神楽坂。
神楽坂は、東京都新宿区にある早稲田通りにおける大久保通り交差点から外堀通り交差点までの坂である。または東京都新宿区の行政地名である。
(神楽坂 - Wikipedia より)
人事異動で大手町で働くことになったときに「会社から近く、大好きな『美味しいもの』がたくさんある街に住みたいなあ」と、考えていた。そんなときにちょうど知人からすすめられた街が「神楽坂」だった。テレビや雑誌で見たことはあったけれど、行ったことはなかった。
まずは兎にも角にも行ってみよう、と仲の良い友人を昼食に誘って、そのついでにぶらぶら歩いてみることにした。飯田橋駅で降りて、写真や映像で見たことのある“あの有名な坂道”を登った。その坂道こそが神楽坂。日曜日だったので多くの人でにぎわっていた。思ったより緑が多いところだなあ、と思った。ちょっと小道に入ると、石畳の味わい深い道が現れる。
「神楽坂上」まで登ると親しみやすい商店街があった。なんとなく勝手に「高級そう」というイメージを持っていたけれど、街の全てがそういうわけではなく(そういう部分もあるのだろうと思うけれど)、落ち着いていてゆっくりと時間が流れている感じが気にいった。住みやすそう。そして何よりも気になる飲食店が街のいたるところにあった。その点が自分にとっては、住もうと思う決め手になった。
いくつか物件を見た中で気に入った築約10年、1Kで約20平方メートルのマンションを(一人暮らしだったので自分としては窮屈さを感じなかった)、当時7万3000円で借りることができた。最寄りの東京メトロ東西線「神楽坂駅」までも歩いて約5分ほど、勤め先の大手町までは乗り換えなしで10分ほどで到着。飯田橋駅までも歩いて10分ほどで行ける場所だった。家賃はもっと高いものだと思っていたので、意外と安いなと感じた(東京の中心部なら家賃は最低でも8万円以上かと勝手に思っていた……)。オートロック等はなかったけれど、別に男だし、いいかなと。部屋も、建物もきれい。日当たりも良かった。
約2年間住んだ後、転勤になってやむを得ず引越しすることになったけれど、今でもチャンスがあったらまた住みたいなあ、と思う。今日はそんな好きな街「神楽坂」について、2年間住んだ経験から、歩くことと、美味しいものと、本が好きな自分が、個人的に「贅沢だ」と思う神楽坂の過ごし方を朝~夜の時間に沿って考えてみたい。写真などで「神楽坂」の魅力が少しだけでも伝われば良いなあ、と思う。
個人的に自分が「神楽坂」で贅沢だと思う1日の過ごし方
◯朝~昼
天気の良い日は「ウォーキング」が楽しい。今の趣味であるウォーキングにはまったのも、この神楽坂に引越し、ある日「ためしに会社から歩いて家まで帰ってみよう」と歩いてみたのがきっかけ。
かつて花街であった名残を感じる、趣のある裏路地があったり、善國寺(神楽坂 毘沙門天)や赤城神社のような神社仏閣も朝に行くと清々しい。歩きながら辺りを見渡せば、小さいながらもこだわりを持ったお店がたくさんある。「こんなところに、こんな面白いお店があったんだ!」という小さな新しい発見が、歩くたびにあるのでわくわくする。だから、街探検や歩くのが好きという人におすすめの街なのかもしれない。
神楽坂周辺だけでなく、ちょっと気合を入れて歩けば「表参道」や「池袋」までだって1時間くらいで行くことができる。勤務先の「大手町」までも、神楽坂→飯田橋→九段下→竹橋、そこから皇居沿いを歩いて、1時間で行くことができていた。
歩いている途中に、ふと見つけたこんな細い道に入ってみたりするのが楽しい。
何があるのだろう、と見てみると小さなお店があったり……
街を歩いていればあっという間に時間が過ぎる。平日の10時になれば「かもめブックス」がオープンする(土曜日は10時、日曜日は11時にオープン)。「神楽坂駅」の矢来口から歩いてすぐにあるそのお店は、2014年の4月に惜しまれながら閉店となった「文鳥堂書店本店」の跡地で、神楽坂で約10年間、校閲専門の校正会社として営業していた「鴎来堂」が始めた新しい書店。
