窓が多くて開放的!といった理由で人気の高いマンションやアパートの角部屋(角住戸)。確かに室内は明るく、のびのびと暮らせそうですが、半面、角部屋だからこそ注意しなければならないポイントがあります。。ホームインスペクション(住宅診断)のエキスパート、さくら事務所の友田雄俊さんに夏は暑く、冬は寒いなどのメリット・デメリットを解説していただきました。入居してから後悔しないためにチェックしてくださいね。
まずはどのような住戸を「角部屋」というのか、定義するところから始めましょう。友田さんに聞きました(以下コメントはすべて友田さん)。
「要するに各フロアの端にある住戸のことです。廊下の突き当たりにある住戸をイメージしてもらえばいいでしょう。
角部屋はフロアの端なので片方しか住戸がなく、もう片方は外部に面しているため、南側に加えて例えば西側にも窓があるわけです」
建物の形状によっては、南、西(東)に加えて北側にも窓があり、3面採光の角部屋もあります。
では、マンションによって角部屋が多い・少ない、ということはあるのでしょうか?
「ワンフロア当たりの戸数が多い大規模マンションになると、中部屋は増えていき、相対的に角部屋の割合は小さくなりますので、そのマンションにおける角部屋の希少性は高くなります。また、フロア数が増えれば、それだけ角部屋の戸数は増えることになります。
仮にワンフロア2戸あるいは4戸のみのマンションなら、全住戸が角部屋ですね。その意味では、板状のマンションよりペンシル型に近い形状のほうが、そのマンションにおける角部屋の選択肢は増えていきます」
ちなみに角部屋の対義語は、中部屋(中住戸)で、両サイドを隣の住戸に挟まれています。中部屋の特徴についても確認しておきましょう。
「先述したとおり、角部屋に比べると中部屋のほうが圧倒的に多いので選択肢が増えます。角部屋にこだわると候補に挙がるマンションが少なくなる可能性がある一方、中部屋ならマンション内での選択肢はもちろん、検討できるマンションのバリエーションも増えることになります」
「中部屋は、人が生活している住戸に挟まれているため、両サイドの空気が暖められ、熱が逃げにくい・冷気が入りにくいので断熱性能が高い、結露が発生しにくいと言えます。エアコンの設定温度を控え目にすれば、光熱費の節約もできそうです」
「両隣を住戸に挟まれ、壁の面が増えるため、家具レイアウトがしやすくなるメリットがあります」
「角部屋に比べれば窓が少なく、その分、外からの騒音が聞こえづらくなります。例えば、幹線道路沿いに立つマンションなら、一考の価値がありそうです」
「マンションの多数を占めるため、同様の間取りが多く設計費が抑えられること、さらに角部屋に比べて専有面積が狭い場合もあり、相対的に中部屋の分譲価格は安くなります。それに伴い、管理費、修繕積立金も安くなります」
ではいよいよ、角部屋人気を裏付けるメリットを挙げていただきます。
「これが誰もが思い浮かべる、角部屋最大のメリットでしょう。中部屋が基本的にリビング側からしか光、風が入らないのに比べると、リビング+1~2面に窓がありますので、光がまわる時間が長いうえ、風の抜けもスムーズ。風通しを重視される方は理想的な環境でしょう。ただし、高層階は風が強く窓を開けられないこともあるので注意が必要です」
「近年、通販を利用する人が増えたため、以前よりも物流業者が共用廊下を行き交うことが増えたというマンションは多いでしょう。
しかし、角部屋は廊下の突き当たりなので基本的に人が往来する環境にありません。中部屋に比べると不特定多数の人が行き交う状況にならないので、プライバシーを確保しやすいと言えるでしょう。人が行き交う廊下側の個室は寝室などにすることが多く、できるだけ他人の目は避けたいところ。その点でも角部屋は適切と言えます。
また、人が来ない分、廊下を歩く人の動きに敏感になり、防犯・セキュリティに対する意識が上がる効果もありそうです」
「建物の敷地や住棟の設計によりますが、中部屋に比べると面積が広く取られているケースが見受けられます」
「片方にしか他の住戸が接していない角部屋ならではのメリットです。中部屋に比べると、騒音トラブルに悩まされるリスクが半減します。上下の住戸は除きますが、隣の住戸に音で迷惑をかける可能性は低くなります」
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「角部屋は根強い人気があり、数が少ないため、市場原理からみれば、当然高く売りやすい・貸しやすい住戸であり、資産価値は高いと言えます」
「廊下の形状にもよりますが、玄関ドア前に一戸建てのようなポーチがあり、独立感が高く、管理規約の内容によっては幼児用のストライダーなどを置けることもあります。そのような住戸なら、室内に置くモノが減り、スッキリと暮らせそうです」
