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不動産売却後の確定申告の流れ。申請時期や必要書類、手続きを解説/不動産売却マニュアル#21

不動産売却後の確定申告の流れ。申請時期や必要書類、手続きを解説/不動産売却マニュアル#21

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マンションや土地、戸建などの不動産を売却したときの税金は、給与などほかの所得とは切り離して課税される(これを分離課税という。「不動産売却にかかる税金」を参照)。そのため、得をしたときには、確定申告の手続きが必要だ。手続きの仕方を具体的に見ていこう。

売却した翌年の申告時期に確定申告する

売却した翌年の2月16日~3月15日が申告期間

不動産を売却したときにかかるのは所得税・復興特別所得税と住民税だ。このうち確定申告が必要なのは所得税で、住民税は所得税の申告に基づいて翌年度分に課税されることになる。

所得税の申告は不動産を売却した翌年に手続きする。申告時期は毎年2月16日~3月15日と決められており、現在の住所地を管轄する税務署に申告が必要だ。

申告方法は所定の申告書に必要事項を記入し、税務署の窓口に直接提出するのが一般的。とはいえ申告期間は約1カ月しかなく、期限が近付くと税務署の窓口が混雑する。忙しい平日に手続きするのが難しい場合も少なくないだろう。

そこで窓口での手続き以外に、郵送による申告書の送付や、税務署に設置されている時間外文書収受箱への投函、さらに電子申告・納税システム(e-tax)による申告という方法も用意されている。

申告書は税務署のほかインターネットでも入手できる

申告に必要な申告書は、最寄りの税務署に行けば手に入れることができる。ただし申告書は毎年その年の分が用意されるので、あまり早い時期に行っても配布されていないことがあるので注意しよう。申告する年が明けたころに行けば、配布が始まっているはずだ。

あるいは国税庁のホームページに「確定申告書作成コーナー」があり、パソコンで必要項目を入力することで申告書を作成することもできる。作成した申告書をプリントアウトすれば、通常の申告書として税務署に提出できるほか、e-taxによる電子申告にも利用可能だ。

この確定申告書作成コーナーはタブレット端末でも利用できる。

e-taxを利用するには事前の準備が必要

e-taxを利用するには、電子証明書を取得して電子申告等開始届出書を税務署に提出し、利用者識別番号を取得する必要がある。電子証明書とはインターネット上で本人確認をするのに必要なもので、いくつかの発行機関が扱っているが、代表的なのは市区町村が交付するマイナンバーカードだ。

利用者識別番号を取得したら、e-taxソフトをパソコンにインストールして電子証明書の登録など初期登録を行い、申告書データを作成する。e-taxソフトはe-taxのホームページからダウンロードできる。

なお、e-taxを利用すると源泉徴収票などの書類の提出を省略できるほか、申告期間中は24時間提出が可能だ。また譲渡損失の繰越控除などで税金の還付を受ける場合に、通常より早く3週間程度で還付が受けられるメリットもある。

確定申告に必要な添付書類と納税方法を確認しよう

譲渡所得の内訳書は売却後に税務署から送られてくる

不動産を売却して確定申告するときには、申告書のほかにもいくつかの書類を添付する必要がある。主なものは以下のとおりだ。

●譲渡所得の内訳書
譲渡した不動産の概要や売却金額、支払った費用などを記載した書類。売却後に税務署から売主に送られてくるので、記入して確定申告書に添付する。

●譲渡時の書類
売却したときの売買契約書のコピーや売買代金受領書のコピー、固定資産税精算書のコピー、仲介手数料などの領収書のコピーなど。

●取得時の資料
売却した不動産を取得したときの売買契約書、固定資産税精算書、仲介手数料の領収書などのコピー、増改築時の請負契約書や領収書のコピーなど。

●売却した土地・建物の全部事項証明書
法務局(登記所)で入手できる。「3000万円控除」「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」の申告では原本の提出は不要。

●戸籍の附票
「3000万円控除」など、各種特例を利用するときに提出する。ただし売却前の住民票の住所と売却した不動産の所在地が同じ場合は不要。

納付時期は申告時期と同じ2月16日から3月15日まで

確定申告の結果、納税が必要になった場合は、申告時期と同じ2月16日~3月15日の期間中に税務署か金融機関で納税する。ただし、申告の際に振替納税の手続きをすれば、4月20日前後に指定の口座から自動引き落としとなる。

納付期限までに全額を納税するのが難しい場合は、延納することもできる。納付期限までに税額の2分の1以上を納付し、残りは5月31日までに納付すればよい。ただし、申告の際に申告書に延納の届け出を記載しなければならず、延納中は年1.7%の利子税が加算される。

税金の還付を受ける場合は、申告書に振込口座を記入すれば還付される。指定口座に還付金が振り込まれるのは通常、その年の4月上旬~5月上旬ごろだ。

なお、住民税は自営業者など普通徴収の場合、申告した年の5月以降に市区町村から納付書が送られてくるので、まとめて納税するか年4回に分けて納税する。給与所得者の特別徴収の場合は、勤務先が毎月の給与から天引きして納付する仕組みだ。

●監修
税理士法人タクトコンサルティング

構成・取材・文/大森広司

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不動産売却マニュアル

●構成・取材・文/大森広司
住宅系シンクタンク・オイコス代表。住宅ジャーナリスト。SUUMOなど多くの住宅系メディアで取材・執筆などを行う
●監修/税理士法人タクトコンサルティング
資産税コンサルティングの草分けとして、長年にわたり、個人の相続・譲渡や贈与など、法人の事業承継、組織再編、M&Aなど、個人・法人の資産税に関わるコンサルティングを手がけている。
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