SPECIAL TALK ~日本の賃貸住宅はもっと楽しくなる

【第1回】 実はけっこう窮屈です。ガマンだらけの日本の賃貸

日本の賃貸住宅に住んでいる人は、なぜこんなにガマンしなければならないのか? そこには信頼関係を築く術もなく、お互いにクレームのリスクを恐れるあまり身動きが取れなくなっている住人とオーナーの姿がありました。

渋谷駅にほど近い、古いテナントビルの一室。輸入壁紙を専門に取り扱う『WALPA』のショールームに、それぞれ壁紙、物件仲介、デザイン、不動産オーナーといった異なる業界から、日本の賃貸×カスタマイズに斬新な仕掛けを提案する5人が集まりました。実はこのビル、もともと改装自由な部屋を紹介するサイト『DIYP』で紹介されていた物件。メゾン青樹・青木さんがモデレータ役をつとめ「世界一楽しい賃貸市場を創りたい」という思いで語られた熱いトークは、DIYP・村井さん自身も事務所を構えるこのビルに、大阪を本拠地としていた濱本さんが引越してきたエピソードから始まりました。

話者プロフィール

濱本 廣一(はまもとこういち)
株式会社フィル代表取締役。壁紙を中心にセルフリフォーム材料を広く取り扱うインターネットショップ『壁紙屋本舗』店主。2011年より輸入壁紙専門店『WALPA』をオープン。「全人類職人化計画」などDIYでのカスタマイズを推進。
壁紙屋本舗
WALPA

江面 正明(えづらまさあき)
世界中から厳選した輸入壁紙を取り扱う老舗、株式会社テシード代表取締役社長。「壁紙の魅力を多くの人々に知っていただきたい」という思いから、新宿(OZONE)のショールームでは常時50,000点以上のアイテムを展示している。
TECIDO

村井 隆之(むらいたかゆき)
IDEE R-PROJECT出身。さまざまな国での海外生活を経て、改装自由な物件だけを集めたサイト『DIYP』を立ち上げる。そのほかカフェやレストランの企画・プロデュースから日本庭園の設計施工まで、さまざまなフィールドで活動している。
DIYP

大島 芳彦(おおしまよしひこ)
一級建築士事務所、株式会社ブルースタジオ専務取締役。一般社団法人リノベーション住宅推進協議会 理事。一般社団法人HEAD研究会リノベーションTF 理事・委員長。建築家、不動産コンサルタントとして自由かつ斬新な建築作品を多数手がけるほか、セミナー講演や執筆活動などでも活躍。
blue studio

青木 純(あおきじゅん)
中古売買物件の仲介実務、不動産ポータルサイトにて中古部門事業部長やグループサイトのプランニングを経て、株式会社メゾン青樹取締役。2011年より東京・東池袋の自社物件『ロイヤルアネックス』にて「選べる壁紙」サービスを開始。
メゾン青樹

「賃貸だからできない」というあきらめ

大島芳彦(以下、大島):ここは改装自由?原状回復は要らないんですか?

村井隆之(以下、村井):改装自由です。事前に改装プランを大家さんに見せて「これでいいよ」とOKもらえれば原状回復しなくていい。

大島:この建物は器がいいですね。雰囲気があって、窓も全部、スチール製サッシで。

青木純(以下、青木):濱本さんは大阪を拠点に『壁紙屋本舗』というオンラインショップをやってらっしゃいますよね。今回、東京に実店舗を構えたのはなぜだったんですか?

濱本廣一(以下、濱本):もともと「見せてほしい」というお客さんが多かったんですよ。実物を見ないと質感とか色とかわからない。そういう問い合わせは関東方面でも多かったので、前々から出そう出そうとは思っていたんです。2012年2月にオープンしました。

住人もオーナーもお互いにビビっている

濱本:壁紙屋本舗でも3年くらい前から「賃貸に住んでるんだけど、壁紙を張り替えたい」という相談を受けることがすっごく増えた。でも「賃貸だからできない」と諦めている方も多かったんです。
そういう状況をなんとかしたいと思って、壁紙屋本舗のサイトで「張り替え可能な賃貸住宅」という特集をやろうと思ったんです。そこで東京、大阪、名古屋、福岡と全国の賃貸住宅フェアを回ってオーナーさんを募集したけど、まったく集まらなくて、その企画はポシャってしまった。

【写真】「WALPA」店内。ユニークな輸入壁紙が所狭しと並ぶ

江面正明(以下、江面):住んでいる人の方も、画びょうひとつ打つのにビビってますから。釘の穴一つ開けたら修理に1万円取られるんじゃないかとか……。「大丈夫ですよそのくらい」と言っても、前に住んでたところでは、釘の穴がいくらとかポスター張ったところいくらとか請求された経験があると言って。住んでる人が怖がってる。

青木:「画びょう刺していいですよ」って言うだけで喜ばれますからね。

大島:そうか。住む人もびびりながら住んでるし、供給する側もクレームにびびりながら供給している。

青木:お互いに楽しさを追求しなければいけないのにね。濱本さんがこのビルを選んだのは何か理由があったんですか?

