キラキラしていない恵比寿の隅っこに暮らす

著: 灰色ハイジ 

住みたい街ランキング1位になったり、駅の西口にアトレの新館ができたりと、何だかキラキラしているイメージがある街、恵比寿。

そんな恵比寿に住み始めたのは、2年ほど前のことだ。

初めは恵比寿に住むことなんて考えていなかった。引越しを検討していて良さそうだなぁと思い見ていた物件が、たまたま好きなデザイン事務所が施工していると分かったのだ。そのとき「ここしかない!」と思ったことを、今でもはっきり覚えている。

建物ありきで決めたので、住み始めてから「ここはどんな場所だろう?」と思い、街を見て回ってみた。私が住んでいる場所は、恵比寿駅からは離れているためか飲食店なども少なく、すごく静かな住宅街で、私の中の「キラキラした恵比寿」のイメージと異なっているのがとても良かった。

恵比寿のY字路

住んでいる場所は恵比寿、中目黒、目黒、どの駅からも徒歩15分ほどあり、不便と言えば不便なのだけれど、裏を返せばどの街にもすぐに行くことができる。

まず気に入ったのは、恵比寿ガーデンプレイスから中目黒方面へと抜ける途中の道。まるで美術家の横尾忠則が描くY字路のような分かれ道だ。

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写真では分かりづらいが、中央の道路標識を境に、左右の道にかなりの高低差がある。昔は「茶屋坂隧道(ちゃやざかずいどう)」と呼ばれるトンネルがあった場所で、不思議な雰囲気を醸し出している。

坂の中程にあるバス停に「茶屋坂」とあるが、この道は、右手奥の、3代将軍家光にまつわる「茶屋坂」に対して、昭和3年に開かれたずい道で、「新茶屋坂」と呼ばれる。
坂の途中にあるトンネル上には、昭和49年に廃止されるまで、三田用水が延々300余年にわたって流れ続いていた。

目黒の坂 新茶屋坂 目黒区

先ほどのY字路を進み、かつて用水が流れていた坂道を下っていくと緑の塀に囲まれる。この辺りになると高低差も随分な高さになり、驚かされる。

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夜はまた違った表情を見せてくれる坂道

目黒川沿いにあるランドマーク

こう配のゆるやかな長い坂道をさらに下ると、大きな煙突が見えてくる。

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この煙突は、目黒川沿いの清掃工場にある。かなりの高さを誇っており、街のランドマークのようにも思えてくる。

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桜のシーズンはとてもにぎわう目黒川だが、近所で暮らしていると終電を過ぎ、人が少なくなってからの時間帯にゆっくり夜桜を楽しめる。初めて一人暮らしを始めたとき、引越しを手伝いに来てくれた兄が「川が近くにある場所はいいぞ」と言っていたのが印象的で、それ以来移り住む部屋は大体いつも川が近くにある気がする。

都会のオアシス・目黒区民センター

あまり人に信じてもらえないのだけれど、スポーツジムに通っていた時期がある。スポーツとは縁遠くあまり得意ではないのだけれど、唯一、小さなころからやっているのが水泳だった。

プランナーという仕事を始めてから、すき間時間も考え事をするようになったのだけれど、泳いでいるときだけは無心になることができる。けれど、たまに泳ぐためだけの場所としては、スポーツジムというのはコスパの悪い施設だ。当時、月に8千円ほどは会費を払っていたんじゃないかと思う。

この街に引越してうれしかったのは、近所に目黒区民センターがあることだ。

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この施設にはプールがあって、気が向いたときに1回400円で屋内プールを利用することができる。6レーンあってあまり混まないところと朝は9時から夜は22時までと、夜遅くまで開いているので仕事帰りにも利用できるのがうれしい。

