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空き家問題の現状とは?空き家増加の要因やリスク、対策方法を詳しく解説!

空き家問題の現状とは?空き家増加の要因やリスク、対策方法を詳しく解説!

近年、空き家が増加し、空き家の倒壊事故や放火などが発生しています。空き家は社会的なリスクのみでなく、所有者にとっても税制上不利になることがあります。所有する空き家をどうすれば良いのか、頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、空き家問題の現状や空き家が増加する要因について、詳しく解説します。後半では、空き家が持つリスクや、回避するための有効な対策も紹介しているので、空き家の扱いに困っている方はぜひ参考にしてください。

記事の目次

空き家問題の現状について

少子高齢化・人口減少などを背景に深刻化する空き家問題ですが、現状はどうなっているのでしょうか。ここでは、前提となる空き家の定義を説明するとともに、統計データをもとにして、全国や地域ごとの空き家率の状況を解説します。

空き家とは?

空き家とは、現在誰も住んでいない住宅のことを指すのが一般的です。総務省が実施している「住宅・土地統計調査」では、空き家を次の4種類に分類しています。

空き家の種類 内容
(1)二次的住宅 普段は人が住んでいない別荘、普段居住する自宅とは別に、たまに寝泊まりする人がいる住宅など
(2)賃貸用の住宅 新築・中古に関係なく、他者への賃貸を目的として空いている住宅
(3)売却用の住宅 新築・中古に関係なく、他者への売却を目的として空いている住宅
(4)その他の住宅 上記3つ以外の、人が住んでいない住宅

(1)(2)(3)については、通常空き家と呼ばれることはありません。そもそも人が常時住むための住宅でなかったり、将来人が住む目的で管理されていたりするためです。空き家問題で取り沙汰される「空き家」は「(4)その他の住宅」に分類されます。

全国的に拡大している空き家率

少子高齢化や人口減少などの理由により、空き家数の増加が社会問題となっています。「平成30年住宅・土地統計調査」(総務省統計局)では、空き家数は約849万戸で全国の住戸の13.6%を占め、5年ごとにまとめられるこの調査において、2013(平成25)年から約29万戸増と過去最高の数になりました。

管理が行き届いていない空き家は、その地域に、防災上、衛生上、景観上などの観点からさまざまな悪影響をおよぼすといわれています。

年々増える空き家ですが、これは地方と都市部で異なる背景があります。

まず地方では、家を所有している高齢者が死亡したとき、子どもたちはそもそも地方に住んでおらず、それぞれの自宅を所有していることも多いため、相続した田舎の不動産に関心がなく、放置してしまうパターンが多くなっている点が挙げられます。

また、都市部に比べ土地が安いことから、新築住宅の価格も相対的に安くなりやすく、わざわざ古い家を相続、もしくは中古住宅として購入するよりも、新築を購入、建てることが多いことも、空き家がそのままになってしまう理由になっています。

一方、都市部で多いのが、更地評価による固定資産税増を回避するために、あえて空き家のまま放置するケースです。土地に住宅が建っている場合に適用される、住宅用地の特例による固定資産税軽減が、更地にしてしまうと適用されなくなるためです。また、名義人が複数いるなど権利関係が複雑なことによって、活用や処分の見通しが立たないケースなどもあります。土地・住宅のニーズがあっても、高い地価や権利関係が足かせとなり、空き家が増える傾向にあります。

さらに、一戸建てより増加幅は少ないものの、マンションなどの共同住宅でも空き家は発生しています。2018(平成30)年時点の空き家の内訳は、一戸建てが約318万戸(37.5%)、長屋建てが約50万戸(5.9%)、共同住宅が約478万戸(56.3%)です。この共同住宅には、分譲マンションや賃貸アパートなども分類されるので、全国の空き家のうち、マンションを含む共同住宅が半数以上を占めていることになります。

年々増加する空き家数

空き家数および空家率の推移(全国)

データ出典:「平成30年住宅・土地統計調査」(総務省統計局)

地方の空き家率が特に高い

総務省統計局の「平成30年住宅・土地統計調査」では、どの都道府県で空き家率が高いのかを紹介しています。

空き家率は全体的に上昇しているものの、都道府県別に見てみると、最も高いのは山梨県の21.3%となっています。次いで和歌山県が20.3%、長野県が19.6%、徳島県が19.5%、高知県が19.1%、鹿児島県が19.0%で、空き家率が高い結果となっています。

