元ジャンプ作家・鈴木信也さんが振り返る、「Mr.FULLSWING」などの漫画制作秘話と思い出の街

マンガと文章: 鈴木信也

街の良さは、住んでみないと分からない

「歌は世につれ世は歌につれ」という言葉があります。

歌は世のなりゆきにつれて変化し、世のありさまも歌の流行に影響されるという意味ですが、ボクにとってその時描いていた漫画とその時住んでいた街、自分の生活や住環境が、その時々に描いていた漫画に影響を与えてきた気がしてなりません。

本当はもっともっと、街とその時々に描いてきた漫画のエピソードは、描ききれないぐらいあります。

冒頭の平塚のくだりで30ページはくだらないぐらいいきそうですが、それだと完全に「平塚物語」となってしまいますので、泣く泣く割愛しました(平塚駅南口すぐ出たところの肉屋の10円コロッケはジャガイモが皮ごと入ってて豪快だとか、七夕まつりの滝口カバン店の飾りが毎年ガチで力入ってて楽しみだったとか、平塚ローカルネタはいっぱいありました……)。

平塚に20年住んだあと上京しましたが(ドラクエIIIでいうとレベル20までアリアハンにいたことになります)、独身時代の若いころはもっともっといろんな街に引越せばよかったなあと思います。街って一度降り立っただけでは分からない、長く住んでみないと本当の良さが見えてこないこともあります。

だからボクが大人すぎるスポットと受け取ってしまったあの魔境な街も、もしかしたら人によっては素晴らしい良さを秘めた街だったのかもしれないですしね。

人と街との出会いってさまざまですよね。親がもともと住んでいたからとか、親の仕事の都合とか、自分の職場の都合もあるかもしれないし、自分の憧れで決める方もいらっしゃるでしょうし。

ボクの場合は、都会へのアクセスが良い駅でありながら周りに緑も多く、仕事と育児をほどよく両立できそうな物件が見つかったので、初めて上京したときに住んでいた街に再び住む事を決めました。

上京したてのまだ右も左も分からない20年前のボクが、まさか20年後、同じその土地で嫁と子どもに恵まれて住んでいようとは、思いもよらないでしょうね。20年前は自分の夢を掴むための助走の地としか思えていなかった、そのなんでもない街で、まさか長年住んでいくことになるなんて。人生って本当に分からないですね。

また20年後、今のボクには想像できない素敵な街で暮らしているのかもしれませんね。


で物件を探す
 

賃貸|マンション(新築マンション中古マンション)|新築一戸建て|中古一戸建て|土地

賃貸|マンション(新築マンション中古マンション)|新築一戸建て|中古一戸建て|土地

著者:鈴木信也(id:shinya_sheep

鈴木信也

漫画家。1998年『赤マルジャンプ』WINTERに掲載された読み切り「鉄条 -TETSUJO-」でデビュー。2001年〜2006年に『週刊少年ジャンプ』上で代表作「Mr.FULLSWING」を連載。2017年3月からは、Webサイト『少年ジャンプ+』にて、子育てエッセイ漫画「元ジャンプ作家が育児に精を出してみた」を連載中。

ブログ:ひつじのブログ Twitter:@shinya_sheep

編集:はてな編集部