初めての一人暮らしは、実際に毎月どれくらいお金がかかるのがイメージしにくいもの。はっきりとわかる家賃のほか、食費、光熱費、通信費などさまざま。そこで、一人暮らしを始めてから月々かかってくる生活費について、一人暮らしアドバイザー・河野真希さんに教えてもらった。部屋探しを始める前に知っておこう。
何かとお金がかかる一人暮らし。なかでも、生活費の大部分を占めるのが「家賃」。では、自分にとって適正な家賃はどのように計算すればいいのだろうか。
一般的に、家賃の適正額として「収入(手取り額)の3分の1以内」が目安といわれる。ただ、家賃は地域差も大きいため、「特に家賃の高い都市部や、まだ収入があまり多くない若い人の場合、収入(手取り額)の3分の1以内の家賃で部屋を探すのは難しいケースも」と河野さん。
「それよりも『収入(手取り額) - 家賃以外の生活費 - 貯蓄』という計算式で考えたほうがより現実的です」(河野さん、以下同)
つまり、月の手取り額(仕送りを含む)から家賃以外にかかる生活費の概算を引き、さらに貯蓄したい金額を引いて、残りの金額を家賃の上限とする、という考え方。人それぞれ何にお金をかけたいかは違うからこそ、この計算式で考えたほうが満足度の高い生活を送れるだろう。
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適正な家賃で部屋探しをするには、家賃のアップダウンに影響するポイントも知っておきたいもの。家賃の低い物件を探したいなら、下記のうち緩められる条件はないか見直してみよう。
例えば「歩くのは苦にならないから駅からの距離は遠くてもいい」など、一般的に人気がなくても、自分が許容できる条件を多く持っておくと、リーズナブルで満足できる物件に出会いやすくなるといえそうだ。
地域ごとの家賃相場(SUUMO調べ)も参考にしよう。
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では、食費や光熱費などの「家賃以外の生活費」はいくらが適正なのだろうか。一人暮らしの平均額を見てみよう。
一概にいくらとは言えないが、総務庁統計局の調査(下表)を見ると、家賃を除く一人暮らしの生活費は、月平均14万3803円との結果が出ている。
食費 | 4万6391円 |
---|---|
水道光熱費 | 1万3045 |
生活用品費 | 5955円 |
被服費 | 4712円 |
保健医療費 | 7426円 |
交通・通信 | 2万1796円 |
娯楽費 | 1万9425円 |
その他(理美容・交際費・教育) | 2万5053円 |
合計 | 14万3803円 |
あくまで平均データであり、お金の使い方にはもちろん人それぞれの違いがあるが、「初めて部屋探しをする人にとっては、だいたいの生活費の目安を知っておくことが大切」と一人暮らしアドバイザーの河野真希さん。「特にこれから部屋を探す場合、無理のない予算の中で部屋を探すための重要な目安となるでしょう」
2023年度における一人暮らしの食費の平均は、月4万6391円である。2022年度と比較すると0.8%の減額となったものの、昨今の食料品の相次ぐ値上げは家計への大きなダメージとなっている。
2023年度における一人暮らしの水道光熱費の平均は、1万3045円である。2022年度と比較すると6.8%も増加しており、こちらも昨今の電気料金や水道料金の値上げが大きく影響している。
食費、住居費(家賃)、光熱水道費……何にどれくらいお金をかけたいかは、人それぞれのライフスタイルによって違う。また、そもそも「収入(手取り額)」によって、どれくらい「かけられる」かも変わる。ここからは、一人暮らしの生活費を収入やライフステージ別にシミュレーションしていこう。
以下は、河野さんに試算してもらった「収入(手取り額)別 一人暮らしの生活費シミュレーション」の表。月15万円、20万円、25万円の場合で、項目ごとにだいたいの生活費の目安の金額と、それぞれの項目の費用が月の手取り額に占める割合を表示している。
必ずしもこの範囲内に収めればいいというものでもないが、だいたいこれくらいの割合になっていればバランスが良いとのことなので、目標の金額にしてもいいだろう。