なお、空き家のうち別荘などの「二次的住宅」を除く空き家率が最も高いのは、和歌山県の18.8%。次いで徳島県が18.7%、鹿児島県が18.5%、高知県が18.4%、愛媛県が17.6%です。

一方、空き家率が最も低いのは、埼玉県の10.2%です。ほかにも沖縄県が10.4%、東京都が10.6%、神奈川県が10.8%と比較的低くなっています。

西日本に空き家率が高い県が多い

空き家率-都道府県(平成25年,30年)

データ出典:「平成30年住宅・土地統計調査」(総務省統計局)
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空き家増加の要因とは?

地方を中心に社会問題となっている空き家ですが、なぜ日本で空き家が増え続けているのでしょうか。近年の空き家増加のおもな要因として、以下の4点が挙げられます。

少子高齢化や人口の減少

空き家増加の要因の一つとして、社会全体の問題となっている少子高齢化や人口減少が挙げられます。人口減で住宅を購入する人自体が少なくなっているうえ、地方で急激に進む過疎化から、さらに需要が少なくなっていることが前提になるでしょう。

日本人の新築信仰

さらに、空き家増加の背景には、日本人の新築信仰もあるといわれています。空き家率は全体的に上昇し、地域によっては中古住宅が余ってもなお、日本では新築住宅への人気が一定数あります。

国土交通省のデータ(住宅着工統計:2018(平成30)年時点)でも、日本の新設住宅着工戸数は約94万戸なのに対して、既存住宅流通量は約16万戸と、全住宅流通量(既存住宅流通+新築着工)に占める既存住宅の流通シェアは14.5%になっています。

もちろん、税制面では住宅ローン控除など、新築住宅で最大限メリットが得られるような、住宅購入の後押し策がとられてきたという経緯も見逃せないでしょう。

相続のトラブルや煩雑さ

相続のトラブルや煩雑さも、空き家増加の要因といわれています。

不動産は、金銭と違ってきれいに割り切れるものではありません。また、物件によっては、相続税などが思いのほかかかることがわかって相続を避け、相続人全員が相続放棄をすることで空き家になってしまうこともあります。

解体費用が用意できない

空き家を解体したくても、費用が高くてできないケースもあります。解体費用は建物構造や建物の面積によって異なりますが、100万円以上かかるのが一般的です。高額な解体費用を確保できないため、やむをえずそのまま放置されている空き家も存在します。

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空き家が増えることによるリスクとは?

空き家が増えると、所有者・自治体・周辺住民といった関係者にさまざまなリスクが生じます。社会的なリスクとしては、防犯・防災性の低下と、放置による経済機会の損失が挙げられるでしょう。また、空き家の所有者にとっては、税金面でのリスクもあります。ここでは各リスクについて詳しく解説します。

倒壊や放火、犯罪など防災・防犯面のリスクを高める

建物は、人が住んで管理しているときれいに保たれるものですが、人がいなくなったらたちまち傷んでくるものです。特に、木造一戸建て住宅では柱の腐食など経年劣化が発生し、地震などが起きた結果、倒壊する危険性が高まります。

こうした建物の崩壊では、空き家の所有者が責任を問われる場合があります。単に空き家の所有者の問題だけでなく、隣家などの周辺住民に迷惑をかけてしまうこともあります。実際に空き家を放置して倒壊した結果、隣家に被害をおよぼした事例もあることから、しっかりとした管理が求められます。

次に見過ごせないのが犯罪リスクです。空き家になっていることで、第三者の不法占拠が容易になり、犯罪者が侵入して隠れ家になるなどの犯罪リスクが増加します。また、違法植物の栽培、詐欺グループの基地利用など、さまざまな面で空き家を悪用される事例も出ています。

犯罪・放火・倒壊のイメージ

こうした空き家と犯罪との関係について、よく採用されるのが「割れ窓理論」です。これはアメリカの犯罪学者が提唱した理論で、「建物の窓が割られたのを放置していると、そのことが地域の治安に関心を持つ人がいないというメッセージになり、犯罪者などが入り込みやすい環境になる」という説です。

