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いざというときに「売れる」「貸せる」物件を。リスクヘッジの家選び

不動産マーケットに詳しい3人のプロが、
都心13区における「売れる物件」「貸せる物件」の条件をズバリ答えます!

「都心に住む」2010年8月号掲載

都心に住む 毎月26日発行
売れる物件とは? お話を伺った方たち

細かな条件で大きな違いが出る「都心物件」

戦略的購入

戦略的購入=「ライフプラン」と「リスクヘッジ」の最適バランス

戦略的なマンションの購入において、検討物件が「売りやすい」「貸しやすい」ことは重要なポイント。では何に注意すればよいのだろうか。

まず、最初に心がけておきたいのは、購入しようとしているのが「都心物件」であるという意識を持つこと。

「郊外物件と比較すると、相対的に都心の物件はどれも売りやすく、貸しやすい。そのなかで差別化を図らなければならない」(東京カンテイ 市場調査部 上席主任研究員・中山登志朗さん)

つまり、都心物件はそれだけで、ある程度売りやすく、貸しやすい。しかし、より細かな条件の違い、または「より誰もがほしい物件、住みたがる場所」であるかで、売却価格や賃貸料が大きく変わってくる。誤解を恐れずにいえば「考えすぎ」と思うくらい細部まで検証しても悪いことはない。

また「現在の価値の根拠は何か、そして将来性はどうか。不動産のバリューは現在と将来に分けて考えたほうがいい」(長谷川不動産経済社代表 不動産コンサルタント・長谷川高さん)という点も大切だ。「今は価値があっても、将来に不安要素がある物件」か「今はお得な価格だが、周辺の再開発が進めば人気上昇しそうな物件」かは、「戦略」に大きな影響を与えるはず。さらに、その視点は物件、不動産だけではなく、世の中全体に向けておくべきである。

「例えば10年後に売りたい、貸したい、という場合、一般的な住宅購入適齢期を考えれば、10年後の20代、30代の世代の価値観を知っておく必要がある。自分の価値観だけで判断してしまうとズレが出てしまうかも」(スタイルシステム代表取締役 不動産コンサルタント・徳本友一郎さん)

買い手、借り手の好み、消費傾向、住宅事情は「売りやすさ」「貸しやすさ」に直結する。そういった背景を踏まえ、場合によっては、いずれほかの人が住むことを想定し、汎用性の高い物件を選択することも一つの考え方だ。

そこで、建物周辺を緑化したり、バルコニーに深い庇やツル性の植物を這わせたネットを設けて日射を遮ったりするパッシブの手法が有効になる。特に「緑のカーテン」となるツル性植物のネットは、葉の蒸散作用でいわば水の壁をつくり、輻射熱をカットする。 「しかも緑や風などの自然に対して人は、人工的な環境では得られない気持ちよさを感じます。つまり、外の環境との関係性が室内の快適さを決めるのであって、室内だけをどうこうしても心地よさは体感できないんですよ」

そもそも、皆が自分の室内空間だけをエアコンで快適にしてきた結果、都心がヒートアイランドになってしまった、と甲斐さん。「これからは外環境をどうつくり、どう広げていくか――特に集合住宅では、住戸から敷地へ、さらに街へと、緑の層を連続させることが意味を持ちます。緑のつながりで風や光、空気などの質が良くなり、風景も奥行きのある美しいものになって、一住戸だけでは叶わない大きな快適さを得ることができますから。実現には住人同士のコミュニティが重要になりますが、快適な空間という同じ目的の下、感情ではなくて利害を共にする関係ですから協働しやすい。それに、よい住環境ができれば、よい人間関係が後からついてくるものです」

