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東京で家を持つ価値

グローバル化する世の中においても、住宅はドメスティックな事情から逃れることはできません。
そのなかで、東京で家を持つ価値とはなにか?を考えてみました。

「都心に住む」2010年11月号掲載

都心に住む 毎月26日発行
「パークコート赤坂ザ タワー」三井不動産レジデンシャル

(撮影協力/「パークコート赤坂ザ タワー」三井不動産レジデンシャル)

東京の新築マンションは優れたパッケージ商品

各都市を見渡したところで、改めて東京を振り返ってみよう。顕著なのは、新居といえば新築-新しさにこだわる人が多く、供給の多さもさることながら、中古との市場価値に大きな開きがあることだ。ニューヨークやロンドンでは古さが価値を生んでいるし、シンガポールでも中古は新築とそう変わらない価格で取引されている。

ところが日本では、中古になると建物の価値がとたんに下がり、築10年で土地だけの価格になってしまうといわれている。税制や中古市場の未整備など構造的な問題によるところが大きいのだが、同時に、日本人の家に対する意識-昔から地震などの天災や火事に多く見舞われ、根付いた「家は壊れるもの」だという意識と無関係ではないだろう。コンクリート造のマンションが普及したのも戦後、たかだか60年のことである。

しかし、この間にマンションは著しく進化した。新築主導の市場がもたらしたメリットは、デベロッパー各社の競合による構造や性能の向上だろう。三井不動産レジデンシャル・都市開発一部の稲田信行氏は、「高品質で快適であることを強く求められる」と話す。「例えばスラブ厚ひとつとっても、東京の新築マンションのレベルは相当なものです」。高額物件に限らず、おしなべて品質が高いところに底力があり、断熱性、遮音性、空気環境等々の住み心地を左右する基本スペックが高いという。

マンション平均価格の推移(都区部)

他都市に比べれば住宅価格の変動がゆるやかといえる東京。新築は07年、中古は08年をピークとして下落に転じていたが、ともに今年に入って回復を見せている

また、内装や設備をすべて完璧に施して分譲するシステムは、それらのグレードアップと同時に、「セレクトプランやカラーチョイスというバリエーションを生んだ」と稲田氏。「特に都心でその傾向が強いのですが、お客さまの嗜好が多様化し、多くの受け皿を用意せざるを得なくなったのです」。

これは東京の新築マンションがいかに優れた“パッケージ商品”であるかを物語っている。他都市では間取りや内装を予算と好みに合わせて自分たちでつくることが多く、そこに持ち家の楽しみを見いだしてもいるのだが、東京のビジネスパーソンたちはそうした手間と時間を省き、「引越してすぐ住める完成された家」を買いたい。しかも、その家は好みに応じてカスタマイズが可能だ。家選びに便利さを求めるこの傾向は、アンケートでも明らかである。

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住まい選びのキーワードは「便利」と「安心」?

リクルートの新築マンション購入者アンケートを都心13区に絞ってみると、購入者の決め手となった項目は(価格の46%を除き)「通勤アクセス」が40%(※1)、次が「駅からの時間」の32%で、その後に20%台で「間取り」や「広さ」が続く。これでみる限り、都心のビジネスパーソンは空間より時間にお金を払っているようだ。仕事に限らず、食、レジャー、文化、医療、あらゆる施設がトップレベルでそろう東京都心の生活は、いろいろな意味で無駄がない。「便利」さは、家選びで特に重要なファクターといえる。

もうひとつ挙げるとすれば「安心」かもしれない。間取りや広さに次ぐ順位で決め手項目に挙がっているのは、「売主の信頼度」だ。構造や性能への関心が高いという理由のほか、「関連会社のネットワークに対する信頼感もあるのでは」と、稲田氏。資産価値を保ち、将来の賃貸や売却時も苦労がないよう、管理も仲介もグループ会社で行うことを評価する顧客も多いそうだ。そもそも新築を好むのも、建物履歴(※2)の不足や瑕疵責任の所在などで評価が難しい中古に比べ、十分な情報が公開されていて安心だからだろう。

間取りの例

だが、近年は中古人気も高まっている(※3)。長引く不況で手ごろな価格のマンションを求める層が増えたためだが、都心の場合、もっと積極的な理由もあるようだ。青山や広尾などのプレミア立地では新築の供給自体が少なく、あっても非常に高額なため、以前から中古が流通していた。これに加え、日本橋や築地など個性ある街の中古マンションを買って、間取りや内装を好きなようにつくり変える「リノベーション」が増えているのだ。住まいに「自分らしさ」を求める20~30代の間で一種のトレンドになっている。

また、都心購入者は買い替えや買い増しが目立って多く(※4)、住宅が「一生に一度の大きな買い物」ではなくなってきていることが分かる。ディンクス時代は駅近のタワー、子どもができたら住宅街の中低層へなど、パターンのひとつ。湾岸などファミリー向けのタワーマンションを選んでもいい。東京の今の成熟した住宅市場で、家選びはますます自由になりつつある。

※1)購入者の通勤時間は30分以内が46%、45分以内では73%に達する

※2)新築時やリフォーム時の図面や工事内容の情報。国土交通省が整備・普及を図っている

※3)09年も供給は減少したが成約件数は 前年比9%アップ

※4)購入者アンケートで「2回目以上の取得」が首都圏13%に対して都心13区は43%

マンション供給の推移(都市部) 都心13区の新築マンション購入者と購入物件
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取材・文/今井 早智 撮影/山出 高士