部屋探し中に時々見かけるのが、「仲介手数料無料」の物件。お得なイメージだけど、そもそも仲介手数料って何のために払うの? 無料になることがあるのはどうして? さまざまな疑問を専門家にぶつけてみました。
賃貸住宅を契約するとき、敷金・礼金などと合わせて初期費用として発生するのが「仲介手数料」。そもそもこれは何のために必要なお金なのでしょうか。第三者的な立場で不動産コンサルティングを行う、長谷川不動産経済社の長谷川高さんに聞きました。
「仲介手数料とは、物件を紹介してくれた不動産会社に、その対価として支払うお金のこと。不動産会社は、物件の紹介はもちろんですが、入居者と大家さんの取引の安全を図るためのさまざまな手続きもしてくれます。仲介手数料はその手数料でもあり、家賃の1カ月分+消費税が上限と宅建業法で決められています」
仲介手数料は、入居者と大家さんの両方から受け取る場合であっても、家賃の1カ月分+消費税が上限。つまり、入居者が支払う仲介手数料が半額または無料となっている場合、「その分の金額は、大家さんからもらうから、あなたはいいですよ、ということなのです」
本来、入居者から正々堂々ともらうことができる仲介手数料を、大家さんからもらい、入居者からはもらわないということは、「大家さんがそれだけ早く入居してもらいたい物件であるということ。例えば物件が古い、駅から遠い、日当たりがよくない、借り手の少ない時期など何かしらの理由があって、入居者ウェルカムな物件である可能性が高いと言えるでしょう」と長谷川さん。
だったら家賃を下げてくれればいいのに……というのは入居者側の考え。「大家さん側からすると、ほかの部屋の入居者の手前、賃料の値下げは難しいこともあるんです。例えば、空室を賃料5万円で入居者募集した場合、ほかの部屋の入居者から、うちは同じ間取りで6万円なのにとクレームが入ることも考えられます」
このような背景もあり、より入居者にとって借りやすい物件にするための方策として、仲介手数料や敷金・礼金などの初期費用を抑えることはよくあること。ただし、初期費用だけでなく、「そこに住み続けた場合のトータルコストが、その部屋での暮らしの質に見合うかどうかをしっかり見極めることが大事です」
先ほどの例に挙げたように、本来は賃料5万円でも借りられるような物件が、他の入居者の手前、賃料6万円に設定されているケースもあります。「今はインターネットなどを見て、自分の希望条件に合った物件の家賃相場も簡単にチェックできる時代。初期費用の安さだけに飛びつかず、少なくとも2年間はそこに住むとしてトータルコストを考えるといいでしょう」
何かワケありで仲介手数料が無料になっている物件でも、その「ワケ」は、人によっては問題にならないケースもあるでしょう。その場合は、その人にとってコストパフォーマンスの高い物件となります。また、貯蓄額などの関係から「初期費用を抑えたい!」という人にはうれしい物件でもあります。興味のある仲介手数料無料の物件を見つけたら、思いきってその理由を不動産会社に聞いてみると、安心して物件を借りられるかもしれません。