濱本:2011年11月にうちのスタッフから「面白いサイトがある」と見せられたのが村井君のやってる『DIYP』だった。見たら、「原状復帰が要らん、何をしてもいい」っていう賃貸住宅ばっかり集められていて、まさに僕がやりたかったことだったんです。そこで村井君に連絡したんですよ。お客さんのフリして(笑)。話しているうちに「日本の賃貸おもろないよね」という話になって。「賃貸でもカスタマイズできたほうがいい」と意気投合して、やっとそういうことができそうな雰囲気を感じられたので、彼も4階におるし、というのでこの建物に部屋を借りてしまったんです。

もうガマンしなくていい。もっと自由な賃貸へ

江面:日本でも、潜在需要はいっぱいあると思うんです。でも日本の場合、みんな賃貸では決められたクロスでずっとガマンして住んでいる。ところがやっと自由にできる新築を建てたと思ったら、数千万円のローンを組んで、限られた予算の中で建材や建具を決めて、インテリアを考えて……壁紙を選ぶ段階ではもう予算の余裕がなくて、全然選べないんですよね。たいてい一番安いクロスになってしまう。

村井:でも新築で好きなようにつくるって、最初やるとき勇気いるでしょうね。経験値が必要ですよね。だからこそ賃貸でもっと試してほしい。

大島:賃貸と中古っていうのが時代のキーワードになってきている。それは、どちらもプレッシャーが少ないからなんですよね。自由だしフットワークが軽い。
だから賃貸はとことん楽しくなきゃいけないんですよね。

村井:DIYPって賃貸ばっかり集めたサイトなんです 。僕も僕の周りの人たちも、そもそも家買う発想がないんですよね。高くて買えないし、もしかしたら海外に住むかもしれない。家を買って、固定されてしまうことのほうが怖いんですよ。ずっとそこにいなきゃいけないんじゃないかって。
だから中古リノベもいいけど、賃貸がもっと楽しいといい。買うよりもプレッシャー少なく試せるかなって。

青木:そもそも売買物件は自由に選べるけど賃貸は選べないという状態がおかしいんですよね。 賃貸だろうが売買だろうが、楽しみたいことは変わらないんです。賃貸が自由にカスタマイズできるようになると、あとは住まい方の価値観で選べる。
より自由に生きたいなら賃貸を選んでもいいし、買いたい人は買えばいい。

大島:これから賃貸と売買の差が、どんどんなくなっていきますよね。

リスクヘッジが自由を奪っている

青木:メゾン青樹の自社物件「ロイヤルアネックス」では、入居時に好きな壁紙を選んでもらって無料で張る、「選べる壁紙」というサービスをやっているんです。僕がこのサービス を始めたのは2011年5月くらいですけど、壁紙変えられますって言っても、最初は伝わらなかったんですよね。みんなイメージが湧かないから。だからモデルルームをつくって、強烈な(笑)壁紙を張ったんですけど、皆さん実際に見ると、一気に「いい!」ってなるんですよね。

【写真】『ロイヤルアネックス』で実際に住人が選んだ壁紙

江面:まず張る前の施主さんというのはものすごい不安があるんです。「これ張ったらどうなるんだろう?」って。そんなときに職人さんやデザイナーさんから「柄物は飽きますよ」とか「部屋が暗くなりますよ」「狭く感じますよ」とか言われるんですよ。そんなことないんです。でも、あることないことずーっと言われてるうちにお客さんも不安になってくるんですよね。本当はやりたかったけど、やっぱりやめとこうかな……と。踏み切るまでの背中を押してくれる人が、なかなかいないんです。

大島:背中を押す人。みんな怖いんですよね。柄物を使うのはね。

江面:コーディネーターさんが「お宅はどんな壁紙使ってるんですか?」と訊かれたときに、「私のうちは賃貸なんで壁紙は張れないんですよ」って答えちゃうんですよね。プロである彼らが、ちゃんと自分の家で楽しんでいない。

大島:仕事の現場において建築家やインテリアデザイナーと呼ばれる人たちも、基本的には選ぶことがこわいんですよ。自分が選んだ壁紙を張ってお客さんに「違った」と言われたら、誰が責任とるの?と。もちろん僕も怖くなることはあります。でも一方で大事なことはお客さんとのコミュニケーションなんです。選ぶという行為そのものよりも相手とどれだけ信頼関係を築けているかが大事。自由な発想を無理なく実現するためには、オーナー、デザイナー、住人のコミュニケーションが分断している状況を改善していく必要があるんです。
お互いを信頼できて、任せられる状況をつくれたら、もっと好きなようにいじれるようになると思うんです。それぞれに悪いようにはしないわけですから。

江面:壁紙選ぶのって、時間がかかると思うんですね。すすめる方ももっと深くかかわって、どんな照明、カーテン、家具を選ぶのか、その後のライフスタイルも知っておかないと迂闊にすすめられない。
だからこそ、それ以上かかわらない、ここでやめとこうという意識が働くのかなと。お客さんに壁紙をすすめて、後で「イヤだ」と言われたら……という心配もあるんでしょうね。

村井:イヤになったら、張り替えればいいじゃないですか!

江面:飽きれば新しいのに張り替えるわけですから、われわれとしては飽きてほしいんですけど(笑)。でも、飽きたから変えるという人はいないですね。
10年前に張った人が「今の壁紙が気に入っていて、どうしてももう一度同じ壁紙が欲しい。探してほしい」というケースのほうが多い。

大島:結局リスクヘッジしてるわけですよね。床だって絶対無垢(むく)の床材使ったほうがいいけど、「ささくれだってけがしたらどうしよう」とか「あとでクレームになったらどうしよう」とか。ユニットバスだって、ビニールクロスだってそう。あんなペコペコの面材、みんな好きなわけないのに、「タイルにして水が漏ったらどうするの?」とかリスクの心配ばかり。みんな供給側のリスクヘッジの犠牲になってしまっていて、全然楽しめない。
住宅産業がクレーム産業になっているところが、何も出来ない状況をつくっちゃってるんですよね。まるで住人と供給側は敵対関係です。

江面:要するに日本の賃貸は制服のようにガッチガチに決められているわけですよね。校門の前でチェックされるような。
その上で、決められた範囲内でオシャレしようとして無理矢理アクセサリーをもってきたりとか、ヘンなことになっている。

