防火地域や準防火地域って何? 家を建てるときの制限をわかりやすく解説

最終更新日 2024年03月12日
防火地域や準防火地域って何? 家を建てるときの制限をわかりやすく解説

家を建てる際に「防火地域」「準防火地域」という言葉を耳にしたことはありませんか。これらの地域に家を建てる場合、家の構造や材料に一定の条件がつけられますが、具体的にどんな制限があるのでしょうか。一級建築士の橋本美穂さんに教えてもらいました。

防火地域・準防火地域とはどんな場所なのか

火災の危険を防ぐために定められる地域

防火地域・準防火地域とは都市計画法において「市街地における火災の危険を防除するため定める地域」として指定されるエリアです。火災の危険を防除する(防いで取り除く)ため、多くの場合で駅前や建物の密集地、幹線道路沿いなどが指定されています。建物の密集地などは火事の延焼を防ぐために、幹線道路は火災の際に消防車などの緊急車両の通行を妨げないようにすることが目的です。

防火地域・準防火地域のイメージ
防火地域・準防火地域のイメージ
たいていは駅前の繁華街など建物の密集地や幹線道路沿いが防火地域で、その周りが準防火地域。さらに駅から離れると法22条区域や、そうした制限のない区域になる傾向がある(画像作成/SUUMO編集部)

そのほかに法22条区域があります。これは建築基準法で規定された区域のことで、燃えにくい屋根や外壁を使わなければいけません。さらに東京都の場合は『新たな防火規制区域』もあります」

そもそも他の道府県よりも防火地域・準防火地域の多い東京都ですが、木造住宅が密集して道も狭い地域が多く、先ほどの防火地域・準防火地域だけでは対応しきれないため、2003年(平成15年)に「東京都建築安全条例に基づく新たな防火規制」が定められました。この条例に基づき定められた地域を「新たな防火規制区域」といいます。

なお大阪市でも東京都と同じような条例を定めているなど、地域によっては条例に基づく別の制限区域のある場合がありますが、目的や内容は東京都とほぼ同じですので、下記では省きます。とはいえ家を建てる際は必ずその土地がどのような区域なのか、どんな制限があるのか調べることが必要です。

防火地域・区域別による制限は何が違うのか?

さて、前述のように建てる家に制限を課している地域・区域を4つ挙げましたが、制限の厳しい順に並べると次のようになります。

防火地域>新たな防火規制区域>準防火地域>法22条区域

これらの地域・区域の建築制限を簡単にまとめると、下記のようになります。

防火地域の建築制限
防火地域の建築制限
新たな防火規制区域の建築制限
新たな防火規制区域の建築制限
準防火地域の建築制限
準防火地域の建築制限
(画像作成/SUUMO編集部)

法22条区域では、屋根を燃えにくい不燃材料で葺くことが必要です。外壁にも防火性能のある材料を使用しなければなりません。

防火地域・準防火地域などに建てられる家とは?

上記のとおり、防火地域・新たな防火規制区域・準防火地域については、階数や延床面積によって家を耐火建築物や準耐火建築物にしなければなりません。では耐火建築物や準耐火建築物とはどんなものでしょうか。

防火構造の違い
耐火建築物 鉄筋コンクリート造や耐火被膜した鉄骨造などの耐火構造であること。加えて窓等の開口部を防火窓や防火ドア、防火ダンパー付き換気扇にすることなどが必要になる。木造でも耐火建築物にすることが可能
準耐火建築物 耐火被膜した木造住宅など、耐火構造ほどではないが一定基準に適合する構造であること。窓等の開口部は耐火建築物と同じ

火事に強いというと鉄筋コンクリート造などが思い浮かぶでしょうが、木造住宅でも耐火建築物や準耐火建築物にすることはできます。つまり木造住宅でも防火地域(2階以下で延床面積100m2以下)や、準防火地域(3階以下で延床面積1500m2以下)にも建てられるのです。

ただし木造で耐火構造にする場合は、専門知識が必要だったり工程が増えるなどするため一般的な木造住宅よりも工期が長くなる場合が多いので、工期には余裕をみておいたほうがいいでしょう。

なお耐火建築物・準耐火建築物のほかに「省令準耐火構造」という基準がありますが、これは住宅金融支援機構が定めた基準のことです。耐火建築物・準耐火建築物のように火災保険の割引対象になりますが、防火地域・準防火地域との関連性はあまりないので、ここでは省きます。

防火地域・準防火地域などに家を建てる方法

建てる土地が防火地域かどうかの調べ方は?

「制限が厳しいほど当然建材等の価格が高くなるほか、それを建てられる施工会社や職人も限られるため、防火地域などで家を建てる場合はコストがかかる傾向にあります」。予算を組むためにも、まずは建てたい土地が防火地域や準防火地域等であるか調べる必要があります。

不動産会社や建築家、施工会社に依頼すれば調べてくれるほか、自分でも役所で調べることもできます。また最近はインターネットで手軽に調べることができ、「調べたい市区町村名 防火地域」で検索すれば、各市区町村が公開している都市計画図を閲覧できます。市区町毎に防火地域・準防火地域の表示の仕方が異なりますが、たいていは地図の「凡例」に見方が記載されていますから、それを参照して調べましょう。

なお東京都の「新たな防火規制区域」は比較的新しい条例のため、建て替えの場合などで「以前は準防火地域だったから今度も」が通用しないことが多いため、必ず最新の情報で確認しましょう。

東京都の「新たな防火規制区域」は下記から指定区域を見ることができます。
新たな防火規制の指定区域図

防火地域かどうかで建てる家の費用やカタチが変わる

防火地域や準防火地域等の場合、使える建材も変わります。例えば防火窓でいえば、最近ようやく網なしの防火窓も種類が増えてきましたが、主流は網の入った窓です。ドアも燃えにくい素材を使用した防火ドアにしなくてはなりません。「そのため窓のサイズやドアのデザインも限られます」。防火窓や防火ドアの代わりに防火シャッターを備える方法もありますが、たとえ凝ったデザインの窓にしても防火シャッターをつけると外観デザインに影響は出ます。その他、外壁や屋根、軒裏などにも不燃材を使用しますから、やはり外観デザインに影響はあります。

一方で防火地域に建てる耐火建築物は建ぺい率が緩和されます。駅前などであれば容積率や高さ制限も緩和されています。「そのため、例えば境界いっぱいに5階建てを建てられる場合もあります。駅前など利便性の高い土地なら、1~2階を店舗に貸して3~5階を自宅にする、というプランも考えられます」。ただし建ぺい率が高いエリアということは、隣の家も敷地いっぱいに家を建てられるということでもありますから、お互いのプライバシーに配慮した家づくりが求められます。

なお、現在検討されている建築基準法の一部改正では、防火地域だけでなく準防火地域でも建ぺい率を10%緩和される予定です(2019年2月現在)。最新の情報を各自治体で確認するようにしましょう。

このように防火地域・準防火地域等に建てる場合は費用が高くなりがちで、家のデザインが制限されることもあります。一方で駅前など利便性の高いエリアが多く、建ぺい率や火災保険の部分でメリットもあります。また耐火建築物や準耐火建築物はいずれも火災保険の割引を受けられます。費用やデザイン、住環境、利便性などを総合的に判断して建てる土地を決めることが大切です。

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取材・文/籠島康弘 
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