甲斐さんによれば、エコロジーは「己の快適さを実現する手段」であり、また、「つながりを活かすこと」なのだとか。

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稀少価値が高いファミリータイプ

では、前出した条件を踏まえたうえで、「売りやすい物件」の条件から考えていこう。まず話題に上がったのが、意外にもプランの話。

「ファミリー需要を考えた場合、一般的には3LDKで75m2くらいのプランの人気が高い。しかし、都心エリアにはこの広さの物件が実は少ないんです。40m2~60m2、90m2以上の物件はあるんですけどね。少ないということは稀少価値が高いということ。75m2から、それより『ちょっと広め』の80m2くらいの物件は、意外に人気が高いのです」(中山さん)

それに加えて、「買う」物件の特徴も影響してくる。

「持ち家購入の場合、賃貸に比べて長く住もうと考えている人が多いので、可変性の高いプランが人気です。家族構成、生活の変化に合わせ、将来、『部屋を区切れる』。その意味では部屋数の多さより、広いリビングの有無のほうが重要かもしれません」(徳本さん)

また、「特殊な形状」も「買う」物件では不利になりがちだとか。「一般的にマンションを求める人はフラットな住まいに魅力を感じている人が多い。だからメゾネットなどは買い手がつきにくい。形状として特殊な住戸は若干、リスクがある」(中山さん)

賃貸なら、すぐに引越せる気軽さがあるので、「特殊な形状」もおもしろいと感じてくれれば、気軽に入居を決めてくれるかもしれない。しかし「買う」となると話は別、ということか。


専有面積帯別 マンション供給シェア
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人気エリアは やはり強し

次に立地・エリア。「マンションは立地がすべて」と話す人がいるほど、「売りやすさ」「貸しやすさ」、そして資産価値と結びつきが強い立地・エリアについては、いろいろと意見も多い。もちろん、冒頭の話のとおり、都心物件はどれも基本的に一定の価値はある。エリアについても同様だろう。そのなかで、さらに人気のエリアともなれば「都心ならではの事情でしょうが、買いたい人にとって築年数などは気にならない」(中山さん)ほどの状態だという。

では都心のどんな場所が、そういった状態、またはそういった状態になり得るのか。みなさんが最初に挙げる場所は、やはり麻布、青山、赤坂といった、いわゆる「3A」エリア。さらには広尾、代官山、恵比寿……といったいわゆる人気立地として定評があるエリアだ。

実際、都心部のリセール・バリュー・ランキングを見ると、上位には都心でありながら、緑豊かな公園や施設が近くにあり、さらに商業エリアとしても人気なエリアにも至便、といった「いいとこどり」ができることに定評のある立地が多い。やはり定番は強し。


都心部リセール・バリュー・ランキング


「さらに麻布、青山、広尾などは大きめのマンションを建てられるような土地がほとんどなくなってきています。その意味でも相対的に値崩れはし難いですね」(長谷川さん) しかしながら、こういったエリアの物件はプライスが高くなかなか手が届きにくいのも確か。ほかに何か判断材料はないだろうか。

「先ほど挙げたようなエリアは、住みたい人はたくさんいて、10年後も人気エリアであるでしょう。こういった需給バランスのチェックは他のエリアでもしてみるべき。エリアの比較をするならば、同じ平米数でどれだけの賃料がとれるのかを調べてみるのもいい」(長谷川さん)

そういった「相場感」を知らないと「戦略」が狂うことも考えられる。「ファミリーが多いエリアなのに、単身者向けのプランが多いといった、エリアのニーズと合わない物件はなかなか売れにくい。特に価格は“ボリュームゾーン”からズレると苦しい。そういう意味でもエリアの相場感、可能ならば物件取引の状況も知っていて損はありません」(徳本さん)

ボリュームゾーンとはすなわち価格の相場。対象エリアに住みたいと考える人たちの平均的な予算よりも高すぎると、検討物件になりにくいのだ。

さらに「欲をいえば」という意味で有利になりそうなのは以下の点だ。「エリアのシンボル、ランドマーク的な〝みんなが知っている〟物件は競争力があり、人気も価格も落ちにくいですね」(長谷川さん)

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文/田沢 健一郎  撮影/福島 大