一人暮らしだけど犬を飼いたい……借りるならどんな部屋がいい? 家賃や敷金は高くなる? 初めてでも飼いやすいのは? 暮らしていく上で注意すべきことは? などといった疑問も多い。そこで、一人暮らしで犬を飼うにあたって知っておきたいことを、目黒アニマルメディカルセンターの佐藤貴紀先生と、不動産会社・カエルホームズの木津雄二さんに伺った。
犬が好きな人にとって、犬と暮らすことは何よりの幸せ。「実際に飼っている人も、犬と一緒なら寂しくない、癒やされる、という方が多いです。一人暮らしであればなおさらですよね」と獣医師の佐藤先生。
犬と暮らすには、まず「ペット可」の物件を探すことが大前提となり、一般の物件に比べると選択肢は決して多くない。そんな中でも、犬と飼い主にとってより安全、かつ快適で楽しい生活ができる物件を選ぶには、どんな点をチェックすればいいのか、教えてもらった。
犬にも自分の居場所が必要なので、部屋にケージを置くスペースがあるかどうかをチェック。ケージは、中に犬のベッドやごはん・お水・トイレなどが入る大きさが必要。目安として、2~4kgくらいのチワワやトイプードルなどの小型犬なら、必要なケージの大きさは縦横90cm×60cm以上。そう考えると、部屋の広さは6畳くらいでもぎりぎり。例えば柴犬など中型以上の犬や、小型であっても多頭なら、さらに広い部屋が必要になる
犬には散歩が必要なので、物件の周辺環境もチェックポイント。周辺に緑が多い、歩道が広い、犬が入れる公園があるなど、散歩しやすい環境が整っていると理想的。近くにドッグランがあるとさらに◎
エレベーター内では犬を抱っこ、などのルールを確認。抱っこしていても、他の住人が乗ってきたときに吠えるなどのケースがあるので、いざとなったら階段でも行き来できるよう、低めの階を選ぶとラク
一般のペット可物件では少ないが、ペット共生型の物件などでは、共用部分に足洗い場を備えているところもある。散歩後に足を洗ってから建物に入れて衛生的
ベッドやトイレトレーを入れるサークル、外出用のキャリーなどは置き場所が十分あるかチェック。また、買い置きするドッグフードやトイレシートもかさばるので、収納スペースが充実していることも重要
犬がいる生活では、犬が走り回って床や壁が傷ついたり、オシッコなどの汚れが染み込んでしまったりすることも。となると「原状回復にお金がかかるため、物件によりますが、一般の契約とは異なる点が出てきます」とカエルホームズの木津さん。以下のようなケースもあるので心得ておきたい。
●敷金の積み増し
犬1頭につき、敷金プラス1カ月分の積み増し。積み増し分は償却(退去時に戻ってこない)となることも。物件によっては、賃料が5000円アップ、などのケースもある
●原状回復費を負担
原状回復は基本的に全額オーナーの負担で、入居者の故意・過失に関する部分だけ入居者負担。ところが、犬を飼う場合は全額入居者の負担となることも。クリーニングだけでは済まず、交換となってしまった場合、例えば床面積30m2の部屋でかかる費用の目安は、クロス(壁紙)の全面張り替えで10万円くらい、フローリングの全面張り替えで30万円くらい。契約時に入る保険によっては、犬による部屋の汚損の修理費用を出してもらえるプランもあるので、契約の際、内容を確認しておこう
●犬を飼うことを事前に申告
管理会社などによっては、犬の写真や狂犬病の注射番号、予防接種の証明書などの提出を求められることがある。部屋を借りる時点では飼っていないが、これから飼う予定の場合には、その旨を伝え、自分が飼いたいペットと、その物件が許可しているペットの条件が合致するかを確認。そして実際に飼い始めるときに改めて手続きを。内緒で飼うのはNG。発覚した場合、退去させられることもある
ペットを飼う際の手続きについてもっと詳しく
一人暮らしでペットを飼うには? 獣医さん・不動産会社さんに聞いてみた
一人暮らしの部屋は小さめで、隣との距離も近いもの。その点を考えると「小型で吠え癖の少ない犬が飼いやすいといえるでしょう」と佐藤先生。「個体差はありますが、例えばトイプードルなどは吠え癖が比較的少なく、トリミングの費用はかかるものの抜け毛が少なめで、身体も強いという傾向にあります」
ほかにもヨークシャーテリア、マルチーズなど3kg前後までの小型犬は、ケージもそれほど場所を取らず、抜け毛も少なめ。ただし、トリミングやブラッシングなどにはお金と手間がかかることは知っておきたい。また、小型犬でも狩猟犬として改良された犬種は、その名残で吠えやすいという傾向にあるようだ。
ただし「犬種やサイズにかかわらず、犬の性格には個体差があり、飼い主さんの育て方によっても変わります。犬はトレーニングをすることで成長できる、人が考えている以上に頭のいい生きものです」と佐藤先生。「最近では、保護犬の里親になる方も増えています。性格がある程度、出来上がっているため、自分の生活スタイルに合ったコを探すことも可能です。保護団体の方とよく相談すると良いでしょう」
パートナーを選ぶにあたって重視するポイントや、「このコを迎えたい」と思う理由は人それぞれなので、飼いやすさなどの視点も参考にしつつ、運命のパートナーとの縁を大切にしよう。
犬との暮らしでは、さまざまな事故や近隣トラブルを未然に防ぐ努力が必要だ。特に滑りやすいフローリングの上にラグなどを敷くことは、犬の足腰のケガを防ぐだけでなく、フローリングの損傷や、階下への足音を防ぐ上でも有効だ。ただし敷きっぱなしでカビが発生しないよう、ときどき風を通すなど清潔に保つことも忘れずに。
ほかにも、電源コードをかじる、落ちている小物を飲み込んでしまう、危険な食べ物を食べてしまうなどの事故は、飼い主が未然に防ぐ努力を。「たまねぎやチョコレートなど、犬が口にすると中毒症状を起こす食べ物はたくさんあります」と佐藤先生。食べ物は、犬が届かない高さに収納できるようにしておこう。
犬と飼い主が楽しく快適に暮らせる部屋を探し、犬の健康・安全に配慮し、周囲になるべく迷惑をかけず、部屋をきれいに保つ努力を心がけ、犬と一緒の一人暮らしを楽しもう。
ペットを飼う場合には事前に申告が必要
もしも内緒で飼っていた場合、賃料の倍額請求の可能性も
原状回復の費用は保険でまかなえることもあるので契約時に確認を