一人暮らしで家賃や電気代、水道代とともにほとんどの人が生活の固定費として支払うガス代。「思ったより高い」と聞いたりするけれど、ガス料金の平均額はいくらくらい?プロパンガスと都市ガスって何が違うの?快適な生活を送りながらガス代を安くする節約術を一人暮らしアドバイザーの河野真希さんに教えてもらいました。
ガスには都市ガスとプロパンガスの2種類があり、原料、熱量、料金形態などさまざまな違いがあります。
主な原料は、メタンが主成分の天然ガスや海外から輸入する液化天然ガス(LNG)で、地面の下に埋められたガス管を通じて各家庭に供給されます。使用する際は、都市ガス事業者や地方公共団体が運営する公営ガス事業者と契約します。料金設定は、経済産業大臣の認可を受けた規制料金(公共料金)になります。ガス管が引ける場所に供給されるため、主に都市部に普及しています。
主な原料は海外から輸入される液化石油ガス(LPG)で、事業者がLPガスが入ったボンベを各家庭に配送し供給されます。プロパンガスの物件では、家の外にガスボンベが設置されています。使用を開始する際は、地元のガス会社から選んで契約し、料金はLPガス会社が独自に料金を定める自由料金制です。普及エリアは全国各地で、特に都市ガスの導管がないエリアに供給されています。
都市ガスとプロパンガスの違いがわかったところで、次にそれぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。
・プロパンガスに比べて料金が安い
・空気より軽いため万が一のときも拡散され安心
・天然ガスが原料で地球にやさしい
・災害時の復旧が遅い(地中のガス管の点検や確認に時間がかかる)
・家の近くにガス導管が引き込まれていない場合、初期費用として工事費用がかかる
都市ガスはプロパンガスに比べて熱量が低いといわれます。しかし、一般家庭用のガスコンロは、器具により最大値が決まっており、都市ガスは熱量の低さを補うためにガスの量が多く出るようにつくられているため、お湯が沸くのにかかる時間は同じで、特にデメリットにはなりません。(参照:一般社団法人プロパンガス料金消費者協会/東京ガス「ウチコト」)
都市ガスのメリットは料金が安いこと。災害時の復旧はプロパンガスに比べて遅いですが、カセットコンロを準備しておくなど、備えがあれば安心でしょう。
・都市ガスより熱量が大きい(火力が強い)
・災害時の復旧が早い(※)
・工事が必要ないため、導入時の初期費用が安い
・ボンベを設置するだけなので、全国どこでも供給できる
※経済産業省の調査によれば、東日本大震災時の全面復旧日数は被災から42日、都市ガスはさらにその12日後。ただし、復旧の時期は地域により異なります
・都市ガスに比べて料金が高い
・料金に変動がある
・保証金が必要な場合がある(※)
※入居時に支払う保証金は退去時にガス代の未払いに充てるためのもので、契約終了時に返金されます。金額や保証金の有無はガス販売会社によりますが、通常使用のガス料金の2、3カ月分、あるいは1万円程度です
プロパンガスの料金はガス事業者により異なり、都市ガスより高くなりますが、災害時の復旧が早いのがメリットです。
賃貸物件を選ぶ場合は、事前にどちらのガスを使っているかを知っておく必要があります。
前章でガス代は都市ガスに比べてプロパンガスの方が高いことがわかりました。では、実際にかかるガス代を比較して見ていきましょう。ガス会社や地域によってガス代は異なるため、こちらで紹介する平均額はあくまで目安としてご覧ください。
プロパンガスも、都市ガスも、ガス料金は「基本料金+従量料金(単位料金×ガス使用量)」で計算します。
プロパンガスの場合、自由料金制で料金形態、単価も各社それぞれ違います。LPガス販売事業者の多くが自社の標準的な料金メニューを公表していませんが、一般財団法人日本エネルギー経済研究所 石油情報センターによると、プロパンガスの関東地方の一般小売価格は、使用量5m3/月の場合、5051円(基本料金、消費税込)(2022年8月31日発表)と公表しています。
基本料金 | 使用量 5m3 | 使用量 10m3 |
---|---|---|
1806円 | 5032円 | 8201円 |
都市ガスの料金は、基本料金と従量料金(ガスの使用量×単位料金)を足したものになります。
単位料金は、原材料の価格により変動します。これは、「原料費調整制度」に基づいて毎月調整されているものです。
