私がこの街を好きな理由 〜松戸〜

著: SUUMOタウン編集部 

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その街に住んでいる(住んでいた)、住んだことはないけれど好きだ、という人にその街について語ってもらう本企画で、今回取材した街は「松戸」。

千葉県内では千葉市・船橋市・市川市に次いで人口の多い都市(2017年9月1日)である松戸ですが、ここ最近クリエイティブ系の若者が少しずつ集まっていることをご存じでしょうか? 今回は、そのムーブメントをきっかけとして実際に松戸で住み始めた方に、住んでみて感じた街の特徴や魅力、最近の松戸で見られる取り組みや変化ついて伺ってみました。

松戸に起きつつある変化

家賃や地価は東京に比べてお手ごろで、交通の便もよく、通勤・通学者のうち約4割が23区内に通うベッドタウンとして知られている(2015年10月「松戸市人口ビジョン松戸市総合戦略」より)、松戸。

なかでも今回ご紹介するのは、江戸川を挟んで東京に近接する常磐線松戸駅周辺の松戸地区。江戸と水戸を結ぶ重要な街道・水戸街道の宿場町としてにぎわった歴史のあるエリアで、交通の基点となる松戸駅には2015年に上野東京ラインが開通し、東京駅までの所要時間は9分短縮され最短24分で結ばれるようになりました。


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▲開放感あふれる江戸川の河川敷


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▲西口のペデストリアンデッキから伊勢丹方面を望む


歴史もあり交通もますます便利になった松戸ですが、都内に住む30〜50代の男女数人にそのイメージを聞いてみると、

「目立つ特徴が思いつかない」
「駅前はチェーン店ばっかり」

というような、やや残念とも思える声も……。

さらに、ライバルとして引き合いに出されることもある柏は、2005年のつくばエクスプレス開通にともない再開発も進み、SUUMOの「住みたい街ランキング2017」では2016年の64位から34位へランクアップ。対する松戸は残念ながら100位圏外。条件は悪くないはずなのに、存在感がいまいちないのです。

ところが、そんな松戸にここ数年、古民家などを利用したしゃれたショップやアトリエ、コミュニティースペースなど、新たなスポットが次々と出現しています。クリエイティブ系の若者や外国人旅行者の姿もちらほら見かけるようになりました。今、松戸にいったい何が起きているのでしょう?

きっかけは、まちづくりプロジェクト

この流れをつくり出したのが、民間企業「まちづクリエイティブ」による「MAD City」という、まちづくりプロジェクトです。

2010年に始まったこのプロジェクトの中核は、拠点のオフィス兼イベントスペース『MAD City Gallery』を中心に半径500mの使われていない空き家を発掘し、家主と交渉のうえ、リノベーション可能物件としてクリエイティブ層を誘致して貸し出すというもの。クリエイターたちの活動により、コミュニティを活性化させようという狙いがあります。

この取り組みにより、デザイナー・現代アーティスト・フードコーディネーター・ダンサー・建築家・カフェオーナーなどなど、2017年9月までに延べ100にも及ぶ個性豊かなクリエイターたちが松戸に集まってきたといいます。

松戸に引越してきた方が住んでみて感じたこと

今回は実際にMAD Cityをきっかけに引越してきた方に、松戸の街について伺いました。お話を聞いたのは、松戸市内50カ所で民泊サービスを展開する「NOMAD(LM TOKYO株式会社)」の山本真衣子さんです。


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▲2016年9月に松戸に引越してきた山本真衣子さん


「会社が松戸市で民泊事業を行うことになったのですが、自分でも住んでみなければ街の良さをゲストへ伝えられない、と思って引越しを決意しました。正直、実際に住んでみるまでは、松戸にプラスのイメージはもっていませんでした(笑)。典型的な郊外の街というイメージというか……」

という山本さん。実際に住んでみた感想は?

