状態などがある

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グラスウールのフェルトタイプ(袋入り)(画像提供/グラスウール工業会)
「ロックウール」

玄武岩や鉄鋼スラグ(製鉄時の副産物)などを溶かして繊維状にした断熱材。グラスウール同様不燃材料と認められている。日本でのシェアはまだ少ないが、北欧ではグラスウールと同じくらいシェアがある。マンションの外張り断熱工法(下記参照)でも使用されることが増えている。形状はボードやマット状、バラした綿のようにした状態などがある

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左/充填断熱の施工例。右/住宅用ロックウール断熱材(画像提供/ロックウール工業会)
●石油系
「ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPSとも呼ばれる)」

ポリスチレン樹脂に発泡剤や難燃剤を添加してビーズ状にしたものを発泡成形した断熱材。耐水性があるほか、軽くて衝撃にも強い。一般には「発泡スチロール」として知られている。形状はボード状

「押し出し法ポリスチレンフォーム」

材料は上記ビーズ法とほぼ一緒だが成形方法が異なる。硬質で耐圧力があり、吸水・吸湿性が小さい。外張り断熱工法や家の基礎部分の断熱(下記参照)によく使われる。形状はボード状

「硬質ウレタンフォーム」
ポリウレタン樹脂に発泡剤を加えて成形。外張り断熱工法(下記参照)で使用されることが多い。外張り断熱では定番の断熱材。ボード状を使用するほか、現場で吹き付ける(壁などに直接固着させる)方法がある。マンションで充填断熱(下記参照)する場合、吹き付ける施行方法でよく使用される

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硬質ウレタンフォームの吹き付け施工例(画像提供/ウレタンフォーム工業会)
「高発泡ポリエチレンフォーム」

ポリエチレン樹脂に発泡剤を加えて成形。形状はボード状。他の石油系断熱材より柔軟性があるので狭い部分に充填しやすい

「フェノールフォーム」
フェノール樹脂に発泡剤や硬化剤を加えて成形。長期的に安定して断熱性能を保つという特徴がある。石油系の中では防火性に優れ、炎を当てても煙や有害ガスをほとんど発生しない。形状はボード状のほか、金属板や石膏ボードなどとの複合パネルもある

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フェノールフォーム(写真は旭化成建材「ネオファーム」)(画像提供/旭化成建材)
「ポリエステル」

ペットボトルを再生したポリエステル繊維でつくられる。形状はボード状。熱を加えると形状が固定されるので、接着材が不要。そのためホルムアルデヒドを発生しない。また万が一燃えても炭酸ガスと水に分解され、有害ガスを発生させない

●自然系
「セルロースファイバー」

新聞の古紙などを粉砕して綿状にした断熱材。綿状で、施工方法は吹き込み(雪をつもらせるように敷きつめる)と、吹きつけ(壁などに直接固着させる)がある。グラスウールよりも吸音性能が高い。自然系の中では一番歴史があり、それゆえ最も普及している

「ウール」
原料は羊毛。形状はマット状かバラした綿のようにした状態がある。自然系の中では安価で、最近よく使われるようになってきた

断熱材の優劣は一概には決められない

主な断熱材がわかったところで、次にそれらの熱伝導率・防火性・価格について見てみましょう。

断熱性では石油系、価格では鉱物系
断熱性では石油系、価格では鉱物系
西方さんの著書『最高の断熱・エコ住宅をつくる方法』より一部抜粋。防火性は★の数が多いほど評価が高い。

※1/高性能グラスウール16Kの場合
※2/A種ビーズ法ポリスチレンフォーム特号の場合
※3/A種押し出し法ポリスチレンフォーム3種の場合
※4/A種硬質ウレタンフォーム2種3号の場合
※5/w/m2・kとは1m2当たりどれだけの熱が通過するのかを示した値
※6/住宅金融支援機構による熱伝導率の区分より
※7/「高性能グラスウール16K」の価格を1とした場合の、価格の目安

「断熱性能ではDやEの多い石油系が高く、防火性と価格面では鉱物系が優れています。自然系は断熱材の製造過程で排出するCO2が少ないため、環境性に優れていますし、自然由来の素材であるため健康にもよいと言われ、最近人気の断熱材です」

