雨仕舞ってなに?仕組みや役割、防水との違いは?

公開日 2021年11月18日
雨仕舞って何?仕組みや役割、防水との違いは?

住宅に長く住むためには、雨水対策が重要です。そこで、雨漏りなどを防ぐため大事なのが「雨仕舞」。あまり聞きなれない言葉ですが、家を新築したり、リフォームをする際に、耳にすることがあるかもしれません。
雨仕舞とはなにか?その必要性や仕組みなどについて、屋根材の製造や施工を手掛けるカナメに伺いました。

雨仕舞とは?

住宅内への雨水の浸入を防ぐ仕組みなど

雨仕舞とは雨水の処理の仕方を指す言葉で、構造や仕組みなども含む、水に対する建物への処置全般を指します。

「平面であれば、基本的に雨水は上から下に流れるものですが、住宅には屋根や窓があります。例えば、外壁と屋根など、異なる部材が出合うイレギュラーな部分から住宅内に水が入らないように、上から流れてくる水をどう誘導して排水するかという考え方やそのための処置全般を指す言葉が雨仕舞です」(カナメ、以下同)

雨への対処としてなじみのある言葉である“防水”は水をブロックして建物に浸入しないようにすることであるのに対し、雨仕舞は雨水をどう防ぐかということに加え、どのように雨水の通り道を設けて地面などに受け流すかというところまでを含みます。

防水と雨仕舞の違い
防水は水をシャットアウト。雨仕舞は誘導して受け流す

非常時の雨水の流れも想定した排水の仕組み

雨仕舞の考え方では、平常時の雨水の流れをどう誘導するかだけでなく、台風など、非常時の水の流れも想定した上で排水の仕組みなどを施します。

「台風などの強い風によって下から上へ水が巻き上げられたり、毛細管現象によって、水が逆流してしまうことなどがあります。そのような事態も想定して、水を上手く排出する仕組みを設けておいたりすることも雨仕舞の一つです」

毛細管現象とは、水の入ったグラスにストローを指すと、ストロー内の水面がグラスの水面よりも少し高くなるように、表面張力によって、狭い空間の中を水が上昇するなどの物理現象を指します。住宅の場合も、ぴったりと重なった面に水が入り込んでしまうと、表面張力によって、水がその内部にしみこんでしまうということがあり、そういった水の浸入を防ぐためには適切な隙間などを設けておくことも必要です。雨水が浸入しないよう、ただ隙間を無くして水をブロックするのではなく、毛細管現象を防止するための隙間や、内部に通気のための空間を設けるといった処理を行うのも雨仕舞の一つです。

表面が滑らかな金属屋根で起こりうる毛細管現象のイメージ
表面が滑らかな金属屋根で起こりうる毛細管現象のイメージ

雨仕舞のポイントは?

境界線や端が重点箇所

雨仕舞という概念にのっとった建物への処置は屋根や壁、建具など建物全てに関係しており、雨仕舞が上手く機能しないと、住宅の劣化や雨漏りなどを引き起こしてしまいます。中でも、雨仕舞のポイントとなるのは、住宅に雨水が浸入するリスクの高いイレギュラーな部分。つまり、部材の境界線や端の部分がポイントとなります。

雨仕舞の例1 屋根と外壁の取り合い

例えば1階の屋根と2階の外壁の取り合いは雨漏りが多く発生する箇所の一つです。取り合いとは複数のものの接点となる部分のことを指しますが、屋根と壁という異なる構造物が接する部分というのは、構造が複雑になり、雨漏りリスクが高まる箇所になります。リスクの高い場所であるため、雨仕舞の技巧が施される部分です。

外壁と屋根の境界部の雨仕舞
外壁と屋根の境界部の雨仕舞
A:最頂部を「返し」折りし、逆流が来てもブロック/B:雨押さえを外壁の内側まで差し込む/C:最奥部に防水シートを敷設し、最終ブロック。湿気の水滴もブロック/D:雨押さえの内側にも「返し」を施し、強風での逆流をブロック/E:「雨押さえ」と「屋根」の隙間を埋める

外壁と屋根の取り合いには、防水シートを敷いた上に鋼板の”雨押さえ(あまおさえ)”を設置します。雨押さえは外壁の内側まで差し込み、差し込んだ雨押さえの最頂部や雨押さえの内側には返しを施し、逆流した場合の水の浸入を防ぎます。さらに、雨押さえと屋根本体の隙間を埋める“面戸板(めんどいた)“の下の部分には数mmの隙間を残し、内部に入ってしまった水の逃げ口を確保しておきます。

雨仕舞の例2 煙突

屋根と煙突という異なる部材がぶつかる部分については、前述した屋根と外壁の取り合いの構造と基本的には同じです。リフォームの際に新たな屋根材を被せる場合などは、上から流れてくる雨水をより強固にブロックするために、新築時よりも多くコーキング材を使用することもあります。

「コーキング材は便利ではありますが、あくまでも本来の雨仕舞いを部分的に補強・補助する部材です。コーキング材に頼り切った雨仕舞いは、美化や耐用年数を損なう恐れがあります」