「松戸に住み始めてまず感じたことは、便利なのに、ほどよい規模でごちゃごちゃしすぎてないところが暮らしやすいということです。駅前にはスーパーやドラッグストア、ファストファッション店、雑貨店……生活に便利なお店はなんでもそろっています。もちろん、家賃の安さと都心へのアクセスの良さも魅力です。

また、民泊事業を運営する立場として見ても、いい街だと思いました。短期はもちろん、長期滞在のゲストの方にも便利な街だと評判です。

海外のゲストは『千葉』という地名にこだわらないんですよね。Airbnbなどから予約をしてくる海外のゲストは、千葉・松戸と検索しているわけではなく、都心・空港へのアクセスと価格のバランスに注目しているのです。都心では、うちと同じ条件の物件でも同じ価格で宿泊することは難しいですから」

Airbnbを利用するような旅慣れた外国人旅行者は、コストパフォーマンスにとてもシビアだと言われていますが、松戸のコストパフォーマンスのよさが彼らの合理性にもかなっていたというわけですね。


「ラーメン・寿司・しゃぶしゃぶ・たこやきなど、日本らしい飲食店も適度にそろっているのもよいです。私は食べることが好きなので、選択肢の幅が広いのもいいですね。特に私が気に入っているのは、風情のあるすてきなおそば屋さん『そば処 関やど』さんや、『Boulangerie La Masia』というパン屋さん。このパン屋さんのそばに弊社で扱っている民泊物件があるのでゲストにも紹介するのですが、あるフランスのゲストが、『フランスのパンよりおいしい!』と絶賛していたという話を聞きました。アパートの一室をリノベーションした店舗がすてきなベーグルショップ『Old Figaro Peoples + Bebop Bagel』さんもおいしいですよ」

松戸にはチェーン系の飲食店が多いというイメージをもっている方もいらっしゃるかもしれませんが、実際に歩いてみると、個性豊かな個人商店もたくさん発見できるので、開拓していく楽しみもありそうです。


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▲ゲストと住民のための交流スペース『ノマド宿』にて


「そして何より、松戸には面白い人が多く、いろんな人とつながやすいと感じています。松戸に来てMAD City関係のつながりもできて、地元のお店で個人商店主と仲良くなったり、どんどんつながりが増えていくのがうれしいんです」

山本さんのようにMAD Cityに近しい人でなければそんな機会もなかなかないのでは? と思う方もいるかもしれませんが、新旧の住民や外部の人が交流したり情報交換をできる機会や場所も増えているようです。


例えばNOMADでは、ゲストと住民のための交流スペース『ノマド宿』をオープン。宿泊者のための共有スペースでありながら、誰でも参加できる交流イベントなども積極的に開催し、新たな松戸の拠点として機能し始めています。

『ノマド宿』の隣は、平日は「松戸探検隊ひみつ堂」という観光案内所&無料休憩施設となっていて、地域の歴史や見どころ・おいしいお店などを教えてもらうことができ、またここは、土・日・月はインドネシア産スペシャルティ・コーヒーが飲めるカフェ『MAHAMERU』として営業中。時々イベントなども開催されているので、松戸の雰囲気を知りたい、松戸をもっと楽しみたいという方は、ぜひ足を運んでみてください。


DIYを楽しみたい人に魅力的な環境も

最近の松戸の変化としてもう一つ注目したいキーワードが、「リノベーション&DIY」です。

MAD CityではDIY可能な物件を仲介しているため、街なかで中古物件を自らリノベーションしたすてきなお店やギャラリーなどに出会うことができます。

『ノマド宿』も、旧水戸街道松戸宿に位置する築100年以上にもなるお米屋さんの建物にDIYで手を加えています。

「ゲストが交流できる場所をつくりたくて、古民家を探していたんです。近代的な建物よりも、日本らしさが感じられるほうがゲストの方も喜んでくださるかなと思って。そんなとき、ちょうどこの『旧・原田米店』の前を通りかかって、『今から見学したいんですけど』と、すぐに電話したんです(笑)。中庭と、100年もの歴史ある建物が気に入り、即申し込みました」(山本さん)


山本さんが自ら漆喰(しっくい)で壁を塗りなおし、見事に生まれ変わった米店を見て、大家さんもびっくり。「こんなにきれいになるなんて」と、気に入ってくださったそうです。