村井:制服って、まじめな奴はちゃんと着てるじゃないですか。でも、不良のほうが絶対モテる(笑)。住宅も同じですよね。

【第2回】海外と日本でこんなに違う!賃貸×カスタマイズの自由度

自由に改装するのが当たり前の、欧米や中国の賃貸住宅事情。一方の日本では相変わらず、画一的なユニットバスに真っ白なビニールクロス。なぜこんなにも違いが生まれてしまったのか? 日本の住宅づくりを支配する思い込みを一刀両断。

先日、中国で開催された壁紙の展示会に招かれたという江面さん。そこには壁紙専門雑誌(!)をはじめ、日本より格段に進んだ壁紙市場が展開されていました。 展示会に出展している壁紙業者は500社以上。刺繍のある壁紙、スパンコールの壁紙、鳥の羽を無数に縫い付けた壁紙……最新の「やわらかくてシワにならない壁紙」をアピールするために開かれたファッションショーでは、モデルが壁紙を素材として使用したドレスで登場するなど、その盛り上がりはかなりのものだったそう。
充実したショールーム複合施設も日本には見られないもの。巨大なテナントビルの中に、建材からインテリア、ファブリックに至るまでさまざまなショールームが軒を連ね、設計事務所やデザイン事務所もあります。ユーザーはその中からお気に入りを自分で組み合わせ、好きな部屋をつくり上げていくのだそうです。

好きなように改修して住んでいるのが、一番カッコいい

江面:たぶん貸し主なり不動産会社なりデベロッパーなりが、壁紙まで選んじゃうのなんて日本くらいですね。ほかの国は基本的にスケルトン(状態での引き渡し)です。新築でも賃貸でも、最初から仕上がった状態ではないので、そこからデザインの仕事も生まれるし、例えば500室のマンションがあれば、500の仕事が生まれるわけですよね。日本で500戸のマンション建てると言ったら、1つの設計事務所が全部やってしまう。

本当に自由にユーザーの希望を聞きながらつくっていくというのは、ちょっと日本にはないですね。”悪しき慣習”がなければ自然とこういう風になるんだなという姿を中国で見ました。

村井:僕は海外によく住みに行くんですが、ファッションよりも、部屋を改装して住むのが一番カッコいい気がして。ニューヨークとかイギリスの若者の家とか見に行くと、すんげえカッコいいんですよ。日本って、ファッションはすごくユニークじゃないですか。でも住宅には(そういうものが)ないのが、ちょっと悔しかった。

大島:それはもうデザイナーを超越してる感覚なんですよね。デザイナーズって言葉の響きはもう、既にカッコいいことじゃなくて。今は住む人の個性が反映されていることが一番カッコいいんですね。僕のお客さんも海外生活を経験してきた人や、たとえ住まなくても海外に行ったことのある人が多いから、みんなもうわかってる。海外で見てきている人の目には、ユニットバスもビニールクロスもすごく不自然なものにしか見えない。そういう人がすごく増えているから、お膳立てされたもののなかでカッコイイ家具を置いてそれで満足、ということは少なくなってきていて。まさにこれからですよね。

江面:海外生活を体験された方は、われわれのショールームに来ても、ごく自然に壁紙を選びます。

村井:そういう人は結構自分でできますよね。ペイントもそうだし。

大島:アメリカでは、普通のホームセンターで、家が一軒建つだけの材料が全部手に入るんです。図面も売っている(笑)。それだけセルフビルドやDIYが盛んなんですよね。

真っ白い部屋は狭く見える?!実は知らない壁紙のこと

大島:日本では、みんな家を決めるときにXY軸、つまり間取図の平面=床の広さしか見ていませんよね。だからZ軸=壁のことなんて気にしていない。その部屋で生活をしてみていつも眺めるのはZ軸なのに。

村井:部屋の中のボリュームで言ったら圧倒的に大きいですよね。

江面:例えばこの部屋(WALPA店内)が真っ白な壁紙だったらすごくつまらない。

青木:Z軸で言うと、唯一カーテン選びには必死なのに、それ以上に広い壁のことには無頓着。あんなに広大な自分を表現できるキャンパスがあるのに、本当にもったいない。

江面:日本では、与えられた空間から初めてインテリアが始まるんですよね。壁紙から選ぶことをしていない。日本と海外のインテリア雑誌を見比べると、海外の壁紙はみんなカラフルですよ。日本は商品を殺してしまうからベージュ・白を使うという考え方なんですけど、色と色の組み合わせのほうが、色は絶対キレイに見える。日本人ってすごくクリエイティブだと思うんですよ。昔から、柄の着物に柄の帯を合わせたり、色と色とをコーディネイトする文化をもってますよね。ふすま絵とかも、ものすごくクリエイティブ。なのに、いつからか真っ白な、勘違いされたモダンばかりになっちゃった。

濱本:僕は16歳からずっと壁張りの職人をやってたんです。23歳くらいのときに独立して、工務店とか不動産屋さんの下請けをやっていましたが、ずっと白の無地ばっかりだったんですよ。いい加減飽きてくるんですよね。だから僕、だいっきらいなんですよ、クロスが(笑)。

大島:ブルースタジオのお客さんは、ほとんどの人が「クロスはイヤだ」と言うんです。塗装がいいと。でも、その人がイヤだと言ってるのは、その真っ白な量産クロスのことなんですよ。意外とこういう(ショールーム内の商品を指して)壁紙があることを知らない。

青木:そもそも天井が白いっていうのも、おかしいですよね。お客さんに「だって天井が白いって、まるで病院じゃない。なんで白選ぶの?」って言うと初めて「あ、そうか!」って気がつく。

