大きくなったら住みたかった街「大宮」で、思い出を重ねて暮らす

著: かしみん 

「大きくなったら大宮に住む」

小学1年生のころからの夢は、ケーキ屋さんでも宇宙飛行士でもなく、大宮に住むことだった。しかも、ただの大宮ではなく、「東口にある氷川神社の参道か、大宮公園の近くがいい」というこだわりよう。

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そして、幼いころからの夢は22歳にしてかなった。かなえてくれたのは、付き合っていた彼氏。かなったといっても、成り行きで住むことになったのではなく、私がわがままを言って“かなえてもらった”んだけれども。憧れの大宮での生活は、同棲という形でスタートした。

なぜこれほどまで大宮(それも氷川神社の参道か大宮公園らへん)にこだわっていたのだろう。明確な理由は、今でも分からないけれど、ただ、父との思い出が影響していることは確かである。

私のルーツは大宮にあり

私は父子家庭で育った。5歳で両親が離婚し、いろいろあって父と住むことになった。家族は、父のほかに妹がひとり。二世帯住宅になっていた実家は、下の階では祖父と祖母が暮らしていた。そして、家から歩いて10分以内の場所には、父の妹(つまり叔母にあたる)と夫(叔父)5歳年下のいとこが住んでいた。

自慢ではないが、母がいなくて「さみしい」と思ったことは一度もない。なぜなら、父をはじめとして祖父や祖母、叔母、叔父、みんなの愛情をふんだんに受けて育ったからだ。彼らは全員が私と妹の父であり、母だった。

祖父は、塾や歯医者、バイトに通う私を車でよく送り迎えしてくれた(たとえ、目的地が徒歩5分の場所にあっても、だ)。祖母は、毎日食事をつくり、洗濯をしてくれた。叔母は、学校の授業参観には必ず出席し、宿題をやっていなかったら叱って、勉強を教えてくれた。叔父は、幼いころによく遊びに連れ出してくれた。

そして、自営業で大工だった父は、仕事が休みである毎週末、必ずどこかへ私と妹を連れ出した。「お母さんがいなくてもさみしい思いはさせまい」とよく父は言っていた。それが活力となっていたから、サボることなく土日どちらも連れ出してくれたのだろう。

私たち親子が定番にしていた遊び場のひとつが、大宮にある氷川神社と大宮公園だった。大宮に出かけることを知ったときには、お気に入りだった赤いチェックのワンピースを着るのがマイルールだった。

実家があったのは、大宮からJR埼京線で2駅の「与野本町」という駅。与野本町はとてもいいところだった。埼京線の快速電車は停まるし、高架下には薬局の「マツモトキヨシ」やカラオケの「ビッグエコー」がある。「千年の宴」や「日本海庄や」などの居酒屋チェーン店もあれば、サービスの質は負けまいと個人経営の居酒屋が立ち並ぶ。都会というわけではないが、生活に不便はなく暮らしやすい街だった。

それでも、将来は大宮で暮らしたいと思っていた。

そして、22歳の社会人になるタイミングになって、いよいよ転機がやってきた。当時2年間付き合っていた彼氏と、同棲する話が出たのだ。同棲の許可を得るために、父の好きなアサヒスーパードライを1ケース持ち、彼氏とあいさつに行った。

「大丈夫?やっていける?」
「大丈夫、ふたりでがんばります」
「さみしくなったら、いつでも帰ってきなね」
「しばらくは、帰ってこないかも(笑)」

実家からはたった2駅の距離だったけれども、父が心配しているのは大いに伝わってきた。こうして私たちは、憧れた大宮で同棲生活をスタートさせた。

憧れた街で始めた同棲生活

私たちが借りた棲家は、氷川神社と大宮公園のすぐ裏だった。大宮といっても、最寄駅は東武野田線の北大宮駅になる。しかし、大宮駅東口から歩いて15分で帰宅できるので、大宮と名乗ってもいいだろう。

部屋は、これから始まる同棲生活に期待を込めて、やたらとおしゃれな1DKの家賃10万4000円(共益費・駐車場代込み)のデザイナーズマンションの一室を借りた。北大宮周辺の家賃相場を調べてみると1DKで6万5000円ほどだったが、内見したときにカウンターキッチンに一目ぼれし、即決した(当時、料理はしなかったのだが)。今思えば、背伸びをしすぎた家賃だったかなと思う。

しかし、利便性は高く「ここに住んでよかった」と何回も思った。大宮駅と北大宮駅は、東武野田線で1駅。大宮に出れば新幹線やJR在来線・私鉄各線など14路線も乗り入れているため、交通利便性はかなり高いといえるだろう。

また、北大宮駅の隣には朝6時〜深夜1時まで営業しているスーパー「東武ストア」がある。仕事帰りに東武ストアに寄って、のどごし生2本と安くなった総菜を買い、彼氏と家で「今日も1日お疲れさまでしたパーティー」をするのが日課だった。

週末になれば「今週も1週間お疲れさまでしたパーティー」と称し、大宮公園と氷川神社を散歩しながら大宮の居酒屋に向かった。大宮公園と氷川神社を歩くときは、ときどき父との大宮での思い出に頭を巡らしていた。