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▲大正初期に建てられた旧・原田米店の外観


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▲ノマド宿の広い玄関。奥の白壁は山本さん自ら塗り直した


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▲旧・原田米店の中庭


先ほども紹介した、「ノマド宿」と同じ棟に入居するカフェ『MAHAMERU』も、旧・原田米店のたたずまいを活かして、おしゃれでありながらもどことなくホッとする雰囲気をつくりあげています。インドネシア人オーナー、リノ・センレワさんは、「古いものを活用することに興味があったので、古民家で何かしたいと思っていました。DIYも大好きです。松戸の良さは、都会的な便利さがあるのに、古いものが残っていたり、田舎的な温かさがあるところ。この場を利用して、インドネシアと日本をつなげるような活動をしていきたい」と意気込みを熱く語ってくれました。


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▲『MAHAMERU』のリノ・センレワさん


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▲MAHAMERUのアイスコーヒーと千葉名産のピーナッツの茶菓子


DIY関係の情報交換イベントなどもときどき行われています。例えば今年1月には、まちづクリエイティブによる「DIY講座 部屋をお店にする方法を学ぼう!」という講座が開催されました。

こうしたイベントは、MAD Cityの入居者以外でも参加できるので、学習したり情報収集をしたりするのにぴったりかもしれません。昨今注目が高まるDIY。興味がある方は、松戸でDIYに触れてみてはいかがでしょうか。


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▲旧水戸街道(流山街道)に面したオフィス 兼イベントスペースの『MAD City Gallery』。「マキノ」という旧店舗名をあえて活かし、かつての雰囲気を残したままリノベーションしている。

民泊から学ぶご近所付き合いのヒント


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▲通称『MAD WALL』と呼ばれる松戸駅西口6号バイパス(岩瀬立体)の壁画。地元町会とまちづクリエイティブ、KOMPOSITIONというNPOが協力し、アーティストを招聘(しょうへい)してつくり上げた


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▲オランダのグラフィティアーティストの大御所ZEDZ(ゼッズ)氏により、西口公園のトイレもアートに変身


『ノマド宿』や『MAHAMERU』でお話を伺っていると、自治会の方が用事で立ち寄って世間話をしていったり、近所の主婦のみなさんがコーヒーを飲みに来たりと、上手に地域になじんでいるように見えます。


民泊に関してはメディアでトラブルが報じられることも多く、近隣との関係構築の難しさが課題になっていますが、NOMADでは、これまでに大きなトラブルは起こっていないといいます。どのように地元の方との信頼関係を築いていったのでしょうか。


「最近トラブルになっているのは、主にゴミの問題や騒音、見慣れない外国人の方が多いことに対する心配や不安です。そこで私たちは、ご近所の方とゲストとの双方と対面でのコミュニケーションを取ることで解決をしています。まずご近所の方にご挨拶に行き、『うるさかったり気になることがあったら言ってくださいね』と、連絡先をお知らせしておきます。問題があったときにどこに相談すればいいのかが分かっているだけで、近隣の方の不安も少なくなるのだと思います。

また、ゲストとは、駅で待ち合わせをしてお部屋まで案内し、日本の生活習慣やマナーなどを伝えています。騒音やゴミの問題などは、単純に文化の違いで分からないだけなので、それをきちんと伝えるのがホストの役目だと思っています。

住宅街にある一戸建ての民泊の隣の家主さんは、最初、言葉が通じない外国人が出入りすることを不安に思っていらしたようですが、ゲストと『おはようございます』『今日帰ります。ありがとうございました』などと挨拶を交わすうちに、だんだんと安心されていったようです。

また、その方は、ある風の強い日にゲストが洗濯バサミを使わずに洗濯物を干してるのを見て、ベランダ越しに洗濯バサミを貸してあげたそうなんです。『そうしたらその人、帰り際に“ありがとうございました”ってわざわざ洗濯バサミを返しにきてくれたんですよ』と、とてもうれしそうに話してくださいました。

民泊を利用するような旅慣れた外国人旅行者は、日本の文化を尊重している、礼儀正しい方も多いんですよ。民泊にはトラブルの話ばかりではなく、いい話もたくさんあるのだということをもっと知っていただきたいですね」(山本さん)


今時は敬遠する人も多い引越しの際の挨拶回りやご近所さんとの毎日の挨拶——。民泊でも引越しでも、こうした小さな積み重ねが信頼関係を築いていくことには変わりがないのかもしれません。

まちづくりのプロジェクトをきっかけとして徐々に変わりつつある街、「松戸」。今後どのような街になっていくのか、楽しみです。

(取材・鈴木さや香/撮影・中村宏覚)

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