大島:「部屋が狭いから白にしました」とかね。実は、白く塗るとかえって狭く感じるんですよ。拡散光に満たされてしまうし、圧迫感があるし。「天井黒く塗っちゃいましょうよ。そのほうが広く感じるから」って提案すると「そんなはずない」ってみんな言うんだけどね。

江面:色が入るから落ち着くんです。

大島:照明も同じ。電機メーカーが「明るいことは文明の象徴」とばかりに蛍光灯を入れて、部屋をピカピカに明るくしましたよね。たぶん昔は、明るいことが豊かさの象徴だと考えられたんでしょう。でも実際は、明るい部屋がいかに貧乏くさく見えるか。暗めの間接照明の部屋のほうがずっと落ち着いた雰囲気のはずです。
そうやって無駄なものを省いていったときに、自分の大事なものがよく見えたり、広がりを感じたりする。日本人の文化にはもともとそういうのがあったはずなのに。そういうことを忘れちゃったんでしょうね。

村井:そもそも白って圧迫する色だし、膨張色だし。茶室なんて白じゃないですよね。あのミニマルな空間がもしも全部白かったら、いたたまれない。

大島:マスプロダクトの洗脳にまんまとハマっているんだよね。

村井:ホント、真っ白な天井にはアイドルのポスター張るしかないですよね(笑)。それさえできない賃貸はおかしいですよ。

色柄が豊かに取り入れられていた、昭和の日本の住宅

江面:日本でも昭和40年代前半の建物では、けっこう色が使われてますね。ちょうど壁紙が出てきたころです。キラキラしたブルーの塗り壁があったり、天井も色がついてたり、天井柄っていう布の壁紙が張られていたり。昔の家には「色柄」が取り入れられていた。

大島:そうそう。昭和40年代くらいまでは、賃貸マンションでも、木(モク)を使った和式天井のアパートが普通に建てられています。壁も和室は「疑似じゅらく壁」というんでしょうか。特徴のある壁が多く見られます。

江面:色のついた紙がミックスされている塗り壁ですね。クロスも本当に布でしたから。部屋の間仕切りには、竹やぶや松を描いた襖がある。けっこう装飾的だったんです。

村井:そういえば、昔のおばあちゃん家の天井は木目でした。夜寝てると、その木目が人間の顔に見えて怖かったりとか(笑)。最近、そういうのないですね。

江面:そうしたものが減っていったのは40年代くらいからですかね。洋風建築が入ってきたあたりから、真っ白な壁のような、ヘンな思い込みが広まってしまって。

大島:均質なもの、無傷なものに対する安心感ってあったんでしょうね。ところがいつの間にか全部がそうなっちゃったんですよね。

江面:「部屋を自慢する」という文化が、昔は日本にもあったんだと思うんですね。例えば床の間に代表されるように、檜の柱、立派な襖、欄間とか。西洋の場合は、それが壁紙なんです。ところが日本は、間違った西洋化をしてしまった。

大島:そういう悲しい時代って、もうそろそろ終わりなんだと思いますよ。みんな飽き飽きしてるし、画一的なものはイヤだと思い始めてる。

村井:最初に真っ白な部屋が出てきたときはカッコよかったんだと思います。けど、そういう時代が終わって、今度は昔の塗り壁みたいなのがカッコいい時代が来ているんじゃないですか。

江面:今まさに中国や韓国で昭和の日本家屋にあったような塗り壁がはやり始めていますよ。じゅらく壁に似ているもので「水壁紙」と呼ばれているんですが、それが今すごく売れているんです。

糊が変われば壁紙が変わる。コンシューマーが変われば市場が変わる

大島:壁紙って、ある程度技術がないと張れないと思われていますよね。ペンキはみんな塗れるんだけれど、壁紙を張ったことある人ってなかなかいませんよね。

濱本:ほぼ張ったことないですよ。

大島:簡単に張れるようになったりしないんですか?

濱本:今、フランス・ドイツは不織布、つまりフリースの壁紙が増えてきているんです。伸び縮みもしないし、全然シワにならないので、気軽に張れますよ。

江面:今、ヨーロッパ市場ではすごく流行っています。

【写真】欧米で普及しているフリース素材の壁紙と張ってはがせる糊

濱本:これが、張ってはがせる糊なんですよ。日本の壁紙って、めくると薄い紙が一枚残って壁が汚くなりますよね。この糊だと紙が残ることもなくて、キレイにはがせるんです。

青木:シールと同じですよね。

大島:なんで今、日本でこの糊が使われていないんですか?

江面:業者さんの中に、やり方が変わることに対する抵抗があるんじゃないでしょうか。

大島:リノベーションするときに、クロスをはがすと、必ず裏紙が壁に残るんですよね。それをキレイにしてから塗り直すのってすごく手間がかかる。それが、ペロンとはがせてまた張れたら、コストがだいぶ変わります。糊が変わったら、みんな随分やるようになりますね。

江面:いずれこういう商品が主流になっていけば、張り替えやリフォームはすごくやりやすくなりますよ。気持ちいいぐらいキレイにはがれますから。

青木:こうした商品にユーザーが自分で関心をもったら、あっという間に広がると思うんです。だから、コンシューマーから市場を変えていきたいんですよね。

【コラム】住まいに対する満足度 ―愛されない住まい

日本、ニューヨーク、ロンドン、パリの各都市で賃貸住宅に入居後、部屋の模様替えを施した個所を聞いた調査。「壁や天井を塗り直した、壁紙を貼り替えた」が日本では約3.3%に対し、ニューヨークで約47%、ロンドンで約36%、パリでは約58%にものぼる。「いずれもない」と回答した人は東京で約47%、ニューヨークで約13%、ロンドンで約21%、パリでは約9%。欧米に比べ、日本では賃貸カスタマイズの実施率が低いことがわかる。

【コラム】住まいへのかかわり ─与えられたものを、与えられたままに

「たいへん満足」と「まあ満足」を併せた割合は、東京では約63%で過半数が満足と答えているが、ニューヨーク約79%、ロンドン約78%、パリ約80%とほかの3都市では軒並み8割におよぶ。「たいへん満足」で比べると、東京約7%、ニューヨーク約26%、ロンドン約25%、パリ約21%とさらに差が顕著である。 東京の賃貸住宅は満足度が高いとは言いがたい。

【出典】「愛ある賃貸住宅を求めて NYC, London, Paris & TOKYO 賃貸住宅生活実態調査」(リクルート住宅総研2010)より

【第3回】カギはコミュニケーション。日本の賃貸はもっと楽しくなる!

