地元にいつか帰りたいですか? 「小田原」、そこは東京から一番近い田舎町

著: くいしん 

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このページを開いたあなたは、今、生まれた地元で暮らしていますか?

はたまた生まれた場所を離れ、東京や大阪や福岡といった都市で暮らしていますか?

僕は今、東京で暮らしています。


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20代前半のころ、都内で初めて就職した音楽雑誌出版社を辞めて、出身地である「神奈川県小田原市」に戻って実家に住んでいました。

仕事の内容はまさにこの記事のように文章を書く仕事でした。

憧れだった雑誌編集の仕事に就けたのについていけず、数年で辞めてしまって、当時は落ち込んでいました。

目の前にやるべき仕事はいくらでもあったにも関わらず会社を辞めたので「もう書き仕事をこの先やらせてもらう機会はないかもしれない」と思っていました。

今こうして文章を書く仕事をできているのは間違いなくあのころ、自分の生まれた小田原で充電して、再び東京へ出ていったストーリーがあるからだと感じます。

もしこれが、生まれた場所が東京から移動するのに何時間もかかる土地だったら、いちど地元に帰ってまた東京に出ていくという選択をできたかどうか、分かりません。

東京から近い、でも田舎。東京駅から続く東海道線で都内から下ってくると、そんな印象を受けるのが、筆者が生まれてから高校を卒業するまで住んでいた町、小田原です。


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東京から最も近い田舎町

生まれ育ち、18歳まで過ごした土地。高校を卒業してからのほとんどを東京で暮らしていても、色褪せることのない、特別な場所です。

そうとは言っても、僕は今、31歳。東京に住んでもう10年以上。さらにここ数年はローカルを中心に扱うウェブメディアの記者として、日本各地で取材しています。

東京にはそこそこ慣れて、親しみがあって、ずっと住んでいくことだってたぶんできる。

それでも、たまに「いつか地元の小田原に帰るのかな」とふと思うことがあります。そんな立場から今改めて、出生地である小田原の魅力をご紹介していこうと思います。


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小田原のランドマークと言えば小田原城

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小田原城のお堀のすぐそば。春は桜が咲き乱れる



東京とはほどよい距離感で周辺には観光地も多い

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東京駅から鈍行列車で約80分。新幹線を使えば、東京駅からたったの35分。ロマンスカーで新宿まで約70分。新宿湘南ラインを使えば渋谷駅まで66分、新宿駅まで71分で辿り着きます。

中学生のころから、小田急線の通った下北沢や新宿、はたまた渋谷や中目黒に買い物や遊びにたまにいくのが、週末の楽しみでした。

東京とのほどよい距離感を思うと「ど田舎」と呼べるほど田舎ではないかもしれないけれど、決して都会でもなく、穏やかな空気の流れている町です。


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小田原城近くの立て看板。日本橋からは85km

東京の手前には、横浜、湘南(茅ヶ崎や藤沢)、鎌倉があり、温泉地として栄える箱根は隣町。もう少し足を延ばして静岡に入れば、熱海や伊東、伊豆にも1時間以内で行けちゃいます。

1時間ほど車を走らせれば山梨に入るのもすぐで、富士山も近く、山中湖や河口湖は週末にふらっと遊びに行けるスポットです。



海、山、川に囲まれた小田原

冒頭に書いたように、いちど仕事を辞めて小田原に少し住んでいたころから、僕はしょっちゅう小田原に帰るようになりました。ここ数年は、毎月とは言わないまでも、年に10回近くは帰ってきているんじゃないかと思います。

その際、何をしているかというと、東京にいるときと同じように気の合う地元の仲間とお酒を飲むことは二番目の楽しみ。一番の目的は、海を見ることです。


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小田原の海

「神奈川の海を見ると、心が落ち着く」と気づいたのはここ数年、20代後半になってからでした。

小田原の海はもちろんなのですが、西湘バイパスを抜けて国道134号線をゆけば、七夕まつりで有名な平塚、サザンオールスターズ桑田さんの出身地である茅ヶ崎、藤沢、江ノ島、鎌倉、逗子と、ずっと海沿いをドライブできます。「それ、小田原じゃないじゃん」という声が聞こえてきそうですが、小田原人にとってそれらの地域はほとんど自分たちの地元と同じフィールドなんです。

個人的には小田原から湘南にかけての海が好きなのですが、小田原には山も川もあります。海、山、川が当たり前にそろっている小田原に育ったがゆえに、「海しかない」「山しかない」という地域に行くと、どこか物足りなさを感じてしまうというのが正直な心のうちだったりします。

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昔は地方の観光地に行くと「自然が豊かなんですよ〜」と言われても、「えっ、海ないじゃん!」「山ないじゃん!」と思っていました。これはある意味、小田原育ちの弊害かもしれません。



東京(江戸)のまちづくりは小田原を参考にされた

「歴史のある町に生まれ育った人は、自己肯定感が高く、自らの進む道を自らで切り拓いていくことができる」

これは僕がローカルメディアで、日本各地で取材をして、いろんな方にお話を聞くなかで感じたひとつの持論です。実際に同じようなことを言う人も多く、例えば高知県は坂本龍馬がいたことで、何か新しいことを始める際に応援されやすい風土があり、革新的なことが生まれやすいんです。