店内を見渡して、その日の気分や直感で気になった本をパッと買って、紅茶や美味しいコーヒーを飲みながらゆっくりと読もう。
「かもめブックス」の近くには、もともと新潮社の書庫だった建物を建築家の隈研吾さんのデザインでリノベーションを行い、2014年にオープンした商業施設「la kagu(ラカグ)」もある。ここの2Fでも本が買えるので、la kagu→かもめブックスというコースもおすすめしたい。
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◯昼〜夕方
本を読んでいるうちにお腹が空いてきたら、何か美味しいものを探しに再び外を歩こう。歩けば歩くほど、次々と美味しそうなお店が見つかる。しかも新しいお店も知らぬ間に次々とできていくから飽きることがない。和食に中華、洋食、何でもある。「あげづき」の南の島豚を使ったとにかく柔らかいカツにするか、「神楽坂 インド料理 想いの木」のカレーも捨てがたい。いつも前を通るとカレーの美味しそうな香りに思わず吸い込まれそうになる。アジア料理が好きなら、「オールドタイランド」の目玉焼きの大きいガパオライスも気に入るはず。商業施設の飯田橋サクラテラスには明太子の食べ放題で有名な「やまや」も入っている。「トラットリア グランボッカ」でポップオーバー&肉料理ってのも最高。「龍朋」のチャーハンもうまい。ほかにも挙げればきりがない。
悩んだ末に今回は久しぶりに「蕎麦」が食べたいなあと、好きなお店の1つ「東白庵かりべ」へ行くことにした。善國寺(神楽坂 毘沙門天)から近く、一見すると民家しかないように見えるちょっと隠れた場所にあるお店。
蕎麦屋さんで昼から飲む日本酒は特別にうまい。このお店に来るといつも注文するのが、冨田酒造(滋賀県)の「七本鎗 純米吟醸」。香りは控えめで、蕎麦の旨さが引き立つ。口の中に入れるとじわじわと旨みも広がっていく。
新潟県塩沢の「ぜんまい」はみずみずしく1本1本が太い。
蕎麦は、贅沢に「天せいろ」にした。
熱々でさくさく、中はとろとろの天ぷら。海老も大きくて甘かった。
存分に日本酒と蕎麦、天ぷらを満喫した後は甘いものでも食べたいなあ、と思い「ル・コワンヴェール」へ行くことにした。実は神楽坂には、ほかにも「紀の善」の抹茶ババロアや、「Calme Elan 神楽坂」のデセール、「ぼん りびえーる」のアンジェ……など、スイーツのお店がたくさんある。甘いもの好きにはとっても幸せな街だと思う。
せっかくなので「ル・コワンヴェール」には、ぐるっと寄り道してから向かうことにした。時間を気にせずふらふらと、こういう寄り道をすることができるのもまた贅沢。
途中で「ギンレイホール」の前を通り過ぎた。神楽坂では映画を見ることもできる。映画を見た後に、スイーツを食べながら余韻に浸るのもいいかもしれない。
ギンレイホールは、1974年にスタートした名画座です。ロードショーが終わった映画の中からセレクトして2本立てで上映する映画館です。1度のご入場で、2本の映画を堪能して頂けます。日本・アメリカをはじめ、アジアやヨーロッパの珠玉の作品など「国境なきラインアップ」で映画ファンの皆様にご満足いただける「マイ・シアター」であることを目指しております。
目的地である「ル・コワンヴェール」に到着。このお店は「アグネスホテル東京」直営のパティスリーで、東京理科大学の神楽坂キャンパスからも近い。
ケーキはお土産としてテイクアウトできるだけでなく、テラス席のほか、ホテル内のラウンジで注文をして、その場で頂くこともできる。
ああ、お腹いっぱい。
あとは夜までひたすら本を読もう、と神楽坂から少し足を延ばして向かったのは「キイトス茶房」だ。都営大江戸線の「牛込神楽坂駅」から近い老舗のブックカフェで、レトロな店内に集中して本を読むことができる。