空き家だからと放置していると、知らず知らずのうちに、犯罪者などを呼び込みやすい雰囲気を作ってしまい、地域全体の治安が悪化していくということです。

また、犯罪に加えて、衛生面、景観面でも懸念があります。空き家へのごみの不法投棄や庭の雑草未処理などで、異臭、害虫などが発生しやすくなります。特にごみの不法投棄は、誰か1人が行なうと連鎖して、あれよあれよという間にごみ屋敷のようになってしまうことも珍しくありません。害虫、不快虫も当然発生しやすくなり、さらに野良犬、野良猫が住みつくと、その糞尿による悪臭なども発生しやすくなります。

そうなると、周辺住民は多大な悪影響をこうむる事態となります。管理されないことで老朽化が進み、お化け屋敷のような見た目になる空き家も多く、景観も悪くなります。

空き家を放置していた場合には、建物の老朽化による資産価値の低下だけでなく、その地域自体の環境を悪化させることにもつながるのです。

割れたガラス

(画像/PIXTA)
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地域や自治体の経済機会の損失につながることも

経済機会の損失とは、最適な意思決定をしないことで、本来ならより多くの利益を得られる機会を失ったり、損失が出てしまったりすることです。

例えば、店舗や施設として有効活用されていれば、その分経済機会が増えます。有効活用することで、事業者は利益を出せますし、地域住民の利便性も向上するでしょう。また、自治体は税収が増えることで住民サービスをより充実しやすくなるなどの効果が期待できます。

しかし、空き家の放置によって、周辺地域の再開発に支障が出たり、土地の有効活用の障害になったりすることが考えられます。さらに、自治体目線でいえば、住民のいない空き家のままでは住民税の徴収が滞り、街づくりプランも立てにくくなるという弊害もあります。

空き家放置でのトラブル

(画像/PIXTA)

特定空家等の制度で税金が増額することも

空き家の持ち主にとって、税金もリスク要因の一つになることがあります。

2015(平成27)年5月、倒壊などの危険性の高い空き家を減らし、所有者に対し適切な管理と活用を促す「空家等対策の推進に関する特別措置法(通称:空家等対策特別措置法)」が全面施行されました。

通常、居住用の建物が建っている土地では、特例によって「固定資産税」や「都市計画税」が大幅に軽減されています(減額率は固定資産税で最大6分の1、都市計画税で最大3分の1)。

ところが、空き家を放置していて、周辺に危険をおよぼす可能性のある「特定空家等」に指定されると、この税金の特例が適用されなくなります。つまり、固定資産税と都市計画税の負担が増える可能性があるのです。

空き家にかかる固定資産税・都市計画税の計算方法
■固定資産税
  特例と計算方法
特定空家等 特例なし
  • 固定資産税課税標準額×1.4%※
住宅(空き家も含む)
  • 固定資産税課税標準額×1.4%※
土地 住宅用地の特例(建物が建っている場合)
  • 小規模住宅用地(200m2までの部分)固定資産税課税標準額×1/6×1.4%※
  • 一般住宅用地(200m2を超える部分)固定資産税課税標準額×1/3×1.4%※
※自治体により異なることがある
■都市計画税
  特例と計算方法
特定空家等 特例なし
  • 固定資産税課税標準額×0.3%※
住宅(空き家も含む)
  • 固定資産税課税標準額×0.3%※
土地 住宅用地の特例(建物が建っている場合)
  • 小規模住宅用地(200m2までの部分)固定資産税課税標準額×1/3×0.3%※
  • 一般住宅用地(200m2を超える部分)固定資産税課税標準額×2/3×0.3%※
※自治体により異なることがある

また、特定空家等に指定されたときに、所有者が改善のための適切な対応を怠っていると、自治体によって強制的に空き家が取り壊され(行政代執行)、その費用は所有者に請求されます。

つまり、空き家を放置していると、固定資産税や都市計画税の軽減措置が受けられないだけではなく、空き家を強制的に取り壊され、その費用負担が発生する可能性があるということです。

なお、空き家にかかる税金は、更地にした場合も特例が適用されなくなるので、安易に解体することもおすすめできません。

しかし最近では、老朽化した家屋を取り壊した場合に、一定期間、取り壊す前の水準まで税額を減免することで、空き家の取り壊しを支援する制度があったり、売却先や再利用方法について相談に乗ってくれたりするなど、空き家所有者を支援する自治体も増えているので、お住まいの自治体へ相談してみることをおすすめします。

空き家問題-放置していても固定資産税だけが積み重なる

(画像/PIXTA)