改装自由な物件は、実はオーナーさんにもメリットがあるのです。日本をもっと賃貸×カスタマイズが楽しめる場所にするために必要なものは? キーワードは「コミュニケーション」「背中を押してくれる人」「住育」です。

2012年2月、国土交通省の定める賃貸住宅標準契約書が改訂されました。この中で、原状回復について貸し主と借り主が契約時に話し合い、その内容を取り決められるように。
賃貸に住む以上、誰もがあたりまえのように口にする原状回復。自由な賃貸は、この「あたりまえ」を疑ってみるところから始まるようです。

原状回復って、本当に必要?

濱本:みんなマジメなんですよね。「(改装は)やったらあかん」としか思わない。

村井:僕はそういう常識がそもそもないですからね。不真面目だから。どんどん釘とか打ってますから。だから改装できる物件にしか住んでない。

大島:たとえダメでもやっちゃうよね。

村井:最後に謝ればいい(笑)

大島:いや、それでいいんじゃないかな。覚悟があれば。

江面:壁紙を量産クロスで張り替えるのって、自分で手配すればものすごく安くできちゃうんです。だからもう好きなように住んで、最後はリフォーム屋さんに頼んで原状回復して大家さんに返せば何も問題ないんじゃないかと思いますね。

村井:普通に人が住んでいたら、壁に穴開けるだろうし、壁が気に入らなければ塗るだろうし、かっこいい壁紙があるんだったら張りたくなるだろうし。人の暮らしってそういうものだから、オーナーさんもそれ前提で貸してほしいと思うんですよね。

怖がらずにオーナーさんと話してみよう

村井:改装自由って、実はオーナーさんにとってもメリットが色々あるんですよね。イギリスで仲間の家に泊めてもらったとき、朝起きたらそいつが部屋の壁にペンキ塗ってるんですよ。これやばいんじゃないの、怒られるぜって言ったら、「いやオーナーさん喜んでて、逆にペンキ買ってくれた」って。その部屋はもう古くて壁紙とか剥がれてたんですけど、「住んでる人が自分で塗ってくれるんだったら、業者さんに頼まずに済んでラッキー」って言うんです。

大島:それが正しい姿なんですよ。ぼくが学生時代、米軍ハウス住んでた時もそう。オーナーさん喜んでくれましたよ。「塗ってくれてありがとう。はい、ペンキ代」って。

村井:直すのにお金がかかっちゃうからとオーナーさんが世に出していない古い物件がいっぱいあるじゃないですか。昔の一軒家とか。だったら改装自由でそのままの状態で貸し出して、入居者が住みやすいように手を入れる。で、それをまた次の人が気に入って、受け継いだり更に手を加えていくのとかっていいなって。

大島:こんなにハッピーなことないよね。

村井:そういうのがもっと増えていったらいい。

濱本:さっきも言った通り、僕らのところにも「賃貸で壁紙変えたいんですけどどうしたらいいんですか?」という問い合わせがたくさん来るわけなんですよ。
それで「3年も5年も住んでるんだったら、1面くらい張らせてもらえないかオーナーさんに相談してみたらどうですか?」とアドバイスするんですが、怖くてできないんですよ。オーナーさんに訊くのも怖いし、出るときに何十万と請求されたら……と。

大島:ここがすごく大事な話で、改装自由な物件がないわけじゃないんですよね。結局、コミュニケーションする術がないというのが一番の問題なんですよ。
オーナーさんて入居者に自分の素性知られたくない、会いたくないという人もいるじゃないですか。だから最初からコミュニケーションを拒否して管理会社に任せる。
だけど中には「自分で管理します」というオーナーさんがいて、そういうオーナーさんを顕在化させると、意外と改修自由な物件が集められるかもしれない。「家あまり」の今、賃貸住宅も借り手市場ですから、良いお客さんであれば可能な限り望みを聞いてあげて折り合いをつけたいオーナーは多いはずです。

村井:DIYPの場合、最近はオーナーさんから「掲載してください」という依頼が多いんです。

大島:管理会社はオーナーと視点が違います。リスク、トラブルを避けたいから「いや、やめといたほうがいいです」と言いますよね。だからオーナーと直接話ができるホットラインみたいなものがあると状況は変わるよね。

思いきって冒険したほうが満足度は高い

江面:これはわれわれの反省でもあるんだけれど、今は壁紙そのものを見る機会があまりにも少ないですよね。今まで自分で壁紙を選んだことのある人がほとんどいない。1%もいないんじゃないか。

大島:みんな、サンプルで小さいものを見ていても、壁全体の大きさになるとどうなるのか想像できない。張るのが怖くなる。だから、誰が背中を押してくれるのかということが大事ですよね。青木さんなんかは、まさに背中を押してくれるオーナーさんですよね。

青木:僕は、「失敗したら張り替えればいいじゃない」って言っちゃいますから。「長く住んでくれれば更新のときに張り替えてあげますよ」って。季節ごとに張り替えてもいいですし。

