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キャッシュレス化が進む中、家計の大きな部分を占める家賃についても、クレジットカードやスマホ決済(QRコード・バーコード決済)などで支払うことができるか気になるもの。今回はクレジットカード払いの可否や方法、メリット・デメリットについて、ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんに聞いた。
家賃は銀行の口座引き落としという人が多いと思うが、物件を管理する管理会社などがクレジットカード決済に対応していれば、クレジットカードで家賃を支払うことも可能だ。
「NIRA総研 キャッシュレス決済実態調査」(2018年9月発行)によると、「家賃・管理費」を支払った人の49.2%は口座からの自動引き落としという支払方法を選択している一方で、クレジットカード払いをしているのは11.7%という結果になっている。家賃や管理費をクレジットカードで支払っている人は、現金払いの人よりも少ない全体の1割程度にとどまっているようだ。
家賃・管理費を支払った人の支払い方法

「家賃に限らず日常のお買い物でも、日本では現金のほうが家計管理しやすいという声が根強く、クレジットカードの利用頻度は少ない状況です。大手賃貸不動産各社が管理している物件では、家賃のクレジットカード決済に対応している物件はあるものの、決して多くはありません。また、対応している場合でも提携している会社のクレジットカードなど、特定のカードのみ受け付けるというのが一般的です。
使用できる物件が限られており、さらに業者側が指定するカードしか使えないとなると、一般消費者にとって、家賃決済をクレジットカードで行うというのはメリットが少なく、口座引き落としを選択している人が多いでしょうね」(風呂内さん、以下同)
社会的にキャッシュレス化が急速に進む中、家賃のクレジットカード払いについては、今後普及していくのだろうか。
「クレジットカード決済を導入するということは、賃貸物件の管理会社や大家がカード会社に手数料を支払う必要があります。日常的な買い物については、消費者がクレジットカードを使用できる店で優先的に買い物をすることがあったり、カードデータに残る消費行動をマーケティングに使うことができたりするなど、手数料を支払う業者側にもさまざまなメリットがあるのですが、家賃についてはほかの商材に比べて、決済方法を選べることが消費者の選択にさほど影響を及ぼしません。
『クレジットカードで支払えるから、この部屋にしよう!』ということではなく、立地や間取り、仕様、家賃などが選択決定の重要な要素になるので、クレジットカード手数料を支払う業者側にとって、手数料負担というデメリットがあるのに対し、メリットが少ないというのが、現段階でクレジットカードが家賃決済の主流になっていない原因の一つだと思います。
一方で、社会的なキャッシュレス化の流れや、クレジットカード決済を望む消費者の声があるのも事実。貸主側にとっても、クレジットカード支払いができる人はカード会社の審査に通っているということで、信用力が担保できますし、支払いは一旦カード会社が支払うため、家賃の未払いも防ぎやすくなるというメリットも見逃せません。
実際に、ここ5年ほどで大手各社が管理している賃貸物件では、家賃のクレジットカード決済対応のものもよく見かけるようになってきました。現在、賃貸不動産業界では、特定のカードと提携することでクレジットカード決済を導入するというスタイルが主流ですが、消費者側のニーズの高まりとともに、特定のカード以外でも支払えるケースが今以上に増えていくと、消費者側の選択肢として、さらに家賃のクレジットカード決済が普及していくことも考えられます」

家賃は毎月の家計で大きな割合を占めるもの。家賃をクレジットカードで支払うことで、その分のポイントやマイルが貯まるというのは、消費者にとっては大きなメリットだ。
「キャッシュレス決済のメリットの一つに、支払い履歴が残り家計管理がしやすくなるという点があります。払い忘れを防げたり、固定費を管理しやすかったりというのは、家賃をクレジットカード払いにするメリットではありますが、この点は銀行の口座引き落としにも当てはまります。
ただし、銀行の口座引き落としで家賃を支払う場合は、消費者側が引き落とし手数料を支払うのが一般的です。クレジットカード決済にすると、手数料分おトクになるというメリットはあります。
さらに、クレジットカードは使うほど、その信用力を高めることができます。信用力が高まることで、カードのグレードアップする際の条件が良くなることなどもあるので、家賃のような大きな金額の支払いをクレジットカードですることで、クレジットヒストリーを鍛えることができるというのは、間接的ではありますが、メリットといえるでしょう」
家賃決済で、クレジットカードの信用力がパワーアップ!

消費者側のメリットも多い便利なクレジットカードだが、家賃をクレジットカードで支払う場合、1~2カ月遅れで請求が来るので、家計管理には注意が必要だ。
「クレジットカードは後払いなので、今まで銀行口座からの自動引き落としだった場合、家賃請求のタイミングにタイムラグが生じます。口座にお金があると錯覚して使ってしまうと、後から来るカード会社からの請求に対応できないということになりかねません。ただ、初期費用などで出費がかさむタイミングで、家賃を支払うまでに猶予期間ができるというのは、メリットとも言えるでしょう」
クレジットカード決済の物件から口座引き落としの物件に引越す場合も要注意!

さらに、ポイントやマイルが貯まると思って、家賃をクレジットカード払いにしたいという人も多いと思うが、家賃はポイント付与の対象外というケースもあるので、契約時にはきちんと確認が必要だ。
「ポイント対象かどうかに加え、対象であっても、一般的な買い物の場合とは還元率が違うということもあります。家賃は大きな金額なので、還元されるポイントへの期待も大きいと思いますが、ポイントやマイルが付与されるのか、また還元率はどうなるのか気をつけておいたほうがいいですね」
不動産賃貸仲介会社、株式会社エイブルが今年、国内直営店舗にてスマホ決済サービスの導入を発表した。このケースは家賃ではなく、入居時にかかる諸費用に関しての導入事例だが、今後家賃についても、「○○ペイ」などのスマホ決済(QRコード・バーコード決済)が広まっていく可能性はあるのだろうか。
「スマホ決済はクレジットカードなどのキャッシュレス決済に比べると、業者側は導入しやすいシステムではありますが、決済のためにコードを読み込む必要があるため、毎月発生する支払いには不向きな決済方法です。家賃の場合、滞納につながる可能性もあるため、今後もスマホ決済が家賃の支払いに対する決済方法として、普及する可能性は低いと思います。
ただし、手軽さやポイント還元率の高さなどから、スマホ決済を選択したい消費者も多いと思います。定期的に支払うものではない、入居時にかかる初期費用の決済などについては、今後スマホ決済に対応する業者も増えていくかもしれません」。
今後も、家賃や初期費用の支払いのキャッシュレス化は進んでいきそうだ。家を借りるときなどは、決済方法を賢く選択して、メリットを享受しよう。
クレジットカード払い対応の管理会社が管理する物件を選べば、家賃のクレジットカード決済は可能
ポイントが貯まるなどのメリットも多いが、クレジットカード決済は後払いであることを忘れずに
入居時にかかる初期費用などについてはスマホ決済(QRコード・バーコード決済)に対応する管理会社も出てきている