■「特定空き家に指定される空き家の条件」

○そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
部材の破損や基礎に不同沈下があり、建物に著しい傾きが見られる。ほかにも基礎の破損や変形、基礎と土台のずれ、土台の腐食や破損などが該当する。

○そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
建築物の破損が原因で、アスベストの飛散、排水の流出による汚臭が発生している。またはごみなどの放置や不法投棄が原因の汚臭、多数のネズミなどが発生し、地域住民の日常生活に支障が出ている場合。

○適切な管理が行なわれていないことにより著しく景観を損なっている状態
景観法で制定されている既存のルールに著しく適合しない場合や、屋根、外壁などの汚物や落書きがそのまま放置されていたり、立ち木などが建物の全面を覆う程度まで繁茂していたりする場合。

○その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
立ち木の倒壊や枝折れなどにより、近隣道路や家屋の敷地に枝などが大量に散らばって日常生活の妨げになっている、ほかにも空き家に住みついた動物の鳴き声や糞尿などの衛生面、空き家への不法侵入などにより犯罪の温床になっているなどの治安面で、不適切だと判断される場合。

参照:国土交通省「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針

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【空き家問題】どのような対策がある?

防犯・防災面や経済機会の損失、固定資産税や維持管理にかかる費用など、空き家の放置は多くのリスクとコストをともないます。しかし、経済的な理由などで、空き家をすぐに解体するのが難しい場合もあるでしょう。そこで以下では、空き家問題に有効な対策を紹介します。

売却や不動産会社による買取を検討する

空き家には管理の手間や税金など、さまざまなコストが発生しますが、売却すればこれらは不要になります。

空き家を所有している限り、固定資産税や都市計画税を支払う必要があります。しかも前述のとおり、適切に管理されないまま放置されると、さまざまなリスクが発生しますし、特定空家等に指定されると、税金の軽減措置が受けられなくなります。

空き家を売却したり、不動産会社に買い取ってもらったりすれば、税金を支払う必要はなくなり、当然ながら費用がかかる管理も不要となります。売却や不動産会社による買取の依頼は、空き家の対策・活用方法のなかでもリスクが低い手段の一つです。

売却や不動産会社による買い取りの際は、複数の不動産会社へ一度に査定を依頼できる一括査定を活用しましょう。複数の不動産会社にアプローチすることで、売却や買取がスピーディーに進められるだけでなく、査定額や対応力などを客観的に比べやすくなるので、より理想に近い不動産会社を見つけられるでしょう。ただ、買い取りの場合、相場よりも安い売却価格になるケースが多いことは、覚えておく必要があります。

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住宅販売イメージ

(写真/PIXTA)

空き家を賃貸に出す

所有する空き家の建物自体が比較的新しかったり、恵まれた立地にあったりするなら、賃貸物件にして家賃収入を得るという方法もあります。売却する場合は空き家=資産を手放すことになりますが、賃貸物件へ転換すれば、資産を保有し続けることができます。将来、自分や子どもたちが住むことも可能でしょう。

また、空き家をそのまま放置すると、毎年固定資産税が発生しますが、家賃収入があれば支払いで悩むことも減るでしょう。

築年数が経過して老朽化した物件や、現在の耐震基準にそぐわない建物でも、適切に修繕・リフォームすることで、家賃収入を得る物件に生まれ変わらせることができる場合もあります。収益物件にすることで、毎月の家賃収入から、税金や将来の修繕費を捻出できる可能性もあるでしょう。もちろん空き家の状態によって、どの程度のリフォームが必要になるのかは違うので、見極めることが必要です。

また、都心部のように人口集積性があり、賃貸の需要が見込めるエリアかどうかも、成功のカギをにぎります。賃貸需要が少ないエリアでは、入居者を見つけるのも一苦労ですし、長い目で見ると退去者が出た場合、次の入居者が見つかるまで空室期間が生じ、その間は家賃収入がゼロになってしまいます。もちろん都心部だとしても需要が高い分、供給量も豊富になることが多いので、競合に勝てるような工夫が必要です。

多くの場合、リフォーム費用がネックになるので、どのように空き家を活用していきたいのか、コスト相談も含めてプロである不動産会社に相談してみるのが、最もリスクを抑える方法になります。賃貸での有用性、メリット、デメリットなどを相談して決めることが大切です。

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(写真/PIXTA)