夏に開かれる屋外プールであれば、200円で泳げる。

ささやかな休日の楽しみ

広告代理店時代に昼夜関係なく働いていたためか、休日の昼間に太陽を浴びるだけで、なんて贅沢な時間なんだろうと思うことがある。電車に乗ればどこにでも遊びに行きやすい場所に住んでいるけれど、休日は派手なことをせず、歩いて行ける場所だけでささやかに楽しめる時間を見いだしたい。

スーパーマーケット不毛地帯の救世主

私が住んでいるエリアは、恵比寿・中目黒・目黒の3駅どこからも徒歩だとやや距離があることもあって、スーパーが極端に少ない。だんだんと気に入ってきた街だけに、そこが残念だ。

その代わり、目黒警察署の前にある旬八青果店が私のお気に入りショップとなっている。旬八青果店は、いわゆる八百屋なのだけれど、スタイリッシュなのれんと共に、スーパーではあまり見かけない野菜や果物が並んでいて、いつも行くのが楽しみだ。

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旬八青果店で購入した丸いズッキーニ。かわいい Instagram @haiji505

「今はどんなものが旬なんだろう?」と思いながら、見かけた野菜や果物をご褒美と称して買うのが、日曜日のささやかな楽しみになっている。

一輪の花を買う

もう一つささやかな楽しみがある。それは花を買うことだ。一輪程度の花を買って飾ることで、その週の平日も少し心にゆとりを持つことができる。恵比寿からもう少し遠出して、中目黒にあるhana-nayaという可愛らしい花屋さんに向かう。

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Instagram @haiji505

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Instagram @haiji505

たくさんの花が並ぶ花屋さんで、一輪だけ花を買うのは結構な勇気がいる。でも、ここでは入り口に置かれたワゴンに、いくつかの花が小さな瓶に詰めて並べられていて、一人暮らしの私でも買っていいんだなと思えてくる。広くはない店内で、「今の季節でおすすめの花は何ですか?」とお店の人に尋ね、気に入った花を持ち帰るのは幸せな瞬間だ。

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ムスカリ ブルーマジックを窓辺に飾った Instagram @haiji505

夜は、地元に根付いたお店で一杯

恵比寿にはたくさんの飲食店がある。華やかなお店もいいけれど、自分が住む街では気張らずにお酒を飲んだり、落ち着いてご飯を食べられる場所がいい。

恵比寿とも中目黒とも言えない、どの駅からも少し離れた場所に「ぬく」という小料理屋がある。

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大好きな白子ポン酢。メニューで見かけるとつい頼んでしまう

家族で営んでおり、最初に訪れたころは、主に調理を担う女性がだっこひもで赤ちゃんを抱えながら接客をしていた。近所ということで何度か通っていると、そのうちに子どもが大きくなりだっこひもが外れ、ハイハイをするようになっていた。

地元を離れて10年経ち、祖父母の家に遊びに行く機会が減ってしまった今だからこそ、親戚の家を訪ねたときのような感覚で、落ち着ける場所があるのは良い。

欲張りに生きられる街

村で生まれ育ったためか、小さなころから都会に憧れてきた。その一方で、大人になってからあえて自然のある場所へと出かけることも多くなってきた。

今後どんな場所で生きていきたいか悩んでいる自分がいるけれど、山手線、日比谷線の走った便利な都会でありながらも、キラキラと気張りすぎない暮らし方ができる恵比寿が気に入っている。住む場所は都会がいいけれど、ゆったりと生きたい。今、私が住んでいる街は、そんな欲張りな生き方ができる場所なのだ。

写真撮影協力: hmsk

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著者:灰色ハイジ (はいいろ・はいじ id:haiji505)

灰色ハイジ

プランナー&デザイナー。新潟県生まれ。実家はいまだに村(誇り)。

制作会社でwebデザイナーを経験後、クリエイティブエージェンシーSIXでプランナーに転身。2015年フリーランスに。デジタル施策の企画や、UIデザインなどを手がける。

ポートフォリオ:http://haiji.co/ Twitter:@haiji505

編集:はてな編集部