逆に「うちは歴史のない町だから。自分たちの町に誇りをもてないんだ」という声も聞いたことがあります。初めてそういうお話を聞いたときには「えっ、そんな感覚があるのか!」と思ったものですが、日本人にとって「生まれた場所の歴史」というのは案外、人の性格をつくる上で大きな影響を与えるようです。

遺跡や古文書によれば、小田原は人が住んでから1000年以上の歴史があるそうです。

戦国時代と言えば織田信長、豊臣秀吉、徳川家康が有名。豊臣秀吉が天下統一を果たす直前まで落とせなかったのが小田原城なんです。海と山に囲まれた地形は、戦国時代には「攻めるのが難しい」という要素にもなっていたんでしょう。


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小田原城の近くにある小田原合戦時の攻防図

小田原市には、東京にもある「荻窪」や「板橋」という地名がありますが、これらは小田原発祥と言われています。徳川幕府が江戸周辺を整備した際に小田原の町を参考にしたことが、地名の由来につながっている……という話は小田原の歴史好きなら誰もが知るところです。



文化的な資産も多い小田原

伊藤博文が過ごした別邸があった場所は「民法発祥の地」と呼ばれ、詩人・北原白秋が過ごした「木菟(みみずく)の家」もあり、坂口安吾も小田原で過ごした時期があります。

「小田原文学館」では上記の3名をはじめ、小田原にゆかりのある詩人や文学者たちの生涯や作品が紹介されています。

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2017年秋には、現代美術作家・杉本博司さんによって設立された「小田原文化財団」の「小田原文化財団 江之浦測候所」も開館したところで、今後の展開が楽しみです。



かまぼこが小田原の名産になったわけ

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「海、山、川がそろった小田原」と紹介しましたが、だからこそ小田原には海の幸・山の幸が豊富にあり、食には困りません。例えば実家では当たり前のように日々の食卓に並んでいたアジの開き。ほかの土地ではそうそう味わえるレベルのものではないことは上京後に知りました。実家に帰るたびに「アジの開きが美味い!」と唸ります。

また古くは小田原は、東海道五十三次のなかでも最大の難所である箱根の山を越えるときに人々が宿泊するために、宿場町としても栄えました。宿場町として栄えた町には何があるかというと、「お客さんを迎え入れる風土」が育つ。それもあってか、小田原は「おもてなし精神」を強くもった人・お店が多いように感じます。

例えば、小田原の名産品と言えば、かまぼこです。

小田原でかまぼこが名産になったのは、今のように交通が便利ではなかった江戸時代前後に、箱根へと新鮮な魚を運ぶことが難しかったため、魚の加工食品として選ばれたことがきっかけといわれています。「箱根の山を越える際に、魚を食べられるように」というおもてなし精神がこんなところにも発揮されているんじゃないかと思います。



小田原出身者が選ぶ有名な飲食店9選

かまぼこが名産になった理由だけでは少しさみしいので、食について、具体的にいくつか名店をご紹介します。

・守谷製パン店(パン)

「小田原の名店」と考えたときに真っ先に浮かぶのがこのお店。いわゆるパン屋さんです。都内の友人から「小田原に行くんだけど、どこでご飯を食べればいい?」と聞かれたら、これから紹介するお店を教えつつ、「帰りは守谷のパンに寄るのがおすすめ」と必ず伝えるほどです。あんぱんと甘食が有名で、筆者は半年に1度は食べています。

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・友栄(うなぎ)

ミシュラン一つ星。うなぎのなかでも希少種である「青うなぎ」を使ったうな重のお店。食通たちからは「関東一のうなぎ屋さん」と言われているそうで、アンジャッシュの渡部さんもよく訪れるお店なんだとか(渡部さんご自身がテレビで紹介していたことも)。予約必須のお店です。

・四季料理 右京(和食)

小田原城近くの住宅街の中にある上品な雰囲気をまとった和食屋さんが、ミシュラン一つ星を獲得したことでも有名な「右京」。「関西割烹小田原風」を掲げ、地元食材を数多く使いながらも関西の献立をベースにしたお料理は、多くの方に愛されています。店舗に併設されている「菓子舗 右京」の和菓子も人気です。

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・老舗の日本料理店「だるま」(和食・天ぷら)

右京と並んで小田原の和食の名店と言えばこちら。店舗の建物は国の有形文化財に指定されており、歴史を感じられるたたずまい。ひらめやいしだいなどたくさんの地魚が置いてあることも特徴。「少し時間が空いたので小田原駅近くでランチしたい」というときにおすすめで、箱根に温泉旅行に来た際に合わせて行くのもあり。

・一夜城 ヨロイヅカファーム(スイーツ・パン)

日本で一番有名なパティシエと言っても過言ではない、鎧塚俊彦さんのお店です。スイーツやパンが美味しいのはもちろんですが、山の上にあって景色がよいので、よく晴れた日には訪れるだけでしあわせな気分を味わえます。

