新しいマイホームに住み替えたり、相続したりで、住まなくなった住宅ができたとき、売るのがいいのか、貸すのがいいのか? 何を決め手に決めればよいのか、プロに聞いてみた。
売るのと貸すのとでは、家を手放すのか持ち続けるのか、売って現金化するのか賃貸収入を得るのか、といった違いがある。つまり、所有者の意向によって選択が分かれるわけだ。
注意したいのは、家を貸すことだけが賃貸収入を得る方法ではない点。
「積極的に不動産投資をしたい場合、所有物件を貸すだけでなく、売却して現金化し、より投資に向いている不動産を購入するという選択肢もあります」(久谷さん)
郊外の一戸建ての場合、それほど高い賃料収入が得られないことも多い。きちんと投資を考えるなら、駅近の共同住宅に買い替えることなども選択肢になる。
【売るほうが向いている場合】
【貸すほうが向いている場合】
次に、それぞれの収支を計算しよう。それにはまず、不動産会社に売却価格と賃料の査定を依頼する必要がある。できれば、10年程度の長期的なレンジで、後で説明する「所得税や住民税も含めて試算」したい。税務署や無料の税務相談などで税額を確認する方法もある。
まず、売ったときに売却代金が入ってくる。一方で、仲介手数料をはじめとした支出もある。売却して利益が出れば譲渡所得に対して税金がかかるが、居住用の不動産なら3000万円特別控除※が使えるので、実際に課税されるケースは多くはないだろう。
※居住用財産(不動産)を譲渡して得た譲渡所得から3000万円まで控除できる特例
※一戸建ての場合は、測量費用や建物の解体費用がかかる場合もある
貸す場合は、入居者からの礼金や賃料・共益費が入ってくるが、支出も多い。賃料がそのまま収入になるわけではないので、甘く考えるのは危険。そのまま貸すわけにもいかないので、リフォーム費用で初年度は赤字になるといったことも。
さらに、仕事をもちながら不動産事業をする人の場合は、給与所得などに不動産所得が加わるため、税率が上がってしまい、納める税金が想定以上に増える場合もある。また「敷金や礼金をゼロゼロにする場合、入居時のハードルが低い分、更新時に退去する可能性も高くなる傾向があります。その際の募集でリフォーム費用や仲介手数料などがかさみ、利益が想定したより少ないということもあります」(久谷さん)
1.初期費用
2.維持運用費用
3.不動産会社に払う費用
4.不動産所得にかかる税金
売るか貸すかは、それぞれの収支だけでなく、自分たちの意向も明確にしておくことが大切。売ってしまうと再利用はできないし、貸す以上は大家業をする覚悟も必要。いずれにせよ、適切な助言をしてくれる不動産会社を選ぶことが、大きなカギになるだろう。
【アドバイスしてくれた専門家】
相続・不動産にかかわる相談業務および、実行支援業務を行う、ファイナンシャル・プランナー