賃貸で入居したい物件にエアコンがついてない部屋がある場合や、賃貸についているエアコンが壊れたり古くなったりした場合、設置や交換、クリーニングはどのような手順で行えば良いのでしょうか。こちらの記事では、費用の負担や、事前に確認すべきことなどをチェックリストの形式で紹介します。
エアコンがない賃貸の家に入居してエアコンを取り付けようとする場合、確認すべきことがいくつかあります。中には、事前に確認を取らないことで、修繕費用などを支払わなくてはいけないケースも。特に大切な項目について、SIREの木津さんにお話を伺いました。
賃貸物件は、その名前のとおり借りているものです。エアコンの設置や修理などをするときは、必ず大家さんや管理会社に連絡して許可をとりましょう。
基本的には、エアコンを設置して良い場所は決まっていて、室外機と繋がる穴が開いている壁にしか取り付けることはできません。
「エアコンを取り付けるのに必要な要素は4つあります。1つめはコンセントがあること、2つめは壁の下地が補強されていること、3つめはスリーブと呼ばれる穴が開いていること、4つめは室外機がおけること。これを満たす場所って、はじめから用意されている場所以外は無いことが多いんです。そのため、どの壁にも取り付けられないのです」(以下、「」内はSIRE木津さん)
大家さんや管理会社から、エアコンを取り付けて良いと言われたら、誰が費用を負担するのか確認しましょう。基本的には入居者負担となる場合が多いです。
「まれに、エアコンをつける場所は用意されていても、穴が開いていない物件があります。そういう物件にエアコンをつけたい場合、まず大家さんや管理会社に穴を開ける工事をしてよいか許可をとります。
穴を開ける工事をした場合、もともとの部屋の状態を変えてしまっているので、原状回復の義務が発生します。退去時にスリーブの穴を塞ぐ工事の費用を負担しなければいけません。もちろん、大家さんや管理会社が修繕工事は不要と言ってきたらそのままでOKなので、相談してみるのはアリです」
基本的に、穴を開けるような工事をした場合は、退去時に元の状態に戻す必要があります。その修繕費用は入居者負担ですが、貸主である大家さんや管理会社がそのままで良いといえば問題ないので、事前に確認しましょう。
自費で設置したエアコンは入居者のものなので、退去時には持っていかなければなりません。ですが、引越し先の物件にエアコンがついている場合など、エアコンが不要になることも。そういった場合、退去する部屋にエアコンを買い取ってもらい、おいていくことは出来るのでしょうか?
「基本的には、買取をしてもらうことはできません。契約書に、買取の請求をしない、などの記載がある場合が多いです。また、買取なしでエアコンだけ置いていくこともできません。退去時には原状回復義務がありますから、自分が取り付けたものを、好きに残していくことは出来ないのです。
ただし、これは一般的な契約の話です。管理会社や大家さんの意向によっては、買取をしてくれたり残置物として置いたまま退去させてくれる場合があります。相談をしてみるのは良いかもしれません」
備え付けのエアコンが壊れてしまったら、どのように対処したら良いのでしょうか。真夏や真冬だと、特に焦ってしまいますよね。すぐに修理業者さんに連絡をしたくなりますが、賃貸の備え付けエアコンの場合はその前にやるべきことがあります。
賃貸物件に備え付けになっているエアコンは、貸主の財産です。壊れたから修理をする場合でも、大家さんや管理会社に一度連絡を入れましょう。事前に確認をとることで早く修理ができる場合もあるそうです。
「管理会社さんは、お付き合いのある業者さんをかかえていることが多いです。その業者さんに頼めば、普通の入居者さんが依頼するような業者さんより安く早く修理ができることも」
業者にお願いするようなクリーニングは大家さんや管理会社に連絡をしなければなりませんが、フィルターのほこり掃除などは自分で適宜行いましょう。
基本的には、物件にもともと備え付けだったエアコンに、経年劣化で修理・交換・クリーニングの必要が出た場合、貸主の負担になります。入居者の過失で壊してしまった場合は、入居者の負担になるのが一般的です。しかし、契約書に定めがあった場合はそれに従うことになるので、契約書を確認しましょう。
大家さんや管理会社に連絡しなければいけないことを知らず、自分のお金で修理や交換をした場合、その費用をあとから支払ってもらうことはできるのでしょうか。
「本来大家さんや管理会社が負担してくれるような修理・交換であっても、個人で依頼をしてしまうと、負担してもらえない場合があります」
先述の通り、大家さんや管理会社は、業者と提携しており、修理や交換を安く頼めるツテをもっていることがほとんどなのだそう。個人で業者を探して頼んでしまうと、費用が割高になってしまいます。
そのため、個人が払った費用を、大家さんや管理会社が必ず全額負担してくれるかというと、難しいケースが多いようです。
いまや生活には欠かせないエアコン。夏場や真冬の寒い時期に壊れてしまうと大変ですよね。修理が必要になるタイミングが少ない家電でもあるので、急に故障したらどうしたらいいのかわからないもの。エアコンが壊れたときの疑問にお答えします。