空き家管理サービスの活用

空き家の管理について、自身で行なうのが難しいのであれば、空き家管理サービスも検討してみましょう。

現在、さまざまな空き家管理サービスを展開しているNPOや民間企業が増えています。例えば、毎月1回外部から建物を目視点検し、写真つきの報告を行なうサービスを行なっている会社や、マンションの空き家専門の不動産会社など独自の強みを持つ企業、物件に合わせた活用法のアドバイスや、ややこしい相続・税金についても相談できるサービスを展開している会社などです。

不動産イメージ

(写真/PIXTA)

空き家バンクへの登録

空き家バンクとは、空き家の所有者と空き家の利用希望者をマッチングする仕組みで、自治体や自治体から委任を受けた団体によって運営されているサービスです。

空き家バンクでは、地元の人から広報誌やホームページなどで空き家情報を広く募集し、移住・交流希望者向けの物件情報を収集して提供しています。

空き家バンク利用者側のメリットとしては、相場よりも安く買いやすい点や、見知らぬ土地に移住を決意する際、不安要素となる公共施設や買い物環境、気候などの生活情報についても、自治体の職員が答えてくれる点が挙げられます。

また、民間の不動産会社とは違い、その地域への定住を促し、エリアや自治体の関係人口増の推進を狙いとしている仕組みのため、空き家バンク利用者側の真剣さも問われるでしょう。

空き家所有者にとっては、高値での売却はしにくいものの、空き家の管理から解放されるというメリットがあります。

空き家情報バンクイメージ

(写真/PIXTA)

解体して土地活用、民泊なども

あまりに建物が老朽化している、現在の法律に適合していないなどの理由で、修繕に多大なコストがかかってしまう場合は、思い切って解体し、更地にして土地活用する手もあります。エリアのニーズに合わせて駐車場にしたり、倉庫スペース、コンビニチェーンに賃貸したりすることなどが考えられるでしょう。

また、解体して更地にしたあと、民泊などの賃貸展開を行なう人もいます。その場合は、該当する建物の土地が再建築不可の土地ではないか確認しましょう。再建築不可の土地の場合、更地にしたあと建物が建てられず、売れなかったり価格が下がったりしてしまうこともあります。

いずれにしても、税金との兼ね合いやニーズの正確な把握など、専門的な知識が必要になることが多いので、不動産会社に相談するのがおすすめです。

なお、どうしても賃貸や売却がしにくいという場合、寄贈という形で自治体に寄付することもできます。しかし、積極的には受け入れてくれない自治体が多いようです。理由としては、固定資産税などの税収が減ること、寄付された家や土地の管理も自治体が請け負うことになり、コストがかかることが挙げられます。

寄付を受けてくれる例として挙げられるのは、建物を解体し、防災倉庫置場やポケットパーク(住宅街の小規模な公園)など、住民の交流場所として活用できる場合です。詳しくは自治体の担当課に相談しましょう。

なお、自治体によっては、空き家の解体費用に対する補助制度を設けているところもあります。東京都では23区を中心に多くの自治体で、危険度の高い空き家を解体する費用の補助が行なわれています。

例えば、文京区の「空家等対策事業」では、管理不全で危険な空き家のうち、跡地を行政利用できると判断された物件について、200万円を上限に解体費用の補助を受けられる仕組みとなっています。解体後の土地は原則10年間、無償で区が行政利用することが要件になっている点は注意が必要です。

文京区のように、解体費用の補助を受けるにあたって一定の要件が設定されているケースも多いため、事前に空き家がある地域の自治体に確認するとよいでしょう。

売却査定する

コインパーキング

(写真/PIXTA)

まとめ

  • 地方を中心として、全国的に空き家問題が深刻化している
  • 空き家が増えると、防犯・防災性の低下や経済的な機会損失といった社会的リスクのほか、所有者にとっては納めるべき税金が増えてしまうリスクがある
  • 空き家問題への対策としては、売却や不動産会社への買取依頼、賃貸物件としての活用、空き家管理サービス・空き家バンクの活用などが挙げられる
  • 建物修繕に大きなコストがかかる場合には、思い切って解体したうえで更地を活用したり、民泊として展開したりする方法も有効

取材協力/杉山 勝さん NPO法人 空き家解決センター 代表
監修/弁護士 横山宗祐さん
イラスト/タバタ画房

●取材協力
杉山 勝さん

NPO法人 空き家解決センター 代表
●監修
弁護士 横山宗祐さん

●構成・取材・文/山口俊介
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