
目下進行中の東京の開発エリアをクローズアップ。
住み心地と資産性を兼ね備えた今、東京で「買いたい街」を探ります。
25年ほど前に練られたテクノスクエア構想に始まる開発も、今や最終段階に差しかかった。これまでは大崎駅寄りのエリアでの開発が先行していたが、2000年に入りオーバルコート大崎、アートヴィレッジ大崎と東五反田地区の再開発事業が相次いで完成。2010年には東京サザンガーデンが竣工したことで、五反田・大崎地区の一体性が名実ともに強まったといえよう。木造住宅や中小の町工場が密集していたこの地も、かつての面影はほとんど残っておらず、高層ビルやマンションが並ぶ風景に変わりつつある。
その東五反田地区の街づくりの基本コンセプトは、「住みたい街、行ってみたい街、働きたい街」だという。山手線の駅周辺という意味では恵比寿とよく似ているが、東五反田ではオフィスと住宅が混在する点が大きく異なる。
昨年オープンした「東京サザンガーデン」。建物や外構の色彩は自然の風景と調和するようアースカラーを基調にしている
「現在整備中の北品川五丁目第一地区では、オフィスも住宅も建物の低層部分をアースカラーなど人にやさしい色調・デザインにして統一感を出すこと、また、地区内に7つの公園を設けてフットパス(散策路)でつなぎ、誰もがくつろげるオープンスペースをつくることを計画しています」(三井不動産レジデンシャル・都市開発一部の石井隆之氏)。同時に、居住者もオフィスワーカーも参加できるイベントなどで、人々の交流も深めていく計画だ。
「サザンガーデンの広場では、花見の季節以外でも楽しめるよう、昨年から目黒川沿いをイルミネーションで飾るイベントも始めました。また、昔からの道路と新設する幹線道路が交差する地点を中心に、土地の来歴を意識したモニュメントを置くことなどを検討し、新旧の共存も図っています」(石井氏)
新幹線の停車駅・品川にほど近く、国際空港として利用価値の高まった羽田へのアクセスも良い。さらに閑静な住宅地として知られる城南五山の一つ、御殿山に隣接するなど、オフィスとしても住宅としても立地条件は申し分ない。住む人と働く人とが公園や小径で触れあい、互いに影響を与え合って、昼夜を問 わず人でにぎわう活気ある街に成熟していくことを期待したい。
聖橋から秋葉原方面を望む。建設中の建物がマンションで、隣接地に建設中のオフィスビル敷地を経由して千代田線新御茶ノ水の駅が歩行者通路で直結する
千代田区の住宅地というと、番町が頭に浮かぶ人が多いかもしれない。だが御茶ノ水を最寄りとする神田・淡路町エリアにも多くの人が住んでおり、2年に1度の神田祭では町会ごとの神輿が華やかさを競っている。また明治大学や日本大学などが古くから学舎を構え、学生の街として発展してきたことは周知の事実だ。昨今ではオフィスや商業ビルも増え、ビジネスと学問で活気あふれる街として都心でも独特の存在感を醸し出している。
その御茶ノ水に、地域住民によるコミュニティを再建しようという動きが始まっている。核となるのは、神田淡路町で進められているタワーマンションの計画だ。41階建ての建物のうち19階まではオフィスなどが入り、20階から上が住宅となる。低層部は商業ゾーンとして各種店舗でにぎわうほか、この地域では珍しい300坪超のスーパーも出店する予定だ。
ユニークなのは、敷地内に設置する学生向けの賃貸マンションだろう。御茶ノ水といえば学生街でもあるが、わざわざ住宅を用意して学生を住まわせるのには理由がある。
「街の特徴を活かし、学生による地域に根ざしたボランティア活動を支援するため、『学生の居住の場』を確保しようという計画です。若い人たちが淡路地域に愛着をもって、住民との交流が図れるよう、学生ボランティア支援として整備します」(安田不動産・開発第三部の塚田徳也氏)
建物内には地域住民も利用できるコミュニティスペースを設け、活動の場として提供するという。また、子育て世代向けに保育園も、再開発エリア内の隣接する街区で計画中だ。
「周辺には医療施設も多いので、高齢者にも暮らしやすい環境でしょう。敷地内にもともとあった淡路公園は再開発後も残し、さらに、敷地内の広場と一体的に整備することで、心地よい緑地も生まれます」(塚田氏)
再開発地区はかつて淡路小学校があった場所だ。再開発で地域コミュニティが復活すれば、この地に再び子どもたちの歓声が戻ってくるだろう。
税務署通りと青梅街道の交差部に位置する現地。奥がオフィスビルで、手前が建設中のマンション
副都心のなかでも最も早くから超高層ビルの開発が進み、エリアの規模も広大な新宿。「住む街」というイメージは希薄かもしれないが、駅西口から1km前後のエリアは居住地区として整備が計画されていた。そのひとつ、北新宿地区は今、まさに再開発が進行中だ。
「中野坂上駅や西新宿駅に近く、新宿駅から1~2駅と利便性の高い立地です。以前は細い道路しかなかった密集地に幹線道路を通し、建物を高層化することで防災上の安全性も高めます」(東京都都市整備局の松本祐一氏)
タワーマンションと商業ビルからなる開発だが、新宿駅から徒歩圏の大規模物件として注目度も高い。 「敷地内に750m²を超える居住者専用の庭園を設け、周囲には並木や植栽など緑の景観を整備します。また、一括高圧受電で電気代を節約し、差額で太陽光発電を設置するほか、建物の断熱性や設備の省エネ性を高めるなど、環境に配慮しています」(三菱地所レジデンス都心事業部・長岡亘氏)
住環境の整備が進めば、新宿も「住みたい街」に変貌するに違いない。
新しい商業施設が続々とオープンする大井町駅前。写真中央が「阪急大井町ガーデン」
大井町は品川の隣の駅という交通至便な立地ながら、住宅地としての認知度は決して高いとはいえなかった。だがここへきて、イトーヨーカドーの出店やホテル・商業施設などからなる阪急大井町ガーデンの開業等が進み、駅周辺の風景が一変しつつある。なかでも大井町西地区は、タワーマンションを核とした住宅系の再開発事業として期待を集める。「もともとは細い路地に店や住居が混在する、防災上問題のある区域でした。これをシンボリックなタワー型住居に整備し、低層部には店舗も入れて、駅から続く商店街のにぎわいを途切れさせないようにしたいと考えています」(大井町西地区市街地再開発組合・事務局の宇佐見和敬氏)
駅前では大ホールを有する区民会館「きゅりあん」や、四季劇場などが相次いでオープンし、人が集まる仕掛けも着々と整いつつある。3年後に阪急大井町ガーデンの2期工事が完成すれば、駅周辺はいっそう活気づきそうだ。
駅前のにぎわいを取り戻した大井町は、これから最も発展が期待できる街のひとつといえるだろう。


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