煙突と屋根の境界部の雨仕舞
煙突と屋根の境界部の雨仕舞。リフォームのケース
図はリフォームのケース

雨仕舞の例3 棟

屋根の頂上部に位置する”棟(むね)“も雨漏りが発生しやすい箇所の一つ。高い位置にあるため、雨風の影響を受けやすく、雨仕舞の重点箇所でもあります。

棟の雨仕舞
棟の雨仕舞
A:雨押さえの内部にも「返し」を施し、強風での逆流をブロック/B:ここの長さも重要。短すぎると逆流の勢いを殺せない/C:最奥部に防水シートを敷設し、最終ブロック。湿気の水滴もブロック

雨仕舞の例4 谷

屋根と屋根がぶつかる“谷(たに)”は雨水が特に集中し、ゴミなどもたまりやすく、雨漏りが発生するリスクが高い部分です。川の合流と同じで、異なる方向から雨水が合流してくるため、水の流れが強く、また不規則になるため、雨水の動線を確保するというのも、雨仕舞のポイントになります。

雨水は屋根から庇、庇から雨樋と流れて排水されますが、谷の部分に取り付ける雨樋は十分な容量が必要です。雨樋が詰まって水が想定外の方向に流れ、雨漏りを引き起こしてしまわないよう、落ち葉やゴミの詰まりを防ぐカバーを付けた製品などもあります。

谷
屋根の谷部分(画像/PIXTA)
カバー付きの雨樋
カバー付きの雨樋(画像提供/カナメ)

雨仕舞の寿命、リフォームのタイミングは?

雨仕舞の定期点検は特に必要なし

例を挙げたポイントのほかにも、建物のあらゆる部分に雨仕舞の考え方が反映されています。建物全体が経年劣化と共にリフォームや修理が必要になるのと同様に、雨仕舞の部分についても、不具合があればメンテナンスは必要ですが、雨仕舞の定期点検などは特に必要ないそうです。

「例えば、紫外線などで劣化するコーキング剤の寿命は10年程度ですが、コーキング剤だけでなく、さまざまな仕組みを施して、二重三重に雨仕舞は施されているので、20~30年は特に点検などを意識する必要はありません。

もちろん、経年劣化はしていくので、10~15年位で屋根塗装などのリフォームを検討するタイミングがあれば、合わせて雨仕舞の施された部分の点検などを行うと安心ですが、ガルバリウムの屋根などは、20~30年は特に問題なく使用でき、塗装などのリフォームを行うこともなかなかありません。ですので、雨仕舞については、水がしみ出てくるなど、気になる症状が出たときに点検を行うのが一般的です」

スレートや瓦屋根の場合、10~15年程度で色あせなどが気になり、屋根のメンテナンスを行うケースが多いですが、ガルバリウム鋼板などの金属屋根の場合は耐久性が高く、20~30年点検を行わないことも少なくありません。20~30年経っても、機能を果たさなくなるほど雨仕舞の構造物が破損するということはほとんどないため、雨仕舞に特化して定期点検などを行う必要はないそうですが、水がしみ出してきている部分があったり、枯れ葉などゴミがたまっていたり、または、雨漏りが起きていたりする場合は、雨仕舞の一部が機能不全に陥っている可能性もあるため、施工会社などに点検を依頼するといいでしょう。

家の点検のイメージ
(画像/PIXTA)

雨仕舞の注意点は?

リフォーム後のトラブルには要注意

雨仕舞について不慣れな業者がリフォームを行った場合、屋根や外壁のリフォームを行った直後に、雨漏りや水漏れが発生してしまうというケースがあります。

「壁塗装をするときは、塗装を行う前に下処理として、クラックにコーキング剤などを注入する防水工事を行います。ほとんどの場合は問題ないと思いますが、一部雨仕舞に不慣れな業者がリフォームを手掛けた場合、雨仕舞で少し隙間を設けてある部分まで、コーキング剤でふさいでしまうということがあります」

あえて設けてある数mmの隙間は、何かしらの要因で内部に浸入してしまった水の逃げ場となっているため、そこをふさいでしまうと、逃げ場のなくなった水が室内の方にしみ出してくるということが起こりかねません。

せっかくリフォームをしたのに、そのせいで雨仕舞に不具合が生じてしまったということにならないよう、リフォームの際には複数の業者に見積もりを依頼し、信頼できる業者を見極めて依頼することが重要です。

クラックを埋める防水処理のイメージ
(画像/PIXTA)

雨仕舞は新築時にきちんと処理を施すのはもちろん、リフォームの際も、雨仕舞について知識や技術のある業者を選ぶのが重要です。大切な住まいを雨水から守り、長く住むために欠かせない仕組みとして、雨仕舞について、これから家を建てる人も理解しておくと安心ですね。

まとめ

雨仕舞とは住宅内への雨水の浸入を防ぐ施工方法や構造、仕組みなどを指す

雨漏りを防ぐためにも、取り合い部分などを重点的にきちんと処理を施すことが必要

リフォームの際も雨仕舞の知識のある業者を選ぶことが重要

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取材・文/島田美那子 イラスト/長岡伸行
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