物件の設備が故障したときの連絡先は、入居時にもらう書類の中に書いてあります。どの書類のどの欄に書かれているかは、不動産会社によって異なります。国土交通省が出しているフォーマットを使っている会社だと、「賃貸住宅標準契約書」という書類の中に、「賃借人の入居期間中の設備などの維持管理等に関する連絡先となる者について」と書かれた欄がありますので、物件の設備が故障したらそこに連絡してください。
他にも、契約書ではなく「賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書」という書類に書かれていたり、「重要事項説明書」という書類に書かれている場合もあります。
わからない場合は、いったん連絡先がわかる大家さんや管理会社に電話をして指示をあおぎましょう。
「入居者さんから管理会社さんに連絡が来たら、管理会社さんからメーカー、修理会社に連絡します。メーカーや修理会社は故障の状況を見て見積もりを出し、管理会社にその見積もりが届くと、管理会社が家主さんに承諾をとり、発注、工事という流れになります。
各会社の混み具合にもよるので、何日かかりますとお伝えするのは難しいです。早いケースでは即日修理にきてくれることもありますし、遅いケースだと修理まで1カ月かかってしまうようなこともあります」
管理会社によって、修理までの工程が違いますし、繁忙期かどうかによっても、修理までの日数は変わってきます。今までの経験や目安で判断するのではなく、つど管理会社に連絡して確認しましょう。
猛暑や極寒のなかエアコンが壊れてしまい、他の冷暖房設備を購入したり、ホテルに滞在したりした場合、その料金の補償は受けられるのでしょうか。
「基本的な考えとして、設備というものは必ずいつか壊れてしまいます。経年劣化で壊れたことに関しては誰の責任でもありません。なので、普通はエアコンが壊れたとしても修理するまでの補償はありません。
ただし、エアコンの故障を連絡したのに明らかに対応が遅く、1カ月も2カ月もなにもしてくれない場合、その期間の補償を管理会社に請求できるケースはあるでしょう。
エアコンが壊れたという事自体に補償はありませんが、その対応に過失がある場合は、管理会社や大家さんに何らかの補償を交渉できる場合があります。
ただ、猛暑や真冬にエアコンが壊れたなど緊急度が高いケース。こういったときは、管理会社の方が扇風機や暖房器具などを貸してくれることがあります。なにかしらの代替手段を提案してくれることもあるので、相談してみるのはありですね」
前の住民が残していったエアコンが壊れてしまった場合、その修理費はだれが負担することになるのでしょうか?
「残置物(ざんちぶつ)と言われるものですね。残置物に関しては入居時に必ず説明があります。残置物の管理については、管理会社も大家さんも責任をとりません。連絡してもなにもしてくれないので、自己負担で修理するしかありません」
修理は1日でも早くお願いしたいですが、立ち会いが必要となるとなかなかスケジュールが合わないことも……。修理中の立ち会いは必要なのでしょうか?
「室内に入るので基本的には立ち会いをお願いしています。どうしてもスケジュールが厳しく、かつ入居者の方が承諾した場合は、管理会社の担当者や大家さんが代理で立ち会いをすることもあります」。
どうしてもスケジュールが合わない場合には、管理会社や大家さんに相談してみましょう。
「シーズンが変わる前に試運転しておくのがオススメです。真夏や真冬になってからいざつけてみて修理となると、修理が混んでいて直るのが遅くなりがちです」
元々備え付けられているエアコンは年季が入っているけど、最新のものの方が省エネで電気代も安くなりそう。そんなとき、取り換えをお願いすることはできるのでしょうか?
「基本的にはできないですね。管理会社や大家さんとしても、自分の賃貸経営の計画があります。物件にエアコンを取り付けるときに、『このエアコンなら〇年以内なら修理が無料だから、家賃は〇円で貸し出せる』などの計画を立てます。
入居者の立場からすると、『自分のお金で、性能の良いものに替えるからOKなのでは?』と思ってしまうかもしれません。ですが、管理会社や大家さんとしても、壊れにくい丈夫なエアコンにしよう、無料で修理してもらえる期間が長いエアコンを選ぼう、など、管理会社目線で見たときに大切な要素を考えてエアコンを選んでいるのです。入居者から見た良いエアコンと、管理会社や大家さんから見た良いエアコンが同じとは限らないのです。
設備に手を加えたいのなら事前に許可が必要ですし、断られることも多いです。しかし、こちらも合意が取れれば問題ないので相談してみるのはありだと思います」
エアコンが壊れたときの対処法や、修理費の負担、よくある疑問についてお答えしました。賃貸物件に備え付けられているエアコンは、あくまで借りているもの。自費であっても勝手に修理や交換をすることはできません。夏や冬になる前に試運転をしたり、性能に不安がある場合は入居前に相談してみたりして、快適に暮らす工夫をしていきましょう
エアコンを新たに取り付ける際は、取り付けの可否だけでなく、費用の負担、退去時に修繕が必要か、退去時に置いて行っても良いかなども確認しておく
備え付けのエアコンが壊れたときは、まず大家さんや管理会社に連絡する
賃貸物件の設備の扱いは、契約書に準拠する。ただし、貸主との合意が取れれば契約書にない対応をしてくれることもあるので、要望がある場合は相談をしてみるのも良い