そのほか一般的に鉱物系のグラスウールやロックウールは透湿性があるので、施工時には防湿層をつくる必要(最近は防湿層が最初から備わったグラスウールもある)があります。

このように断熱材にはそれぞれ一長一短があり、断熱性能や価格だけで選ぶことが難しいのです。

断熱性能は施工の良し悪しで左右される

断熱の施工方法は大きく分けて3つある

さらに、どんなに断熱性能の高い断熱材を選んでも、それを隙間なく敷きつめて家を覆わなければその性能は発揮できません。つまり重要なのは、断熱材の種類よりもしっかりと断熱することなのです。

ではしっかりと断熱するとはどういうことでしょうか。それを説明する前に、断熱の施工方法について説明しておきます。

木造住宅の断熱の施工方法は大きくわけて3つあります。

●充填断熱
柱と柱の間など、躯体内の空間に断熱材を充填する工法

充填断熱のメリットは、外張り断熱工法と比べてローコストで施工できることが多く、ほとんどの種類の断熱材を使用できます。デメリットとしては柱と梁のつなぎ目などを避けながら気密・防湿シートを張る必要があるため施工方法が比較的煩雑などが挙げられます。

充填断熱のイメージ
充填断熱のイメージ

●外張り断熱
柱の外側に断熱材を張り付ける工法

外張り断熱工法は柱を外側から覆うため充填断熱と比べて柱部分からの熱の出入りがないので、断熱性に有利です。また充填断熱とくらべて施工しやすい工法です。デメリットとしては断熱材が厚すぎると、あるいは地震で揺れたりすると垂れ下がる危険があるためその対策工事が必要なことや、壁厚が増えるため狭小地では充填断熱よりも室内が狭くなることなどが挙げられます。

なお、外張り断熱工法や基礎部分の断熱(※)などではグラスウールなど防蟻性の高い断熱材が有利です。

※家の基礎部分を断熱する方法。最近広まりつつある断熱方法で、西方さんも推奨している。床下を乾燥状態に保てるため、防腐・防蟻の処理をせずにすみ、木材の耐久性も向上できる。また床下暖房に比べて暖房費を節約しやすい

外張り断熱のイメージ
外張り断熱のイメージ

●付加断熱
充填断熱と外張り断熱の両方を施工する工法

付加断熱は、断熱材を付加するわけですからその分のコストが増えます。しかし充填断熱や外張り断熱だけよりも断熱材を厚くできるため、断熱性能を高めやすい工法です。

付加断熱のイメージ
付加断熱のイメージ

「例えば外張り断熱では断熱性の高い硬質ウレタンフォームが定番など、断熱工法の種類によって向いている断熱材もあります。断熱工法もそれぞれ一長一短ありますが、最近はそれぞれデメリットだった部分を補う手法が開発されています。また施工会社によって得意不得意な断熱工法もあるでしょうし、断熱材同様にどの断熱工法が優れているかは一概には言えないのです」

先述したように、重要なのは「しっかりと断熱すること」。そう考えると家の断熱性能の良し悪しを決めるのは断熱材や断熱工法よりも、施工会社選びのほうが重要なのです。

施工会社を選ぶ目安の1つは「C値」

では施工会社を選ぶ際はどんなことに注意すればいいのでしょうか。

「先ほど述べたように、施工会社には得意不得意やこだわりの断熱材、断熱工法といった志向性もあります。そのため例えば『自然系の断熱材を使いたい』とか『狭小地だからできれば充填断熱』などの要望があるならば、それらの施工実績のある施工会社に依頼したほうが良いでしょう」

さらに施工精度が高いかどうかを見極めるにはC値(住宅における相当隙間面積)をホームページなどで調べたり、聞いたりするといいそうです。

C値とは家の気密性を示す指標で、数値が低いほど気密性が高いことを表します。気密性の高い家をつくれるということは、断熱材もキチンと隙間なく施工できる技術があると言えます。C値が1以下、できれば0.7くらいだと安心です」

また気になる施工会社の、別の施工現場を見せてもらうのも良い方法だそうです。「現場で実際に断熱材を入れている様子を見れば、グチャグチャに入れているか、キレイに入れているか、素人でも見た目でわかると思います」

断熱材選びは施工会社選び。上記を参考に快適な家づくりを目指しましょう。

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取材・文/籠島康弘 イラスト/梶谷聡美
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