「向きが違えば見える景色が変わるのはもちろん、バルコニーの用途も変えられます。例えばリビングに面したバルコニーではガーデニング、寝室に面したバルコニーはプライベートユースで洗濯物干し専用にする、などの使い分けができます。来客が多い家なら、リビング側のバルコニーを観賞に特化してもいいですね」
たくさんのメリットの半面、角部屋には目を向けるべきデメリットがあるのも事実。4つのポイントを解説いただきました。
「特に1~2階など低層階で、なおかつ交通量の多い公道が近い場合、車、人が醸す音や外部からの目線が気になる場合もあります」
「角部屋の片方はマンションの壁のみなので、その影響で中部屋に比べると、夏は暑く冬は寒い場合があり、結露が起きやすくなったり、冷暖房効率が落ちたりすることがあります。
住宅で熱が出入りする場所は窓と壁、2カ所に大別され、そのうちの60~70%は窓だと言われています。したがって窓が多い角部屋は熱が出入りしやすく、外気温の影響を受けやすいのです。
断熱性能を上げるなら、既存の窓にリフォームで内窓を付けるのが一般的ですが、その分コストはかかってしまいます」
「家具で窓をふさぐとせっかくの角部屋のメリットがなくなりますので、これは仕方のないことかもしれません。
なお、特に乳幼児のいるご家庭ではバルコニーからの万が一の転落事故のリスクが中部屋より高まることになります。足がかりになるようなモノを決して置かないなどの注意が必要です」
「マンション内において相対的に数が少なく、人気が高い上、中部屋に比べて広いケースもあるのですから、これも仕方のないことでしょう。面積が広くなれば、修繕積立金、管理費が上がることも覚えておいてください」
魅力が多い半面、それなりにデメリットもある角部屋。ただ、チェックの仕方やライフスタイルなどによって、さほど問題にならない場合もあります。角部屋を選んで後悔しないためのポイントを見ていきましょう。
低層階で、交通量や歩行者の多い公道が近いと、窓が多い角部屋は、騒音が気になる、防犯面が不安、プライバシー確保に難がある……というリスクも。
「ただし、敷地に余裕があり公道までスペースが確保されている、外壁が植栽で覆われている、1階に住戸がなく最も低層の住戸でも2階、といったマンションならさほど気にならないかもしれません。
中古マンションの場合で、契約前の最終段階に入っている方は、できれば時間帯、曜日を変えて見学し、周辺の環境や、室内で何か聞こえるかチェックしてみることをオススメします」
角部屋は住戸の片面が外壁となるため、マンションの断熱性能が住戸内の室温に大きく影響します。
「そこで注意していただきたいのが築年数。カギになるのは『2000年以降の竣工』です。理由は、2000年に住宅性能表示制度が施行されたことで、マンションデベロッパーが断熱性能の向上に注力し始めるようになったため。物件探しの際は、一定の断熱性能が期待できる2000年以降の竣工をひとつの目安にするといいでしょう」
中部屋よりも窓が多いため『家具が置きづらい』という声が多い角部屋。特に『テレビの置き場所が想定と違って後悔した』といった話がよく聞かれます。
「しかし、入居する人のライフスタイルや、主に使う映像視聴のデバイスの種類によっては、悩む必要はないかもしれません。昨今はテレビだけでなく、スマホ、タブレット、PCなど映像を見られるメディアは多様化しており、個々に自分の好きな映像を見るご家族も増えています。家ではどのようなスタイルでテレビや映画を見るかを、思い返してみてください」
「希少で人気が高く、中部屋に比べて広い住戸も多いため、角部屋の価格は高くなりがち。その反面、中部屋より高く売れる・貸せる可能性も広がります」
そのマンションの中古販売価格の推移や角部屋と中部屋の価格差をチェックし、納得して購入できれば、将来後悔するリスクを減らせるかもしれません。
「角部屋の最大のメリットは、やはり室内の明るさや開放感、眺望の良さです。これを最大限重視する方には角部屋がオススメです。
また、昨今の外出自粛によって自宅で過ごす時間が増え、家時間をできるだけ快適にしたい、バルコニーを使い分けて、リビング側に緑を増やしてセカンドリビングにしたい、といった考えをお持ちの方にもピッタリだと言えるでしょう」
中部屋にない数々のメリットの半面、デメリットがあることも考慮しつつ、快適な角部屋ライフを手に入れてください」
数々のメリットがあるが、何と言っても明るさ、開放感、眺望の良さが魅力
デメリットもあるが、場合によっては気にならないことも
メリデメ両方をしっかり検討して、納得いく角部屋選びを