村井:そもそも最初からベストな壁紙を張ろうとするのが間違ってますよね。間違えればいい。

青木:でも、間違える人はあんまりいないんですよ。張った人は満足度がすごく高い。

江面:2種類の壁紙で迷っているお客さんがいたとしますね。落ち着いているものと、派手なもの。自分はこっちの派手なほうが気に入ってるんだけど、周りには「落ち着いているほうがいいよ」と言われたと。で、最終的に無難なほうを張ってしまって「やっぱり自分の気に入ったほうにすればよかった…」と後悔する人はいます。でも思い切った柄のほうを選んだ場合「派手すぎた」という人はいないですね。

青木:冒険したほうがいいですよね。

江面:冒険した人のほうが満足する。だから迷っていたら好きなほう、インパクトのあるほうを選んだほうがいいですよ。

青木:僕がよくお客さんに言うのは「だって賃貸住宅ですよ。持ち家の前に賃貸で練習しておけばいいじゃないですか」って。

村井:オーナーさんのセリフじゃないけどね、それ(笑)

青木:こないだうちのマンションで、壁紙だけじゃなくタイルを選んでもらったんです。そうしたら、そのお客さんが「この部屋だけ売ってくれませんか?」と言うんです。初めてカスタマイズしてみたら楽しくて、部屋もすごく気に入っちゃったから、賃貸マンションだってわかっているんだけど売ってほしいって。自分で選んだものは、一番満足度が高いんです。

みんな背中を押してもらいたい

大島:一昔前だったら僕を含めデザイナーは、みんなの知らないものを知っているのがエラかった。でも今はみんなよく知ってるから、その情報を整理してもらいたいか、背中を押してもらいたいか、そのどちらかなんですよね。
それってコンサルタントなんですよ。こないだブルースタジオが伊藤忠都市開発さんと一緒に手がけた『アルティス西ヶ原パークヒルズ』のインテリアカスタマイズプロジェクトでは、僕らはまさに「コンサルタント」。これからの設計者やデザイナーが、どうやって社会とかかわるべきか、という問題に対する一つの挑戦もあったんです。
彼らがやりたいことをいっぱい聞いた上で、「これがいいんじゃないでしょうか」と提案をする、背中を押す役をやるべきだなと。僕たちは、デザイナーである以上にコンサルタントとして求められている職業なのかなって。

【写真】「LIFE STYLE LONDON」写真提供/伊藤忠都市開発、ブルースタジオ

村井:いいレストランだと、自分の好きなワイン覚えててくれたりしますよね。そういうのがすごく大切で、それを建築家さんがやってくれるのか、オーナーさんがやってくれるのか、それとも誰もやってくれないから自分でやるのか。

大島:ワインのたとえはわかりやすいね。あれだけの種類があってどれが美味しいかってわからないし、これが美味しいですよって勧められても個人の好みもあるし。そういうときに「どんなお酒が好きですか?」とか「どういう料理が好きですか?」とか、色んなことを聞いてくれた上で「でしたら、あなたはこれですね」って言ってもらえたらうれしいですよね。情報が増えれば増えるほど、そういうのを求める人が増えるはず。

村井:そういうコンシェルジュみたいな人が必要だし、もしもいないなら、自分でバンバン飲んでみるしかない。家もそう。やってみて、失敗するのがいいんですよね。日本にいる人ってあんまり引越しないイメージがあって。一カ所でとりあえず10年とか住む人いるじゃないですか。バンバン引越したらいいのに。

原体験が大事。「住育」という考え方

大島:ぼくは学生時代、立川の基地のそばの米軍ハウスに住んでたんですよ。美大の仲間3人で、先輩から代々受け継がれてるハウスなんです。3人で5万円なんで、1万7000円でお釣りがくる。もう戦後すぐに建った家で当時ですでに築45年くらい、すごいボロで隙間風がひどかったけど、塗ったり張ったり棚つくったり、工夫して住んでた。
それがすごく楽しかったもんだから、それ以降は「壊すとわかっている建物を教えてください」と言って探した。
そうすると見つかるんですよね。「立ち退きがもう始まってるけど1年だったらいいよ」、「敷金礼金もいらないし、なんだったらいじってもいいよ」という物件が。
結局そういうところばかり5回くらい引越したんだけど、自分の思い出は全部解体されて残っていない(笑)。でもそれはすごく楽しい体験だったなあ。

村井:例えばスタイリストの人は、洋服の買い物でいっぱい失敗してますよね。建築の学生だって、いっぱい失敗して学んだほうがいい。

大島:特に若い人はやったほうがいい。ぼくは今、学生たちと古い木造アパートの再生プロジェクトをやってるんです。僕は「木賃(もくちん)」と呼んでるんだけど、1970年代以前のボロアパート。最近の学生たちは綺麗で便利でセキュリティーも万全なワンルームマンションなんかに住んでいて、「暮らす」という感覚においては思考停止状態に陥っちゃってるんですよね。ところが木賃アパートに連れて行くと、一気に解放された感じで目が輝いてるんだよね。
自ら工夫して暮らすということを経験すると、豊かな暮らしを育むためのスキルが上がっていく。ぼくは「住育(じゅういく)」と呼んでいるんです。自由に壁を塗る、壁紙を貼るとか、実は彼らが暮らしているようなワンルームマンションでこそ、こういうことをできるようにしてあげるといいのかもしれない。

村井:ちゃんと自分で体験することが大事ですよね。昔ファッション誌で改装自由な部屋が紹介されていたんですけど、壁をはがして、茶色っぽくしてあったんです。それはコーヒーを薄めたやつをかけたって言うんですよ。それがカッコよくて「オレもやろう」と思って、コーヒーをバンバンつくってかけたんですよ。そしたら、部屋がすっげえ臭いんですよ。もう、どうしようもなくて……。そういう経験をたくさんしていただくといいかなと(笑)。

