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近年、宅配ボックス付きの賃貸物件が人気です。例えば「宅配便の不在伝票が入っていたのに連絡をするのを忘れてしまった」「再配達の時間に家にいないといけないのが面倒」という人には、宅配ボックスはなくてはならない設備といえるでしょう。この記事では、宅配ボックスのメリットや置き配との違い、宅配ボックスが付いていない物件で個人設置はできるのか、盗難などトラブルへの対処法や宅配ボックスに関して知りたい情報を不動産管理会社の明光トレーディングの武澤さんに取材しました。
宅配ボックス付きの賃貸物件は年々増えています。「当社で取り扱いがある賃貸物件の8~9割は宅配ボックスの設備がある物件です。ついていない物件でも、借主からのニーズが高いので途中から設置することも多いです」(明光トレーディング・武澤さん)ファミリーはもちろん、特に一人暮らしの人からのニーズが高いといいます。

2023年のSUUMOリサーチセンターの賃貸契約者動向調査の結果によると、宅配ボックスは「設備に対する満足度」で7位にランクインし、全体の64.8%の人が満足だと回答しました。世帯構成別の満足度を見てみると、一人暮らしでは61.8%、二人世帯は68.8%、ファミリーは64.9%で、幅広く受け入れられていることが分かります。一方、性別・年代別では20代以下の女性の75.4%が「満足した」と回答しており、続いて20代以下の男性が62.6%で、20代以下の若い層にニーズが高い結果となりました。
若い年代において女性からのニーズが高いのは、「再配達を依頼するのが面倒」というほかにも「配送業者と顔を合わせたくない」といった防犯上の理由もあるかもしれません。
SUUMOリサーチセンター「2023年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)」より


集合住宅に設置されている宅配ボックスには、大きく3つのタイプがあります。
設定された暗証番号で解錠するタイプです。まず宅配業者がボックスに荷物を入れる際に暗証番号を設定し、入居者は不在票に記載された暗証番号を入力して荷物を受け取ります。配送業者が暗証番号の入力を間違えたり、入居者が暗証番号を書いた不在票をなくすと開けられなくなるので、その場合は管理会社や大家さんに連絡をして対応してもらいます。
不在票を確認したら液晶パネルに部屋番号や部屋ごとに設定されている暗証番号を入力し、荷物を受け取ります。暗証番号を忘れた場合は、管理会社や大家さんに連絡して教えてもらう必要があります。
液晶パネルで操作するのは2と同じですが、暗証番号ではなくカードキーをかざして解錠します。カードキーのほか、部屋の鍵にICチップが埋め込まれているタイプもあります。荷物を受け取るたびに暗証番号を入力する必要がないのがメリットですが、カードキーの磁気不良や紛失があると開かなくなるので保管に気を付ける必要があります。
集合住宅に設置されている宅配ボックスは、宅配100サイズ程度の段ボール(3辺の合計が100cm以内、2Lのペットボトルが6本程度の大きさ)が入るものが多いようですが、加えてゴルフクラブのような大きな荷物が入る大型ボックスが付いたものもあります。

便利な宅配ボックスですが、荷物の種類によっては利用できないものもあります。
「クール便にも対応した宅配ボックスが発売されてはいますが、現在は冷凍やクール便の荷物は利用できない宅配ボックスが多いようです。それ以外に魚や肉などの生鮮食品、宅配ボックスに入らない大きさの荷物も利用できません」
ほかにも金銭の受け渡しが必要な荷物(宅急便コレクト(代引き)・着払い)や、本人確認が必要なものなども利用できません。また、宅配ボックスに空きがない場合も荷物を入れることができません。

マンションの宅配ボックスついてもっと詳しく
→マンション宅配ボックスのサイズや種類、正しい使い方、トラブルの対処法
集合住宅の共用玄関の近くに設置されていることが多く、その集合住宅の住人であれば誰でも利用することができます。「宅配ボックスは暗証番号やカードキーなどがないと開けられないので、他人が荷物に触ることがなく、盗難や破損のリスクが低いことが大きな違いです」
置き配は配達された荷物を住宅の玄関先や指定の場所に置いてもらう配達方法です。再配達の手間がなく日時指定の配達にも対応できることや、配送業者と対面することなく受け取れますが、荷物の盗難や破損、配達ミスなどが起こる可能性があります。オートロックの集合住宅では、在宅時でないと中に入ることができないので置き配をしてもらえません。
「最近では配送業者と提携し、指定された配送業者ならオートロックでも中に入ることができる方法があります。まだまだ数は少ないのですが、このやり方だと飲み物など重い荷物は置き配にして、盗難などが心配な荷物は宅配ボックスにするなどを入居者側が選択できるので便利です」

