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家賃は下げられるものなら下げたいもの。とはいえやみくもに値下げを要求しても、家賃交渉がうまくいかないどころか、大家さんの心証を悪くしかねません。ではどうすれば、スムーズに家賃交渉できるのでしょうか?大切なのは「事前の準備」「適切なタイミング」「交渉の伝え方」「交渉しやすい物件条件」「現実的な値下げ幅」「交渉が成立しなかった場合の対処法」。その6つのポイントを、ハウスメイトマネジメントの伊部尚子さんに解説してもらいました。
家賃交渉ができるのはどのような物件で、誰に対して行うものなのでしょう。まずは、家賃交渉の基本から解説します。
家賃が決まる要素はさまざま。「立地や建物の状況や共用部、間取りや設備などの要素が絡まり合って家賃に反映されます」(伊部さん、以下同)。
より細かく見ていきましょう。
【立地】
□沿線
□最寄駅
□最寄駅からの徒歩
□ほかに利用できる路線数
□周辺環境(公園、買い物、病院、治安等)など
立地は家賃を左右する大きな要素。まず、物件の最寄駅が人気の沿線かどうか、人気の駅かどうか。さらにそこから徒歩何分なのか、少し歩けば別の沿線も利用できるのか、周辺環境は便利なのかも重要です。
「長く住んでいる間に、例えば駅前の再開発が進んだ、大きなショッピングセンターができたなども家賃が上がる要因となります」
【建物】
□建物の構造
□規模、戸数
□築年数
□維持管理の履歴
建物がRC造なのか木造なのかといった構造に加え、建物の規模や戸数も家賃を左右します。「建物全体の規模が大きいとエントランスなども豪華になりがちで、一般的にはRC造で規模の大きい物件が家賃も高めになります。また、過去の維持管理の履歴も重要。これまで手をかけてきた履歴は家賃にも反映されます」
【共用部】
□共用設備
□維持管理(清掃等の管理状態)
宅配ロッカー、駐輪場、バイク置き場、オートロック、高速インターネットなど共用設備が充実しているほど、家賃も高くなります。また「今の管理状態も重要。きちんと清掃されているかどうかも家賃に影響します」
【部屋】
□間取り(使いやすさ、希少性)
□位置(階高、向き、日当たり、風通し、眺望等)
□室内設備
□室内の状態(内装、設備の劣化等)
個別の部屋の間取りも大きな要素。「例えば、周辺にワンルームは多いけれどファミリータイプは少ないなど、エリアでの希少性も家賃に影響します」
【その他】
□近隣事例の相場
□募集時期
「物件の中には、たくさんの人が引っ越す繁忙期は高く、閑散期だと安くなるという場合もあります」
家賃は時期でも変動します。具体的には繁忙期は高めの家賃で募集をし、閑散期には安い家賃で募集することはよくある話であり、違法でも何でもありません。
例えば、人気のある駅近×築浅物件に対して家賃交渉をするのは難しいもの。交渉するためには家賃を下げてもらう理由、つまりはその物件の「客観的に見て、同等物件と比較して不十分なところ」を挙げる必要があります。これから入居するのか、既に入居しているのかでも違い、ケースバイケースですが、主に以下のケースで交渉が可能になるでしょう。
【入居前の場合】
【更新時や入居中の場合】
「長く住んでいる間に、周りの部屋はどんどん新しい設備に変わっていったけれど、自分のところは古いまま、などという場合は、家賃交渉を行う理由になることもあります」
契約する賃貸物件の管理形態が以下の(1)(2)のどちらかによって、家賃交渉先が異なります。
(1)大家さんが管理している物件
(2)管理会社が入っている物件
(1)であれば大家さんに直接家賃交渉をすれば問題ありません。注意が必要なのは、交渉先が物件を紹介してもらった会社とは異なる可能性がある(2)のケース。例えば、A不動産に部屋を探しに行き、B不動産が管理する物件を契約したならば、家賃交渉の相手はB不動産となります。
ちなみに管理形態の違いは家賃の振込先で、おおむね判別することができます。家賃を大家さんに振り込んでいれば(1)大家さんが管理している物件、不動産会社に振り込んでいれば(2)管理会社が入っている物件に該当します。