青木:ほんと、体験が大事。ぼくは、選ぶという工程に絞ることでやりやすさを提供しようとしています。知識やスキルのあるなしにかかわらず、誰にでも体験してほしいから。一方で村井くんのところは全部最初からやってみなさいよっていう。失敗したっていいじゃないと。これはこれですごく面白い。体験がないと挑戦できないですから。

大島:ワンルームは悪の根源みたいに言われるんだけど、色んな挑戦をして、むしろ「住育の場」とすればいいんですよ。

【コラム】住み替えの動向(日米比較)

主に賃貸住宅について見てみると、独立してから購入までの住み替え回数は、日本が平均2.3回に対して米国が4.5回。

【コラム】独立後の住み替え回数(日米比較)

日本では住み替え意向約35%、永住意向約39%とほぼ半々となっているが、米国では住み替え意向約53%、永住意向約25%と住み替え意向者が倍近く多い。

【出典】「既存住宅流通活性化プロジェクト」(リクルート住宅総研、2008)より

【第4回】ここまで来た!壁紙カスタマイズ最新事情

もう始まっています。日本の賃貸をもっと楽しくする壁紙カスタマイズの新しい動き。シール感覚で張れるウォールステッカーや、部屋のサイズに合わせてプリントできる壁紙。洋服を着替えるように、壁紙を楽しむ時代へ。

女子高生が壁紙を買いにきた!

青木:ちょっと話が変わりますけど、先日WALPAさんが『王様のブランチ』に出たじゃないですか。反響はどうでしたか?

濱本:女子高生が壁紙を買いにきたんですよ。

一同:おお!

大島:うわあ、それはいいなあ。

濱本:めっちゃうれしかった。最初はあの木目のやつがいいと言ったんだけど、結構高くて3メートル買うと6900円くらいするんですよね。それで結局こっちの花柄の可愛いのを買っていった。

村井:それ学割効かないんですか?(笑)

【写真】廃材のような味わいを再現した壁紙。オランダ製

濱本:そういう仕組みつくろうかと思って。高校生とか大学生とか割引してあげて。

青木:でもだいたい値段もわかったから、お金を貯めてまた来てくれますよね。

濱本:うん。「次のバイト代入ったら来る」って言ってた。

大島:それ、ブレイクする予感だね。高校生くらいの女の子がそう思うってすごく大事だよね。

青木:みんな、そもそも壁紙ってそもそも高いと思っているんですよね。実際に値段を見ると「こんなに安いと思わなかった」って言うんですよ。

江面:相場を知らない。われわれのショールームで見積もりしたお客さんも、よく「思ったより安い」って驚きますよ。

賃貸で壁紙カスタマイズ。いくら位でできるの?

大島:輸入壁紙で30平米のワンルームを張るとしたら、実際いくらくらいかかるものなんでしょうね?

青木:僕はよく「家賃の2ヵ月分あればおさまります」と言いますね。

江面:だいたいの目安では部屋の面積1畳当たり壁紙1本と言われますね。6畳間なら6本、10畳間なら10本という計算です。でも全面張らなくても、逆に予算に合わせて、例えば1本1万円だったら3本だけとか、そういう風に考えてもいいと思いますよ。

濱本:うちのお客さんでも、1面だけ張るアクセントウォールは多いですよ。

村井:さっきの、女子高生の子が欲しかった壁紙の場合、どのくらいかかるんですか?

濱本:4平米くらいで2万3000円ですね。

青木:職人さんに張ってもらうとして、張り代を入れて4万円くらいでできるんじゃないですか。

江面:施工費となると相場がすごく違うんです。DIYでやって下されば明快なんですが、頼むとなると、業者さんによってかなり違ってきますから。

壁紙は、自分で張ればもっと楽しい!手軽なウォールステッカーも

青木:壁自体に装飾するというのは、これから日本でも増えると思うんですよ。日本のアーティストが壁紙をつくるっていうことがまだあまりないじゃないですか。例えばアーティストが塗装で絵を描くというのはあるけれど、それってオンリーワンですよね。でもそれだと限られた人しかできない。もっと気軽に壁紙自体に装飾するような文化が広がっていくと思うんですよね。そういうニーズに応えていくことに、活路があるんじゃないかなって。

【写真】デジタルプリントの壁紙ならサイズも自由自在

江面:今はデジタルプリントで壁紙をつくることもできるようになっていますよ。

大島:それは自分の好きなパターンを渡したら壁紙にしてもらえるんですか?

濱本:インクジェットとか技術は出てきているんで。あとはそれを張る技術ですね。

江面:今は、自分の撮った写真でもオリジナル壁紙にできますよ。

大島:それはテシードさんでできるんですか?

江面:できます。

大島:やろう(笑)。

江面:今は、ホテルなどで使われていますね。デザイナーさんが自分で撮影した写真を壁紙に使いたいとか。

大島:でも、オーダーしたいサイズが小さいと難しいですよね。

江面:いえいえ、デジタルプリントのロットは1メートルからですから。ただ、色の調整といった基本費用がかかるので、短ければ短いほどメートル当たりの単価は高くなってしまいますが。

青木:子どもの写真とか、引き延ばして張ったらいいですよね。

濱本:「うちのワンコ」とかね(笑)。

青木:あと、いきなり壁紙はハードルが高いという人にすすめたいのは、ウォールステッカー。面白いですよね。

江面:実は壁紙屋本舗さんと知り合ったキッカケは、われわれが日本で初めてウォールステッカーを売り出そうとして展示会に出展したときの、最初のお客さんなんです。もう5年くらい前ですかね。海外でウォールステッカーが流行りだして、今や巨大市場になっているんですが。最初は、これこそ賃貸にいいんじゃないかって思ったんです。

青木:種類も結構あるんですよね。

大島:これは、張るのも壁紙ほど難しくないんですか?

