
エコロジーの視点なくして物を語れない時代である。
マンション業界も例外ではなく、住宅版エコポイントの実施もあって環境を謳う物件が確実に増えてきた。
さて、しかし、購入者である私たちはその価値を正当に評価できているだろうか。
省エネ設備でCO2を削減するから地球に優しい、それだけでなく、
エコはもっともっと住宅の本質に近く、住み手である私たちの生活にダイレクトにかかわるものだ。
エコを知り、エコマンションを見る目、選ぶ目を養いたい。

「経堂の杜」の夏でも涼しい室内。写真提供/チームネット、パンゲア
住宅のエコといわれてまず思い浮かぶのは、エアコンではないか。使用時間を減らす、設定温度を変える、それでCO2がこれだけ減る。こうした図式では、ともすればエコに義務感の色が帯びる。しかし、エコは本来、実に合理的に快適さを約束するものだ。環境共生住宅のプロデュースで知られる甲斐徹郎さんに聞いた。「事務所がある『経堂の杜』はコーポラティブ住宅ですが、パッシブデザインといって、太陽の熱や光、風、夜間の冷気など、自然の力で室内環境を快適にする設計です。」
酷暑の東京でエアコンなしでも快適に過ごせるという、その訳は――。「夏は太陽の直射日光によって戸外のアスファルトが高温になり、マンションのバルコニーなどの床の表面温度が50℃以上にもなります。夏のマンションが暑いのは、そうした外気温より高温になったものから熱が放射され(輻射熱)、その熱が住戸室内の体感温度を上昇させるため。ですから、エアコンで室温を変えるより、暑さの原因である輻射熱を断ったほうが合理的です」

「経堂の杜」の緑のカーテン。緑は視覚的な涼しさも演出する
そこで、建物周辺を緑化したり、バルコニーに深い庇やツル性の植物を這わせたネットを設けて日射を遮ったりするパッシブの手法が有効になる。特に「緑のカーテン」となるツル性植物のネットは、葉の蒸散作用でいわば水の壁をつくり、輻射熱をカットする。 「しかも緑や風などの自然に対して人は、人工的な環境では得られない気持ちよさを感じます。つまり、外の環境との関係性が室内の快適さを決めるのであって、室内だけをどうこうしても心地よさは体感できないんですよ」
そもそも、皆が自分の室内空間だけをエアコンで快適にしてきた結果、都心がヒートアイランドになってしまった、と甲斐さん。「これからは外環境をどうつくり、どう広げていくか――特に集合住宅では、住戸から敷地へ、さらに街へと、緑の層を連続させることが意味を持ちます。緑のつながりで風や光、空気などの質が良くなり、風景も奥行きのある美しいものになって、一住戸だけでは叶わない大きな快適さを得ることができますから。実現には住人同士のコミュニティが重要になりますが、快適な空間という同じ目的の下、感情ではなくて利害を共にする関係ですから協働しやすい。それに、よい住環境ができれば、よい人間関係が後からついてくるものです」
甲斐さんによれば、エコロジーは「己の快適さを実現する手段」であり、また、「つながりを活かすこと」なのだとか。

イラスト監修/チームネット 作成/レバーン
外環境と建物が一体となり、「自然の空調装置」として機能する。
例えば夏は、北側のケヤキの葉の蒸散作用が冷気をつくり( 1 )、南側の樹木が日差しを遮る( 2 )という外環境に加え、夜間に換気を行って室内に冷気を取り込み( 3 )、取り込んだ冷気を外断熱構法で蓄える。
翌日の日中は窓を閉め切って外の熱気を遮断すれば、冷輻射の働きでエアコンなしでも室温が上がらず、涼しく過ごせる。開口部は複層ガラスにして断熱性を高めた。
春や秋など気候のいい時期には窓を開け放ち、緑を通した自然の風を部屋いっぱいに取り込んで循環させる。
環境共生が専門の住まいづくりおよび街づくりのプロデュース会社、チームネットを1995年に設立。一般市民への普及啓発や、環境共生を事業戦略とした企業への提案を行う。著書に『自分のためのエコロジー』(筑摩書房)、『まちに森をつくって住む』(OM出版)など


※記事は月1回更新されます。