・ポルト・イル・キャンティ(イタリアン)

東京・神奈川に多くの店舗がある「イタリア式食堂 キャンティ」の系列店。都内にもお店がたくさんあるので「キャンティ知ってるよ」という方もいるかもしれませんが、キャンティは店舗によって雰囲気がまったく違うことが特徴です。小田原には実は2店舗ありますが、こちらは市街地ではなくて、漁港のすぐ近くにあるほう。開放感があり、イタリアの風を感じられます。

・小田原ラーメンの代表格「いしとみ」(ラーメン)

小田原駅のお隣の鴨宮駅から徒歩10分ほどの場所にある、お昼時には行列ができるほど地元民に愛されている名店。三つ葉とゆずが香る醤油ラーメンベースのワンタンメンが人気です。車で小田原に訪れるラーメン好きにはぜひ立ち寄ってみて欲しいお店。

・ステーキハウス源(ステーキ)

ランチであれば1600円の「ステーキセット」「ステーキ丼セット」がおすすめ。カウンター席があるので、目の前の鉄板で焼いているところを見られます。駅から1kmほどと少し距離があるので、車があったら安心です。比較的リーズナブルに美味しいお肉が食べられるため、子連れのファミリーにも人気のお店。

・サカナキュイジーヌ・リョウ(居酒屋)

小田原駅周辺の居酒屋で、カップルにもおすすめのお店と言ったらこちら。その名のとおり、海の幸をお酒と一緒に楽しめます。結婚式の二次会に使われることもあるようなお店なので高級感が味わえるので、雰囲気を大切にしたい飲み会ではこちらのお店を選ぶべき。ランチの海鮮ちらしも有名です。


ザッと挙げただけでも、これだけ名店が出てきます。



小田原発祥のエナジードリンクもあります

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食のお話に合わせてご紹介したいのが、ご当地エナジードリンク「湘南ゴールドエナジー」。小田原の名産といえば、かまぼこに並んで名前が挙がってくるのが梅干しやみかんです。「湘南ゴールド」というのは、実はみかんの品種の名前。

温州みかんの中でも有名な品種である「今村温州」と、神奈川県西部で採れる「ゴールデンオレンジ」の交配によってつくられたのが、「湘南ゴールド」で、生産量が少ないことから「幻のオレンジ」と呼ばれることもあるんだとか。

湘南ゴールドエナジーは、湘南ゴールドのオレンジフレーバーが効いたエナジードリンクで、サーフィンや登山のお供にもピッタリ。小田原の飲食店では、湘南ゴールドエナジーを使ったカクテルやアルコールドリンクを見かけることもしばしばあります。




友人と海で話したこと

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冒頭で触れたように、仕事を辞めていちど小田原に戻ってきていたころ、友人と海を見に行ったことがあります。ふつうにストレートで大学を出ている人だったら、社会人になって数年目。僕はフリーター。

友人は「もう東京はやめて、ずっと小田原に住んだら?」と言いました。僕は「考えとくよ」とぶっきらぼうに適当な返事をしたと思います。

その後、また友人と会ったときには「俺はやっぱり東京行くわ」と伝えて再度上京し、今まで都内に住んでいます。

今度はずっと東京に住んでいられるのは、この時期があったからこそで、このころに地元の仲間や家族のことを本当に大切な存在なんだと思うことができたし、「小田原は自分にとってとても大切で特別な場所なんだ」と思うことができたからこそ、今があると思います。

「灯台もと暗し」ということわざがありますが、まさにそんな気分でした。灯台のもとに自分の大切にしている信じられるものがあると分かっているから、もっと遠くを目指して、がんばれる。




いつか、小田原に戻るときが来るのか

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この記事を書くために、改めてたくさん小田原のことを考えました。

本音の本音を言うと、僕はいつか小田原に帰ってまた住むのか、今はまだ分かりません。「ずっと東京で戦い続けたい」と思うこともあれば、「小田原に戻ってのんびりやりたいなあ」と思うこともあります。

ただ、ひとつだけ自信をもって言えることは、小田原は間違いなく、いい町です。

田舎でも都会でもなく、東京との距離感はちょうどいい。海と山と川があって、歴史があって、食も豊富で、文化がある。周りの友人にはもちろん、この記事を読んでくれたあなたにも誇れる、住みやすくて、居心地のよい場所です。

「小田原は箱根の温泉にいくついでに寄るところ」という印象をもっている方も多いかもしれませんが、ぜひ一度、ゆっくり小田原に訪れてみて欲しいです。



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著者:くいしん

くいしん

フリーの編集・ライター・PR。灯台もと暮らし編集部。グビ会主宰。1985年、神奈川県小田原市生まれ。吉本興業の養成所・東京NSC、レコードショップ店員、音楽雑誌編集、webディレクターを経て、web編集者。

Twitter:@Quishin

ブログ:http://atticbooksellers.com/

編集:Huuuu inc.

イラスト:小野 一絵