家賃交渉を行うには、相応の理由が必要です。単純に「家賃が高いので下げてほしい」などでは取り合ってもらえません。その理由を説明するため、しっかりと事前に準備をしましょう。
まずは、住みたいもしくは現在住んでいるエリアの家賃相場を調べてみましょう。これから入居する部屋を探すときも、住んでいる部屋の家賃相場を知りたいときも、基本的にやることは同じ。部屋探しのポータルサイトに自分の希望条件(最寄駅・駅からの距離・広さ・築年数など)を入力して、同じような条件の部屋を比べれば、相場はわかります。もし同じ建物の別の部屋が空いていて入居者募集中であれば、その家賃がわかることもあるでしょう。
ただし、ここで注意したいのが、その数字だけで高い・安いと判断できないこと。
「例えば物件が古くなってくると、リフォームの状態によっても家賃が変わります。同じ建物で同じ間取りの隣の部屋であっても、キッチンも床も取り替えてピカピカにして高めの家賃で次の人に貸す場合もあれば、あまりリフォームをしないで家賃を抑えて貸す場合もあります」
同じ間取りの隣の部屋なのに家賃が違う、などという背景には、こういう事情があることも。ほかの物件と家賃を比較するときは、特定の物件だけでなく、なるべく多くの物件をチェックしたほうが相場観をつかみやすくなります。
また、部屋の位置で家賃も変わる点にも注意が必要です。同じ間取りであっても3階角部屋と1階中部屋を比較したら、1階が安くて当たり前なのです。
更新時や入居中であれば、家賃相場の推移についても調べてみましょう。例えば「家賃相場 推移 〇〇市」などのキーワードでネット検索すると、様々なサイトが出てきます。あくまでも平均値ではありますが、入居してから現在までの家賃相場の推移を知っておくことは、交渉にも役に立つでしょう。
なぜ家賃相場の推移を調べるかというと、借地借家法にこのような規定があるからです。
手元の賃貸借契約書の条文にも、賃料の改定についての条項が入っているはずなので、確認してみましょう。
家賃相場を確認したあとは、物件の価値について整理しましょう、先ほど家賃交渉できる材料をご紹介しましたが、挙げた要素を含む物件でも、すでに十分家賃が安ければ逆に人気物件になり得るため、「不人気要素が多い=家賃交渉がしやすい」とは限りません。

そこでポイントになるのが、不人気要素と価格のバランスです。例えば、近接の類似物件に比べて家賃が高い場合は、家賃交渉の糸口になる可能性も。相応もしくは相場より安い価格にもかかわらず空室が多い物件や、空室が続いている部屋も家賃交渉の余地があるかもしれません。
すでに入居している物件についても同様で、同じ建物内で空室が多くなってきた、または、一度空室になるとなかなか決まらない様子があれば、家賃交渉のきっかけになるでしょう。
次に、交渉材料を整理しましょう。先ほど挙げた交渉材料について不明点があれば、不動産会社にさりげなく確認を。特に「同物件内にほかの空室はないか」、「前の入居者がいつごろ退去したのか」を聞いてみるとよいでしょう。
家賃交渉の進め方やコツは、タイミングによって異なります。入居前・更新時・入居中のそれぞれのパターンを見ていきましょう。
入居前であれば、不動産会社から大家さんに家賃交渉してもらうのが基本。つまり、間に入る不動産会社に「大家さんに聞いてみてもらえますか?」とお願いすることになります。
このとき「希望の金額まで下がったら絶対に借りるという覚悟を持って聞くのがルールです」と伊部さん。「とりあえず聞くだけ聞いてみよう、くらいの感覚で交渉するのは、失礼に当たります。家賃が下がらなかったら借りる気がない場合は、それをしっかり伝えて交渉しましょう」
「すごく気に入ったのですが、家賃が予算を少しオーバーしていまして……。もし2000円下げていただけるのであればぜひ借りたいのですが、大家さんに交渉していただけないでしょうか?」
更新時の家賃交渉も不動産会社(管理会社)を通じて大家さんに相談するケースが多いですが、大家さんが管理会社を通さずに自分で管理している物件(自主管理)で、退去時の連絡先なども大家さんとなっている場合は、直接大家さんに交渉することになります。