宅配ボックスがある賃貸物件は増えていますが、住んでいる物件に宅配ボックスがない場合には、配送業者から対面で受け取る、再配達、置き配以外に以下のような受け取り方があります。
ゆうパックは最寄りの郵便局で受け取ることが可能です。また、宅配便も配送業者の支店を指定すれば受け取ることができます。どちらも本人確認書類などが必要ですが、手数料は無料です。
コンビニは24時間営業が多いので、受け取る店舗を指定しておけば、夜遅い時間でも荷物を受け取ることができます。コンビニによって提携している配送業者が異なり、受け取り可能な荷物の大きさが決まっているので、事前に条件などを確認しておきましょう。
この場合、商品の注文時などに受け取りたい宅配ボックスの場所を指定します。また、公共施設の宅配ボックスは保管期限が指定されており、期限を過ぎるとキャンセル扱いになることが多いので注意しましょう。

一人暮らしの場合、仕事や学校などで日中不在にすることが多く、配達時間内に荷物を受け取れないことが多いでしょう。そんなとき宅配ボックスがあれば、不在でも配達された当日に荷物を受け取ることが可能です。また、在宅ワークや家事をしていて手が離せないときも荷物を受け取れるので、一人暮らしの人以外にリモートワークの人や主婦の人にも便利でしょう。
配達時に不在の場合、不在票が入っているので再配達を依頼しますが、指定する再配達が翌日以降になることが多い上に指定の時間に在宅している必要があり、面倒と感じる人も多いようです。宅配ボックスがあれば、荷物の受け取りが翌日以降になることもなく、再配達の手続きの手間もかかりません。
また、再配達を依頼しなくて済むということは、受け取る側の手間がかからないほか、配送業者の人件費や配達時のCO2の削減ができるというというメリットもあります。

近年、配送業者を装った不審者が部屋に押し入るといった犯罪もあり、インターホンの防犯カメラでは本当の配送業者なのか判別がつかないケースがあります。宅配ボックスがあれば配送業者と対面することなく荷物を受け取れるので、特に一人暮らしの女性にとっては防犯対策になります。これは、前述の賃貸契約者動向調査の結果で女性からの支持が高いことに関係していそうです。
契約したい賃貸のマンションやアパートに宅配ボックスがない場合、自分で宅配ボックスを設置できるのでしょうか。
「基本的に、賃貸物件で個人的に宅配ボックスを設置することはできません。マンションやアパートの場合、宅配ボックスを置くのは玄関前を希望されると思うのですが、玄関前は共用部ため個人使用を認められていないからです」
賃貸物件で個人的に宅配ボックスを設置できる例外として、戸建てがあります。これはマンションやアパートと違って玄関前が共用部分ではないからです。また、「物件にもよりますが、宅配ボックスではなく置き配なら一時的なのでOKとなるケースもあります。ただし、置き配の場合荷物がなくなった場合も自己責任となりますので、注意しましょう」
「管理会社にご連絡いただくクレーム、相談のうちの10%程度は宅配ボックスですが、一番多いのは、引っ越し後に旧住所に送ってしまったので荷物を取り出したいというものです」
この場合、退去後なので自分で取り出すことはせず、間違えて送ってしまった旧住所の管理会社に連絡をして取り出してもらうことになります。逆に自分の住所宛に宛名が違う荷物が入っていた場合も、管理会社に連絡をするようにしましょう。
荷物がいっぱいで入れられない場合には、管理会社に連絡をして他の住人の荷物を取り出してもらうよう注意喚起してもらう必要があります。また、暗証番号で開けた後に荷物を取り出さずに扉が閉まってしまうことがあるようですが、配送業者が設定する暗証番号は一度しか使用できないため、管理会社に連絡をして荷物を取り出してもらう必要があります。
電子式(接触型)の場合、部屋番号や暗証番号を入力して荷物を受け取ります。この暗証番号を忘れた場合、部屋ごとに暗証番号が設定されていることが多いので、管理会社や大家さんに連絡をします。本人確認をするなどの後、暗証番号を教えてもらえます。配送業者が設定した暗証番号で開かない場合は、荷物を管理している配送業者に連絡をして対応してもらいます。

部屋に暗証番号が設置されている場合、部屋ごとなので住人が代わっても番号は変わらない場合があります。そのため、まれに前の住民が宅配ボックスの中にある荷物を持って行ってしまうというケースが考えられます。この場合、部屋ごとの暗証番号は変更できないので、宅配ボックスを使用せず、置き配などで対応する必要があります。
宅配ボックスが設置されていない賃貸物件に入居した場合、原則として個人的に設置をすることはできません。不在が多い人や配送業者と対面して荷物を受け取りたくない人などは、最初から宅配ボックス付きの物件を検討するといいでしょう。
賃貸契約者動向調査(2023年度)の結果によると、宅配ボックスの満足度は64.8%で賃貸物件にはなくてはならない設備となっている
宅配ボックスが置き配の大きく違う点は、他人が荷物を触ることがなく盗難や破損のリスクが低いこと
再配達の手間がない、配送業者と対面せず荷物を受け取れるなどのメリットもある半面、カードの磁気不良や置き荷物がいっぱいで入れることができないなどのデメリットもある