基本料金 | 基準単位料金(2022年9月) |
---|---|
759円 | 145.31円 |
使用量5m3/月の場合の1カ月のガス料金 1485円
(基本料金)759円+(単位料金)145.31円×(使用量)5m3=1485.55円≒1485円
都市ガスの月平均使用料はプロパンガスの月平均使用料5051円より3566円安くなります。1カ月3566円は単純計算で1年間4万2792円と結構大きな金額になります。
都市ガス料金には、お得な料金メニュー、プランが設定されていることも。ガス会社のホームページで確認しましょう。
ガス代以外の光熱費についてももっと詳しく
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ガスのご使用量のお知らせ(検針票)が届いたら、内容を確認しましょう。上から見ていきます。
1:検針月日… いつの検針分かがわかります。原則として前回検針日の翌日~今回検針日までになります。
2:今回ガスご使用量・今回指示数・前回指示数… 当月分のガスの使用量、検針時のガスメーターの指示数、前回の検針時のガスメーターの指示数が記載されています。
3:前年同月使用量・前月使用量… 前年同月、前月の使用量です。
4:口座振替予定日
5:請求予定金額・料金内訳… 当月分請求予定額、料金内訳が記載されています。
検針票には、今回の料金に関する情報だけでなく、さまざまな情報が盛り込まれています。口座振替でガス代を支払っている場合は領収証も併用されています。一年間はまとめてファイルなどに保管しておきましょう。
毎月かかる一人暮らしのガス代は、少しでも安く抑えたいですね。一人暮らしアドバイザーの河野真希さんにガス代を節約する方法を教えてもらいました。
節約のために、まずはガスがどんな場所で使われているのかを把握することが大切です。キッチンにはガスコンロやガスオーブン、ガス給湯器があります。また、お風呂を沸かす給湯器、お風呂を快適に保つガス温水浴室暖房乾燥機も。冬はガス温水床暖房やガスファンヒーター、ガスストーブといった暖房器具もあります。あらためて家の中を見回すと、意外とガスを使う機会が多いことがわかりますね。
総務省の家計調査から、単身世帯(34歳以下)のガス代の1カ月の平均金額を見ていきます(都市ガス、プロパンガスの区別なし)。ガス代の年間の1カ月平均は2621円、最も安い時期が夏(7~9月)の1898円/月で、最も高くなるのが春(4~6月)の2809円/月と、夏の約1.6倍にもなります。
冬にガス代が高くなるのは、暖房機器をフルに使うことと、水道水の水温が低いことが原因です。水道水の水温は7~9月は平均約26℃ですが、1~3月は平均約10℃で約16℃も差があり、給湯や調理で水道水を沸かすのに使うガスの量が増えます。(参考/東京都水道局「水質に関するトピック」)
【お風呂】
・一人暮らしなら、湯船にお湯をためるより、シャワーの方が節約になる。ただし、身体や頭を洗っているときには流しっぱなしにしない。
・湯船を使うときには、追い炊きをしなくてもいいように、お湯がたまったら、すぐに入る。
・お湯をためる際、水位を標準より下げる。
・自動お湯張り機能がないときには、入れすぎに注意する。お湯が一定量になると、自動でお湯が止まるアイテムがあるので活用する。
・お湯の温度を上げすぎない。
【キッチン】
・調理に電子レンジや炊飯器などガスを使わないアイテムを活用する。
・煮る・沸かす際には、火にかける時間が短い保温調理鍋や電気ケトルを使う方がガスで沸かすより節約になる。
・お湯を沸かすときは必要な量だけ鍋ややかんに入れ、鍋にはフタをする。
・鍋やフライパンの底の水気を拭いてから、火にかける。
・中火で調理する。
・余熱を利用するなど、調理時間を短くする。
・食器洗いの際、お湯の温度を上げすぎないよう、30℃~35℃を目安とする。
・ガスバーナー部分に汚れがこびりついていると火力が弱くなり熱効率が悪くなるため、掃除をしておく。
野菜の下茹でに電子レンジを使ったり、一つの鍋で同時に調理をしたり、おかずのつくり置きをするのは、ガス代と同時に時間も節約できて一石二鳥です。すぐに実践できる節約術ばかりなので、トライしてみましょう。
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最近はオール電化の賃貸物件が増えていますが、一人暮らしでオール電化の賃貸物件に住むのはどうでしょうか。