「たまたまインターネットでこの物件のほかの部屋の家賃を見てしまって……。自分が借りている部屋の家賃よりだいぶ下がっているようだったので、次の更新のときに少し下げていただけるように大家さんに交渉可能でしょうか?」
「なるべく長く住みたいと思っているのですが、だいぶ設備も古くなってきてしまっているので、家賃を少し下げていただくなどご検討くださるとありがたいのですが……可能でしょうか?」
契約更新時と同様、不動産会社(管理会社)を通じて大家さんに相談するケースが一般的ですが、自主管理物件の場合は直接大家さんに交渉することも。更新時や入居時と比較すると成功率はやや下がるものの、入居中も家賃交渉をしてOK。家賃滞納やトラブルがないなど、大家さんの信頼を勝ち取っている入居者が有利でしょう。
「マンション内の同じ間取りの部屋で、〇〇円安い家賃を見てしまって……。~~という理由(環境面や設備や防犯面など、入居後にネガティブに変化した要素)もあるので、少し下げていただけるように大家さんに交渉いただけないでしょうか?」
「なるべく長く住みたいと思っているのですが、現在空室になっている同じ間取りの部屋と比べて家賃が〇〇円高く……少し下げていただくなどご検討くださるとありがたいのですが、可能でしょうか?」
紹介したのはあくまで一例です。自分の状況、不動産会社や大家さんとのコミュニケーションの取り方などに合わせてアレンジして伝えてみましょう。
先ほどお話したように、家賃交渉は大きく「不動産会社を介した交渉」と「大家さんとの直接交渉」に分かれます。それぞれの交渉方法や注意点をご紹介します。
不動産会社(管理会社)との交渉について、基本的には対面で伝えるのがスムーズですが、どうしても難しい場合はメールや電話などで交渉を依頼してもOK。「契約前=部屋を借りたい」「入居中=長く住み続けたい」という意思表示と一緒に伝えましょう。
契約前であれば、閑散期が比較的成立しやすいでしょう。特に、学生向けや独身向けの部屋は、4月までに入居者が見つからないと、10月まで空き室になってしまう可能性が高いため、5月~9月くらいまでは、家賃の相談に乗ってくれやすいかもしれません。
家賃の最終決定を下すのは大家さんですが、大家さんと直接交渉するより、不動産会社に物件を紹介してもらうケースが多いはず。その場合、家賃交渉の最初の関門であり、大きな影響を与えるのは不動産会社です。不動産会社を説得できなければ、その段階で、家賃交渉は失敗に終わったと思って間違いないでしょう。
ただし、中にはそもそも家賃交渉されることが嫌いな大家さんも。仮に不動産会社が客観的に見て、少し家賃を下げても良さそうだと判断した場合でも、大家さんがNGという場合もあります。
大家さんとの直接交渉では、誠実さをしっかりアピールする必要があります。普段面識がない大家さんにいきなり電話をしても驚かれますし、即答できないので、まずは手紙で希望を伝えてから電話や対面で交渉するのがスムーズ。もし近くに住んでいるなら、直接挨拶に行くのも好印象ですね。
「そのほかにも、『長く住みたいと思っている』ことや『物件をすごく気に入っていて、きれいに掃除をして住んでいる』ことを大家さんに伝えると印象が良くなるかもしれません」
不動産会社と大家さんのどちらに交渉するとしても、やはり重要になるのが「交渉タイミング」です。家賃は契約で定められているため、入居後の家賃交渉は、契約内容を見直すタイミングでもある契約更新の時期がベストでしょう。ほかにも、物件が売却や相続されて大家さんや管理会社が変わった場合、直後はお互いに連絡をとる機会が頻繁にあるため、家賃について相談するタイミングとしては良いかもしれません。
もうひとつ、雨漏りが何度修理しても再発するなど物件自体が劣化している場合や、近隣から大型スーパーが撤退など、生活利便性に変化があり、著しく物件価値が下がった場合などは家賃交渉をしてもおかしくありません。
ほかにもパチンコ店のような騒然たる施設が近くにできたり、バルコニー側に大きなマンションなどが建ち、日当たりが悪くなったりなど、わかりやすい環境の悪化や利便性の低下があれば交渉の余地ありです。ただし、更新時期ではないときに交渉すると、更新まで待ってくださいと言われる可能性が高いでしょう。