甘さ控えめの「マサラチャイ」には甘いカラメルビスケットがよく合うなあと、いつも思う。
気が付くとあっという間に夕方になっていた。しかし、まだお腹は減っていない。
そうだ、夕食の前にさっぱりしよう、と「銭湯」へ行くことにした。神楽坂には「熱海湯」「金成湯」など、銭湯がいくつかある。温泉や銭湯が好きな自分にとっては、そこもまたうれしいところだった。特に気に入ってよく行ったのが神楽坂上にある「第三玉の湯」。風呂上がりにはいつもだらだらとテレビを見ながら牛乳を飲む。
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◯夜~
朝~昼、夕方の神楽坂も好きだけど、やはり「夜」の神楽坂は特別に楽しいなあと思う。街にある数多くの飲食店の灯りが夜道を明るくし、いたるところで美味しそうな料理の香りが風に乗って食欲を刺激してくる。「今日はこのお店に行ってみよう」と、初めから目的の店を決めて向かうのもいいし、特に何も考えずに、歩いて気になったお店に入ってみるのもちょっとした冒険のようで、楽しかったりする。
しばらく歩いたあとに、うまい焼鳥を食べようと「本多横丁」へ。
お気に入りの焼鳥屋さん「あほう鳥」に行くことに。
カウンターで1人、日本酒の「而今(じこん)」を飲みながら、
「はつ刺」を頂くのがいつもの流れ。
萬乗醸造(ばんじょうじょうぞう)の「醸し人九平次 KUHEIJI」や水戸部酒造の「山形正宗」なんかを2杯目に頂きながら、「煮込み」を味わう。大根、人参がゴロゴロと大きくカットされているのが幸せ……。汁も野菜の旨みがにじみ出ていて、味の濃さも丁度いいから、最後まで飲み干したくなる。
1本1本、丁寧に焼かれた串はどれも絶品だ。外側の白身がキュッと締まった食感がいい「うずらの玉子」に、大きくて香ばしく、そして噛めばじゅわっととろける「ポンチリ(ぼんちり)」も。
レバーは串を持つとずっしりとした重みを感じるボリューム感。お店は小さく予約のお客さんもいっぱいだが、1人なら開店してすぐに行くと意外に入れたりする。
まだまだ時間が早いので2軒目を探す。日本酒が好きな自分が2軒目でよく行くことが多かったのが「てしごとや 霽月(せいげつ)」や「とり酒場 わや」。どちらも1人で気軽に入れる雰囲気なのがいい。今回行った「てしごとや霽月」は、全国各地の日本酒が豊富にそろっていて、それを小グラスから注文できるのが気に入っている。「その時期ならではのおすすめの日本酒」は回転が比較的に早いので、気になる新しいお酒が入荷してないか、とりあえず帰り道にメニューを眺めに行っていた。
この日は「~しぼりたて特集!~」というメニューを見ると、石川県の銘柄「手取川」の純米生原酒や、秋田の「雪の茅舎」の純米吟醸生、山口の「東洋美人」の無濾過生原酒、山形の「くどき上手」の純米吟醸生、などほかにも好きなお酒がたくさん目に入ってきた。その中から、まずは以前住んでいた宮城の大好きなお酒の1つ、「宮寒梅」の純米吟醸生酒を注文。みずみずしくフルーティな香りが最高。これはうまいなあ……。
つまみには「鰹の酒盗」を。お酒がすすむ。
この日もっとも感動的に美味しかったのが秋田の「新政(あらまさ)」の「No.6 X-Type 純米大吟醸生原酒」だった。小仕込みで超低音発酵で造られたとのこと。新政はもともと好きだったが、これは今まで飲んだ中でも特に好きかも。いろんな人におすすめしたくなる。
ほろよい気分の帰り道は、やはりラーメンで〆よう。「天下一品 神楽坂店」もあるし、「麺屋 ふぅふぅ亭」もいいなあ。特に最近気に入っているのは、2014年の10月にオープンした「中華そば 田中屋」。
「中華そば 田中屋」でいつも注文するのが「山形辛味噌らーめん」。食べる度に東北で働いていたころを思い出し、懐かしい気分になる。