料金面では「ガス+電気を契約するよりも、お金がかからない可能性が高いです。オール電化なら、ガスの分の基本料金がかかりません。その分電気代は上がりますが、ガス+電気の合計金額を上回らないことが多いです」と河野さん。
「オール電化の場合は、深夜の電気使用料が安くなるプランがあり、日中は学校や会社に行っていて、家にいない一人暮らしの人に向いています。給湯は、深夜の電気を利用して、お湯をつくります。日中にお湯を使いすぎてなくなってしまった場合は、昼間の高い電気でお湯を沸かすため、電気代がかかります。使用する時間帯、タイミングや量を考えて使う必要があります」(河野さん)
また、河野さんに聞くと、IHの一番のメリットは安全性とのこと。
「IHヒーターは火傷の心配もガスよりは少なく、火事にもなりにくく、ガスに比べて安全に使用できます。集合住宅の場合、他の部屋からの出火の可能性も低く、安心材料の一つかと思います。
IHヒーターはガスに比べると火力が弱いこともありますが、一人暮らしの料理であれば、問題なく使用できるでしょう。掃除がしやすく、部屋が暑くなりにくいというメリットもあります。ガスの場合は料理をすると、キッチン全体の温度が上がってしまうことがありますが、IHは鍋やフライパンのみを温めるので、夏の料理の負担が減ります」(河野さん)
筆者の経験では、IHクッキングヒーターはガスコンロに比べて掃除がラクです。ただし、IH対応の調理機器しか使えないため、手持ちの鍋やフライパンがIHに対応していないときは新たに購入する必要があります。ガスの調理に慣れていた人は、最初は抵抗があるかもしれませんが、すぐに慣れますし、焦がすなどの失敗が少ないです。
ただし、「当たり前ですが、停電時はお湯もコンロも電気も使えないので、災害等の備えをしっかりしておくことをおすすめします」(河野さん)
一人暮らしだからこそ安全性と同時に災害時の備えは大切ですね。
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プロパンガスと都市ガスではプロパンガスの方が料金は高い傾向がありますが、プロパンガスの部屋の方が家賃は安い傾向があるようです。賃貸物件の場合、家賃も含めると、プロパンガスと都市ガスのどちらに住むのがお得なのでしょうか。
「プロパンガスのメリットは災害時に復旧が早い点です。一方、デメリットとして料金が高いことが挙げられますが、ガス会社によって料金が異なるので、実際にいくらになるかは不動産会社や大家さんに確認する必要があります。例えば、その物件が周囲の相場と比べて大幅に家賃が安いのであれば、プロパンガスであっても損はないかもしれません。一人暮らしの月平均使用量は5m3なので、そこからプロパンガスの料金を概算し、気になる物件の家賃と足してみたものを、相場と照らし合わせてみると、その物件を借りても損がないかを判断するヒントになるでしょう」と河野さん。
ガス会社に計算の基準になる基本料金、従量料金を聞いて、基本料金+従量料金×使用量(5m3)で計算して、比較検討してみましょう。
賃貸物件は、決められたガスしか使えない、ガス会社を選べないと思っていませんか。2017年4月から都市ガスの小売全面自由化がスタートしました。
プロパンガスはもともと自由化されていましたが、都市ガスは地域ごとに決められた都市ガス会社からしかガスを買うことができなかったのが、自由に会社や料金メニューが選べるようになったのです。すでに敷設されているガス管を使えるので、新たにガス管を引く必要はなく、品質も変わりません。自分のニーズに合ったガス会社に切り替えるだけで、ガス代が節約できる場合があります。
ただし、賃貸物件で建物の大家さんがガス会社を指定している場合は個別にガス会社を選べないことがあるので確認しましょう。
さまざまな観点から一人暮らしのガス代を見てきましたが、選べることと選べないことがあり、料金形態も単純ではありません。賃貸物件でのさまざまな条件を考えて最新の具体的な情報を基準に検討しましょう。
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ガスは都市ガスとプロパンガスがあり、供給エリア、供給方法、熱量などが異なる
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