ともあれ、自分自身が「特に問題も起こさずある程度長く住んできて、これからも長く住むつもり」であれば、気になったタイミングで不動産会社や大家さんに相談してみても良いと思います。その際には、「家賃を下げる理由」や「適切なタイミング」を踏まえたうえで交渉に臨むといいでしょう。
家賃交渉を成功させる極意は、「適切な価格設定」「誠実な態度」「断られたときの対応」の3つです。
家賃交渉での現実的な値下げ幅は「一概には言えないものの、だいたい2000~3000円くらいが交渉可能額ではないでしょうか」と伊部さん。ただし、これはあくまで自分の家の家賃が周囲の家賃相場よりも高い場合の話。相場と比べてほぼ同等の範囲であれば、値下げ交渉は難しくなるでしょう。
反対に、周囲の家賃相場は下がっているのに、10年以上住んでいる自分の物件の家賃は下がっていない場合などは、交渉の可能性があります。
また、大家さんがその物件を今後どうしていきたいかによって変わることも。例えば近い将来、賃貸物件として売却を考えているような物件では、収益が下がると売りにくくなるため、値下げ交渉が通りにくい場合もあるようです。
逆に、将来建て替えを予定している物件では、定期借家契約に切り替える代わりに家賃を安くしてもらえることがあります。長く住む予定がない場合には、借りる側としてもメリットがあるでしょう。
こういった大家さんの経営方針や事情、性格なども、管理をしている不動産会社ならよく知っていることも多いので、一度相談してみてもいいかもしれません。
「不動産会社は家賃を下げるべきかどうかを判断する前に、家賃を下げてでも住んでほしい人かどうかを見ています。態度があまりに横柄だったり強引だったりする人は、『この先、何かトラブルが起こるのでは?』と予感させてしまいます。そうなれば家賃交渉以前に、契約も成立しない可能性があります。反対に、長く住み続けてくれていて、マナーなどもきちんと守る入居者さんの場合、退去になったら多額のリフォーム代がかかり、次の入居者が決まりにくいとなれば値下げ交渉に応じるべきという判断になります」
つまり「下げてもらって当然」という態度は厳禁。「お願いベース」で臨み、不動産会社に「大家さんと家賃交渉してでも住み続けてほしい」と思ってもらえるかどうかがポイントのひとつになるようです。

家賃交渉が成立しなかったとしても、別の提案であれば寛容に受け入れてもらえる可能性があります。家賃がそのままでも引き続き住み続けたい、もしくは入居したい場合には、家賃以外で相談したいことを事前に整理しておき柔軟に対応しましょう。
では、家賃交渉に失敗した場合はどうすればいいのでしょうか。住み続けたい(入居したい)場合と、退去する場合のそれぞれの対応を解説します。
先述したように、家賃交渉がNGであっても代替案は承諾してもらえるケースもあります。以下がその一例です。
気に入った物件であれば、家賃交渉に失敗しても住みたいもの。代替案を提示して、少しでもお得に住めるよう交渉しましょう。
「家賃が下がらないなら、ほかの物件に引っ越そう」と考えるケースもあるでしょう。ただし、ここで注意したいのが入居してから1年未満などで引っ越すケース。短い契約期間の場合、短期違約金などを設定している物件もあり、一般的には家賃1~3カ月分を請求されるケースが多く、大きな出費になります。
「数千円安い物件に引っ越すために違約金が十数万円かかった」となると、トータルで見るとマイナス。家賃交渉後に引っ越しをする場合は、違約金や解約通知期限のことも念頭に置きましょう。
家賃は立地や建物の状況や共用部、間取りや設備などにより決まる
契約前に家賃交渉をするなら、閑散期が比較的成立しやすい
更新時の家賃交渉も不動産会社(管理会社)を通じて大家さんに相談
「下げて当然という態度」はNG!「お願いベース」で謙虚に相談しよう
適切な交渉額、誠実な態度、代替案の提案が交渉成立の極意
・賃貸契約に必要な初期費用(敷金礼金など)の相場はどのくらい? 安くする方法は?引越し費用は?