憧れの注文住宅を建てるにあたり、はじめに考えるべきことは、暮らしの希望から理想の家を思い描くことだ。そこで、家族で理想の家を建てるためのファーストステップ「家族の希望の整理方法」を紹介する。家の希望を挙げる際の項目や、優先順位のつけ方など参考にしてほしい。
理想の家とはどんな家かを考える際に必要なのは、デザインや工法などの前に、『家族全員で』どのように暮らしたいかを話し合うこと。家は家族の暮らしの場になるだけに、家族全員が納得できる家が理想の家だからだ。最初は手探りで進む注文住宅の家づくりは、テーマを決めることがとても大切だが、中心になるのは『家族の暮らし』と覚えておこう。
どんな家がいい?と家族に聞くだけでは、夢ばかり先行してしまってなかなか具体的にならないもの。また、理想の家はそれぞれ異なるだろう。
例えば、家に求めるもの一つとっても、デザインやインテリアなどの見た目、収納や動線などの機能性、家族が集うリビングの居心地にこだわりたいなどさまざま。特に夫婦の場合、異なる生活環境で長く暮らしていたことから家に対する考え方も違う。暮らしの希望を明らかにするには、通勤・通学や食料品や日用品の買い物、子どもの年齢、趣味など、できる限り細かな項目をつくって話し合ってみよう。
現在の暮らしと比べてみることも理想の家を考えるためにはオススメ。比較対象がある分、より具体的な意見が出てきやすいからだ。話す際は、現在の住まいの「どんな点が気に入っているか」と、「どんな点に不満があるか」を分けて考えてほしい。気に入っている点はそのまま理想の家の希望に、不満点は解消するためのアイデアになる。また、暮らしの希望だけでなく、家で仕事をするから書斎が必要、リビングで宿題をさせたいから子ども部屋は小さくても良いなど、具体的なプランニングの参考になる意見が出てきやすい。
大切なのはできるだけ子どもも家づくりに参加させること。小さいうちは、「どうせわからないから」などと考えてしまいがちだが、子どもにとってはこれから育っていく環境。しっかり説明して家族会議に参加してもらおう。子どもの年齢によるが、より家族や家への帰属意識が強まる。
家族間のコミュニケーションが深まるだけでなく、子どもから将来なりたい姿を聞けたり、家での暮らし方を真剣に考えたりするきっかけになるかもしれない。できるだけわかりやすくどんな家に住みたいのか、何が必要なのか聞いてみてほしい。思いもよらない意見で突破口が開けることもある。
ある程度家への希望が出そろったら、こだわりたい、実現したい希望を並べてみよう。親子各々で出すことでより『家族の理想の家』が具体的になってくる。そこからこだわりたい順番に優先順位をつけて整理してみよう。絶対に譲れないものと削除していいものが分けられる。その選定基準として、「優先順位が一番のものだけはお互いに譲る」などルールを決めておけば、気持ちよく話し合いができるはずだ。
わたし | 庭が欲しい |
---|---|
妻 | 通勤、通学に便利な駅、沿線の近くが良い |
息子 | ペットを飼いたい |
娘 | 一人部屋が欲しい |
家族の暮らしに対する希望の整理が終わり、注文住宅への専門知識がない場合、住宅情報誌やライフスタイル誌などを参考に情報収集してみよう。きっと今までよりも明確な基準で情報が収集できるはず。家族全員が満足できる、夢を描ける家づくりが注文住宅の醍醐味なのだ。
長い目で見た場合、家族構成やライフスタイル変化を想定しておくことも大切だ。考え方の一つが、子どもがいる場合、小学校5年生くらいから独立するまでの「5年ごと」の変化を想像すること。そのくらいのスパンで子どもの成長とともに家族全員の暮らし方が変わってくるからだ。
例えば先を見越して、子ども部屋の一部屋を二つにできるようなプランにしたり、子どもが独立した後は広い部屋に戻して夫婦の趣味部屋にしたりする想定があれば、そのための配線や窓、壁の配置などの準備もできる。
昨今の家づくりで一般的になってきた多用途に使えるフリースペースも考えられるだろう。例えばファミリークローゼットやファミリーライブラリーなど、共用の空間にすれば、家族で服や本を共用できたり、親が服を選んだり着替えたりしながら子どもの身支度を手伝ったりなど、自由度が高く多用途に使える。将来子どもが独立したときも、居室にできたり趣味に使えたりと、長く使い勝手の良い家になる。
家の修繕費用を抑えたい場合は、メンテナンスがしやすく、高耐久の家を指向したり、ランニングコストを抑えたいのならば省エネ設備を多用したりするなど、長期的なお金の面も考えておきたい。将来のために用意しておきたい教育費用は、子どもの人数や、どんな教育を受けさせたいかによって異なる。また、家の修繕費用としていつまでにいくらくらい用意しておくべきかは家の規模、使用する建材や設備によっても異なる。家の予算を組む際に、毎月のローン返済金額のほかにどのくらいの貯金や出費を想定しておけば良いか、金融機関やFPなどに相談してみるのも手だ。
さまざまなスタイルや暮らしにフィットする、自由な発想で建てられる。それが注文住宅の最大の魅力。長期的な視点で家族と話し合い、理想の家を想い描いてほしい。