たくさん本を読んで、美味しいものをこれでもかってくらいに満喫したら、10分ほど歩いて家へ向かう。お店が数多く並ぶエリアから、少し歩くだけで閑静な住宅街が広がっていたりするので、夜はゆっくりと寝ることができる。帰り道の途中には、昭和21年にオープンしたという書店「文悠 神楽坂店」がある。夜中の24時までオープンしているから、明日用の本をまた1冊買いたくなる……。
今日も本当にいい1日だった。
贅沢しなくても過ごしやすい
こういう「贅沢」もいいけれど、いつもするものでもない。じゃあ「何気ない普段の日の過ごしやすさ」はどうなんだろう……と、考えても決して「神楽坂」は悪くないと思う。そう思うポイントをいくつか挙げておきたい。
(1)都内のどこへ行くにもアクセスがいい
神楽坂駅周辺~飯田橋駅にはさまざまな路線があり、交通の便は本当に良かった。行き先に応じて使い分けていた。以下に実際に利用していいたルートを紹介する(所要時間:
ジョルダン 乗換案内・時刻表・運行情報サービス 調べ)。
◆東京メトロ東西線「神楽坂駅」
職場があった大手町へ行くときは東西線で(所要時間 約8分)。表参道へ行くときは九段下から半蔵門線に(約19分)。新橋なら日本橋で銀座線に乗り換える(約18分)。
◆JR総武線「飯田橋駅」
飯田橋から秋葉原なんかへ行くときは約6分で移動ができる。さらに四ツ谷までは約3分、新宿なら約11分。特に総武線の新宿→飯田橋の終電は0時40分まであるのがうれしい。
◆東京メトロ有楽町線、南北線「飯田橋駅」
飯田橋~有楽町は約10分、飯田橋~池袋は約10分。いずれも有楽町線を利用できる。飯田橋~六本木一丁目は約9分、飯田橋~麻布十番は約11分で、ともに南北線を使う。
(2)チェーン店のような安い飲食店、100円ショップもある
「ザ・ダイソー飯田橋ラムラ店」や「THE 100 STORE 神楽坂店」といった100円ショップもある。飲食店もおしゃれなお店ばかり、というわけではなく「松屋」や「てんや」「サイゼリヤ」など、日ごろからなじみのあるお店もたくさんあるから安心。スーパーは「セーヌよしや神楽坂店」、野菜は「青果 丸喜屋」が安めかなあ、と個人的には思う。また、当時住んでいた家から近かった「業務スーパー 新宿榎店」にはよくお世話になった。
(3)静かで落ち着く
テレビや雑誌で特集されることが多く、にぎやかで観光客も多い街と思う人もいるかもしれないが、夜になるとかなり静か(もしかすると、神楽坂に来る人の年齢層が渋谷や新宿よりも高めであることが関係しているのかもしれない)。治安も悪いと聞いたことがないし、実際に住んでいたときに大きな事件もなかったので安心できる街だなあと思う。
(4)欠点といえば……
「坂が多い」
神楽“坂”というだけあって坂は多い。そのため、ここを苦手(例えば歩くのが好きじゃなかったり)とする人にはおすすめできないかもしれない。でも、個人的には欠点として思い浮かぶのはこれくらい。
(5)最後に
「神楽坂っていいかも」と、少しでも思った方にはぜひ試しに一度行ってみてほしいなあと思う。個人的には実際に行って街の雰囲気を感じてみると、好きな人にとってはより一層住みたくなってしまう街だろうと思う。美味しいもの情報については、今でもときどき神楽坂に行ってはブログで書いているので、興味があれば見てみてほしい。
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※当記事に記載の内容は2015年12月18日時点の情報です
著者:Taki (id:s06216to)
1987年横浜生まれ。大学卒業後、通信事業会社に就職。1年目に配属された仙台で食べ歩きの魅力にはまって以来、転勤先や出張先で美味しいものを探すのが趣味に。最近は特に日本酒に夢中。ブログ「ウォーキングと美味しいもの」では日々歩いた場所や行った街、そこで見つけた美味しいものなどを書いてます。
編集:はてな編集部