父との思い出が詰まった大宮

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記憶の中にある父との思い出は、まず氷川参道からスタートする。氷川神社と大宮公園に行くためには、氷川参道を通る必要があるからだ。氷川参道は南北に約2kmも続いていて、日本でいちばん長い参道で、ケヤキを中心とした700本の木に囲まれている。

参道沿いには、カレーの香りが立ち込めるおしゃれな喫茶店や、JAZZが流れるカフェなどがあるなかで、古き良きお店もたくさんある。例えば、店内にレコードがずらりと並ぶ「スタアレコード」も味があっていい。

手焼きせんべいを売っている「小林屋」では、名物の岩せんべいを購入して、食べながら氷川参道を散歩していた。

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ちなみにこの岩せんべい、硬すぎて食べるのを断念したこともあるほど。

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休日になると多くの人でにぎわう「氷川だんご」では、父がみたらしだんごを買ってくれて、妹とふたりで食べたもんだ。

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そんな氷川参道の終点にあるのが、氷川神社。

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JR大宮駅東口から歩いて10分ほどの場所にある氷川神社は、関東に広がる280数社の氷川神社の総本山だ。2000年以上もの歴史をもつといわれているので、古くから大宮の街を見守ってきたのだろう。境内は広く、自然がとにかくたくさん。パワースポットとしても有名で、日々多くの人たちでにぎわう。

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それから、氷川神社と併設する形になっているのが「大宮公園」。公園といっても、プロ野球の公式戦でも使われる野球場やNACK5スタジアム(サッカー場)、体育館、水泳場などまであるから驚きだ。

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父と大宮公園に来たときは、決まって児童スポーツランドで遊んだ。

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昭和感が漂う遊園地で、乗り物はボロボロなものばかり。思わず「これ、動くのか?」と不安を感じるが、しっかりと子どもたちを楽しませる任務をまっとうしているのでご安心いただきたい。妹と遊園地の上にある飛行機の乗り物に乗りながら、下で私たちを見ている父に決まって手を振った。

そして、大宮公園での思い出は動物園なしには語れない。

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大宮公園にある小動物園は無料でありながらたくさんの動物たちが暮らしている。

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フラミンゴをはじめとしたさまざまな鳥たちが間近で見られたり、

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激しく動き回るサルたちが見られたり、

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ほかにも、カピバラやリスザル、ミニブタ、フクロウなどが見られたり。

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そのなかでも子どもたちのヒーローだったのが、ツキノワグマ。人だかりで見えないと、父が肩車をしてくれたのを思い出した。

住んでみて見えてきた大宮のいいところ

実際に住んでみて見えてきた大宮のいいところもたくさんある。

大宮は駅の西と東でだいぶ違い、西口方面は高層ビルが立ち並ぶ都会的な顔、東口方面は昭和と平成が混じり合ったような下町の顔がある。私のお気に入りは、氷川神社と大宮公園がある東側だ。

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特に下町らしい雰囲気があるが、大宮の氷川参道までの道である「一の宮通り」。

この通りには、今ではあまり見かけない木造平屋造りの呉服店やサイクルショップがあり、そこだけまるで「サザエさん」の時代にタイプスリップしたかのよう。今にもお魚くわえた猫を裸足のサザエさんが追っかけそうだ。ほかにも、昔ながらの足袋屋さんや中華料理店なども並んでいる。

美容院やカフェも多く、猫カフェやハンドメイドの雑貨屋さんなんかもある。古着屋さんも多いので、通りには若者もたくさん。この通りにある「カフェエスト」のジェノベーゼパスタはオススメだ。

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一の宮通りは「こんなところにギタースクールなんてあったっけ?」「夜になると、イルミネーションが光るんだ」といったように、歩くたびに新しい発見がある。

酒好きの彼氏と私は、毎週末になると決まって大宮の居酒屋開拓に出かけているが、二人のお気に入りは、ウエストサイド通りを入ったところにたたずむ居酒屋、「なつかし家」。

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まるでその場所だけ時代が変わったようにレトロな店内は、なつかしいおもちゃや雑貨が飾られている。お店の中で特別感があるのが、ちゃぶ台の席。テーブルの上でおすわりしているキャラクターを鳴らすと店員がやってくる仕組みになっている。

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キンキンに冷えた生ビールは絶品。私はこの1杯のために生きているといっても過言ではない。うまい、うますぎる。

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なつかし家イチオシのメニューは「不思議じゃがバター」だ。じゃがいもをすりおろしたモチモチの生地の中に、チーズと明太子をたっぷりと入れて焼き上げている。これ、女性は絶対に好きなヤツ。とろけるチーズを見ているだけで、生ビール3杯はいけるだろう。ああ、大人って最高だ。

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「大宮」で思い出を重ねて暮らす

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父との思い出が詰まった大宮で、彼氏と多くの思い出を重ねてきた。父とよく似た、なんでも温かく包み込んでくれるようなやさしい彼氏は、夫に変わり、また新しい思い出をつくりながら暮らしている。そして未来は、まだ見ぬ新しい家族を迎えて、さらなる思い出を重ねていくことになるのだろう。

 

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著者:かしみん

かしみん

大宮だいすきっ子。散歩の時間と眠りにつく瞬間にしあわせを感じます。人生のBGMはサザンオールスターズ。とろけるチーズは飲みものだと思って生きています。

Twitter:@kashimin222