実家は売ってから相続? 相続してから売る?

将来の相続発生が予測される実家。親が健在のうちに売って住み替えるのがいいのか、相続が発生してから売るのがいいのか。それぞれどんな税制上の特典が使えるのかを見ていこう。

親が実家を売って売却益が出ると所得税がかかる

まず実家に住んでいる親が自分でその家を売る場合、売却によって生じた譲渡所得(売却益)への課税が発生する。譲渡所得は他の給与所得などと分離して税率がかけられ、所得税と住民税が課せられる。

親がその家を手に入れたときの価格よりも高く売れた場合は、家を所有していた期間によって譲渡所得への税率が変わってくる。所有期間が5年以下の短期譲渡所得は所得税30.63%+住民税9%、5年を超える長期譲渡所得は所得税15.315%+住民税5%だ。さらに10年を超える所有は譲渡所得6000万円以下の部分について所得税10.21%+住民税4%の軽減税率が適用される。

このように譲渡所得への税率は最低でも14.21%かかるが、自宅の場合は譲渡所得から3000万円を控除できる3000万円特別控除という特例を利用できる。その家に住んでいなかったとしても、住まなくなってから3年目の年末までに売れば控除の対象になる。
このほか、自宅の所有期間が10年超の場合、売却した価格より高い住宅に買い替えると譲渡所得への課税が繰り延べられ、次に買い替える時まで課税されない買換え特例という制度もある。

売却したお金を現金で持っていると相続税が膨らむ

逆に親の自宅が値下がりして、買ったときよりも低い価格でしか売れなかった場合は譲渡所得がマイナス、つまり譲渡損失(売却損)が発生したことになる。この場合は売った年の他の所得と相殺(損益通算)し、所得税や住民税を減らすことが可能だ。

この譲渡損失については、売った自宅の所有期間が5年を超えるなど一定の条件を満たすと、売った翌年から最長3年間の所得と譲渡損失を繰り越して控除できる特例もある。譲渡損失が大きければ、最大で4年分の所得税や住民税がゼロになる場合もあるのだ。

親が自宅を売って売却益が出ても売却損が出ても、住宅ローンが多く残っていなければ手元に資金が残ることになる。「その資金を元手に自宅を買い替えるなり、老人ホームなどへの入所資金に充てるなり、遺産を分ける際の便宜のために置くケースであればともかく、現金は相続財産としての評価が不利になるので注意する必要があります」と、株式会社タクトコンサルティング情報企画室課長・遠藤純一さんは指摘する。なぜなら同じ時価でも不動産は相続税評価額が圧縮されるが、現金にはそうした効果がないからだ。

売ってから相続する場合のポイント

空き家になった実家にも3000万円特別控除が使える場合がある

では実家を相続してから売る場合はどうか。この場合、死亡した親(被相続人)と相続した子(相続人)が同居していたかどうかがまず分かれ目となる。子が同居しておらず、親に配偶者も同居親族もいなかった場合、つまり一人暮らしだった場合は、「空き家の3000万円特別控除」の対象になる可能性がある。

通常の3000万円特別控除は自宅の売却が対象なので、実家の売却の場合、子が居住していることが前提だが、空き家の3000万円特別控除は文字通り空き家対策として2016年度に導入された制度で、同居していないことが条件となる。ただし建物が1981年より前の旧耐震基準で建てられていることや、その建物を解体して更地で売ることなどの条件がある。「子の居住要件がないので、空き家になった実家を兄弟姉妹で共有で相続した場合に、それぞれが控除を受けられるメリットがあります」(遠藤さん)

一方、子が実家に同居していた場合は、相続後に子が居住を続ければ子の自宅になるので、通常の3000万円特別控除や譲渡損失の繰越控除の対象になる。それぞれ住まなくなってからの期間や保有期間などの要件を満たすことが前提だ。

小規模宅地等の特例が相続税に大きく影響する

相続が発生して相続税を算定するときには、実家の土地の評価に小規模宅地等の特例が使えるかどうかが税額に大きく影響する。小規模宅地等の特例とは、親の自宅だった土地について330m2を限度に相続税の評価額が80%減額されるというもの。特例が適用されると相続税が大きく減額されるケースが多いが、相続直前に子が親と同居していたことが前提の一つとなる。

ただし同居していなかった子でも、親に配偶者やほかの同居親族がおらず、かつ過去3年間に自分や自分の配偶者が所有する家に住んだことがない子(いわゆる「家なき子」)が相続する場合は扱いが変わり一定の要件を満たせば特例が適用される。

取得費加算の特例との兼ね合いにも注意が必要

このように大きなメリットのある小規模宅地等の特例だが、取得費加算の特例との兼ね合いには注意が必要だ。取得費加算の特例とは、相続した実家を売却する際に、その実家の相続にかかった相続税を取得費として譲渡所得から控除できるというもの。つまり小規模宅地等の特例で相続税が減額されると、その実家を売るときに譲渡所得税が増えてしまう場合があるのだ。どちらの特例を選ぶのが得かは、試算してみる必要がある。

相続してから売る場合のポイント

「空き家の3000万円特別控除を利用する場合は相続開始から3年以内に、取得費加算の特例を利用する場合は同じく3年10カ月以内に実家を売却することが要件です。遺産分割協議などでもめているうちに期限を過ぎてしまわないように、手続きを進める必要があるでしょう」(遠藤さん)

売ってから相続するにしろ、相続してから売るにしろ、適用される控除や特例を理解し、要件や期限などを見逃さないようにしたい。

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取材・文/大森広司(オイコス) 取材協力/遠藤純一さん(タクトコンサルティング)
公開日 2018年06月29日
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