江面:全然、気軽ですよ。

濱本:よかったら張ってみてください。

ここで大島さんが、初めてのステッカー張りに挑戦!木のテーブルの表面に、素手でゼブラ柄のウォールステッカーを張っていきます。

村井:これ張って、はがせるんですか?

濱本:はがせます、はがせます。

大島:あ、斜めになっちゃった(笑)。でもコツつかんだらすぐできそう。気泡ができないようにするにはどうしたら?

江面:スポンジとかタオルで押さえながら張れば、空気も入りにくいですよ。

濱本:張った後でも上からこすると、けっこう(空気は)抜けます。

江面:気泡に針で小さな穴を開けて抜いてしまってもいいですし。

青木:自分でやったものだったら、少しぐらい曲がっちゃってても、完璧にキレイじゃなくてもいいですよね。

江面:そこにまた愛着が湧いたりね。

青木:子どもと一緒に張って、ちょっと失敗したりとかっていうのも楽しいですよね。

江面:何も全面に張るというだけじゃなくて、一部にステッカーを張るというだけでもいいんです。とにかく壁をいじってみる。

大島:(床を)ここも壁紙かと思っちゃった(笑)。

江面:実際、海外にはそういう商品もありますよ。床に壁紙を張って5ミリくらいの樹脂を塗るんです。

大島:へー!

濱本:ほかにも、金魚絵師の深堀さんという方がいるんですが、その方の壁紙のステッカーというのを始めています。あと彼の描いた壁画があるんですが、それ自体を壁紙にできないかなと考えているところです。あと、ストリート系のカリグラフィーをやってるアーティストがいるんですが、彼の作品もやろうと。

濱本さんが棚から取り出した金魚絵のウォールステッカーを見て、思わず一同から「うわあ!」「ステキ!」と声が上がります。流れるような筆致で描かれた金魚たちのそばには、「てめえで切って張ってください」という粋なメッセージ。1シート1万4000円也。

大島:こういうのは、日本の真っ白な壁にはぴったりだよね。急に楽しくなっちゃう。

濱本:まずはこういうステッカーから始めて、壁紙に慣れてもらうのがいいかもしれません。

青木:こういうステッカー、保育園なんかでみんなで張ったら楽しいですよね!それから、WALPAのサイトで今、話題になってるのがスターウォーズの壁紙ですよね。

村井:あれがすごいのは、壁のサイズ違ったら張れないんじゃないかと思いきや、壁の大きさに合わせて拡大縮小できるんですよね。

濱本:デジタルなんで、かなり自由がきくんです。縦横の比率だけオーダーしてもらって。天井高が200だったらこんな感じになりますよ、とか。

江面:あとは両脇のデザイン変えちゃえばいいので。例えば写真を強調させる色をもってきて組み合わせたり。

大島:どうトリミングするかも選べるんですね。

青木:こんな楽しいことがいっぱいあるのに、みんな知らないわけですよ!

もっと壁紙を、賃貸を、住まいを楽しもう

青木:2011年のリクルートのカスタマー調査によると、壁紙を変えない一番の理由が「費用がもったいないから」。でも壁紙って、女子高生がお小遣いで買えるくらいの値段なんですよ。

江面:洋服だったら、本当に欲しかったら、5~6万円のジャケットでも買ったりしますよね。壁紙は、そのくらいの感覚で買えるんです。

大島:相場が分からないというのは、自分でできるかできないかの違いなんじゃないかな。業者さんに頼むとなると、途端に値段が分からなくなるじゃないですか。ステッカーみたいに自分でやれるものがあれば、だいぶ身近になりますよね。

江面:ただ壁紙も、やってみると本当に簡単なんですよ

村井:ワークショップが大事だと思ってて。僕もここ(WALPAのワークショップ)で張らせてもらいましたけど「あ、これはやれるわ」と思いましたよ。簡単にできるって、もっと知ってもらいたいですね。

江面:お金のないときは自分で張る、お金ができてから職人にお願いすればいい。自分で張ったことがあれば、プロに頼むときも判断できる。高すぎれば「なんでこんなに高いんだ」と交渉できますよね。

村井:個人で張るなら多少ズレててもいいと思いますよ。

大島:むしろ愛着が湧くよね。

村井:失敗は、また変えられるチャンスでもある。「この壁紙が正解」というのはない。変えられることが正解だと思うんですよね。常に失敗して移動して、探し求め続けていけばいいんじゃないかな。そうすると、だんだん自分の趣味嗜好がわかってくる。少なくとも、白いクロスで満足しなきゃいけないとか、お仕着せのものに自分を合わせる必要はないですよ!

この後も、日本の住宅を巡る5人の熱い思い、そして楽しいアイデアは尽きることなく、夜更けまで賃貸×カスタマイズ談義が繰り広げられたのでした。 今の日本の賃貸住宅はちょっと窮屈かもしれないけれど、5人が語る言葉の向こうに一貫して流れていたのは、オーナー、そして住まい手ひとりひとりの感性や、創造力を信じる気持ち。一歩ずつでも歩み寄って、お互いが望んでいるものを知ることができたなら。きっと両者を隔てる色んな「オリ」や「クサリ」がなくなって、賃貸住宅はもっと風通しのよい、心地よい場所になるはずです。
まずは自由に壁紙を楽しんでみることから、そんな一歩を踏み出してみませんか。

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取材・文/石神夏希(COLUMBA)
公開日 2012年03月31日
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