一人暮らしの生活費は、性別やライフステージなどによっても異なる。総務省の「家計調査(家計収支編 単身世帯)2023年」をもとに、社会人の生活費を見ていこう。社会人の一人暮らしの場合、生活費(消費支出)は18万2114円である。食費は4万3617円、家賃は3万1527円となっている。
同じ社会人の一人暮らしであっても、男女で違いがある。社会人男性の生活費が18万6630円に対し、女性の場合は17万5816円。食費は社会人男性が4万9260円、社会人女性が3万6361円と1万円以上も差が開いた。家賃に関しては男性が3万2229円、女性が3万134円と大きな差はない。
社会人よりも収入が低い、もしくは収入のない大学生の生活費はどうだろうか。日本学生支援機構の「令和4年度学生生活調査報告」によれば、大学(昼間部)の学生生活費(学費と生活費の合計)の月額は平均約15万2058円。
アパート居住(一人暮らし)の大学生は自宅居住の大学生よりも生活費が高い傾向にあり、月平均17万7000円の支出となっている。このほか通っている大学の区分によっても異なり、同じ昼間部であっても私立学校に通う学生のほうが公立学校に通う学生より生活費が年間60万円高い。
※上記の試算は、学生生活調査報告のデータをもとにSUUMO編集部で計算したもの。
「なるべく支出を抑えたい」「節約して貯蓄を増やしたい」。そんなときはどのように生活すればいいのだろうか。
昨今の物価高騰に伴って、一人暮らしの生活費はさらにアップしていく可能性もある。
身近なところでは、さまざまな食料品の相次ぐ値上げによる、食費への影響を実感している人が多いのではないだろうか。ほかにも、水道光熱費、交通費などの値上げが話題となっている。今後は賃貸住宅の家賃も値上げの通告を受けるケースも出てくる可能性がある。
物価高騰による打撃を受けやすい食費。“一人暮らしでは手料理するほうが高い”といわれることもあるが、上手に買い物&自炊をすれば食費はグッと節約できる。
まず食材を選ぶときは、流通量が増えて価格が下がりやすい旬のものを選ぶのがオススメ。価格の高い調味料や乳製品などは、プライベートブランドをうまく活用してみよう。また、食品ロスを出すと無駄になってしまうので、食べ切れる量を買って無駄を出さないように使い切ろう。
また、自治体によるプレミアム特典付き商品券を購入するのもよいだろう。その自治体の居住者や通勤者のみが購入できるお得な買い物券で、20~30%前後のポイントが上乗せされている場合がある。
光熱費はいきなり下げられるものではないが、家電のつけっぱなしや水道の流しっぱなしをなくすなど、地道な努力の積み重ねが節約につながる。初期投資にお金はかかるが、冷蔵庫や洗濯機を省エネモデルに変えるのも手だろう。このほか、節水シャワーヘッドに変えることで水道代の削減も期待できる。
住む部屋が決まったら家賃は変わらないが「ほかの生活費は節約の工夫や努力によって抑えることができます」と河野さん。上手な節約・貯蓄のために、上記に加えて知っておきたいポイントを聞いた。
□ 家計簿をつけなくても、使いすぎが気になる費用だけメモして、1カ月の合計金額を振り返る
□ 通信費は格安SIMへの変更、契約プランの見直しなどにより大きく節約できることも
□ 貯蓄は収入の10%以上を目標に、自分が何かしなくても、自動で積み立ててくれるものを
□ 例えば給料日など月に1回、総資産が現在いくらなのか、前月からの増減額をチェック
給与から引き落とされる一般財形や自動積立貯金を活用すれば、貯蓄が苦手な人でも自然とお金を貯めやすくなる。銀行によって金利も違うので、比較しながら決めよう。
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家賃を除く一人暮らしの生活費は月平均14万3803円
適正な家賃は、収入(手取り額)から家賃以外の生活費と貯蓄分を引いて計算
食費節約のために、プライベートブランド商品や旬の食材を活用しよう
上手に節約・貯蓄するためには、お金の使い方を把握し、自動的に積み立てを