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【スイーツ番長presents:パティシエのいる街には幸せが住む】Vol.14 pâtisserie Tendresse(パティスリー タンドレス)一乗寺

二両編成のワンマン電車でカタコト揺られ降り立ったのは京都左京区一乗寺駅。周辺は1980年までは、映画館や飲食店がつらなるにぎやかな繁華街であったという。その名残は、関西最大級のラーメン激戦区と呼ばれるにとどまり、現在は映画館などの歓楽感は失せ、どこかのどかな地元感のある商店街に変貌した。カフェやブティックなどオシャレな店が点在するケヤキ並木の白川通より東、比叡山を望むエリアは田畑も広がる閑静な住宅街でもある。観光名所の「詩仙堂」もこの周辺だ。そんな住宅街にひっそりとたたずむのが一軒家パティスリーのタンドレス。山口貴之シェフが生み出す、端正で上質なケーキの美味しさは、地元からあっというまに全国に広まり、今では遠くは九州からもこの味を求め、来店する人もいるほど。スイーツ党にとっては、まさしくそれは「タンドレス詣で」という様相だ。

スイーツ番長(以下、番長)「いつ来てもまわりは静かな住宅街ですね。このような立地で地元にとどまらず全国からケーキを求めてやってくる。素晴らしいことです!」

山口貴之シェフ(以下、山口)「ここは僕の地元なのです。こんな不便な場所までお越しいただけるのは、本当にありがたいですね。だからこそ、普通のことをしていてはダメで、ここまで来てもらうからには、ほかにはない、一風変わっていて、なお且つ美味しくて、僕自身が納得できるものだけを販売しています。特に京都人は求めるレベルは高いと思います。」

番長「ケーキの容姿が市販の型であったとしても、一つ一つがほかとは違うオーラを放っていますね。例えば新幹線が速さと安全性と経済性を突き詰めた結果、その形を美しい姿に現したように、それは美味しさを積み重ねてたどり着いた、究極の計算の姿なのでしょうか?」

山口「地元のみならず、遠くからもわざわざ来られる方は、それなりの味を求めておられると思うので、“美味しい”ことが僕の生命線なのです。その姿が美しく感じてもらえれば非常にうれしいです。いくら素材がいいから、ブランド名産品だからとやみくもに放り込んでも、食べたときに頭が?になってしまうようでは、それは美味しくないケーキです。フランス菓子ですから甘さも味もはっきりしていないといけませんよね。お菓子づくりに使う原材料、メーカーというのはある程度決まっていますが、その扱い、配合、製法の違いによって、怖ろしいほど違うものになってしまいますから……。」
番長「試作だけでも大変でしょうね?」

山口「それはもう、思っているより、かなり大変なことです(笑)。時には20~30回を超えることもあります。それなのに結果、商品に至らなかった例も。イメージするのは簡単ですが、具現化するのは容易ではありません。交通の便があまり良くないですから、ちょっとでも手を抜いたら、そっぽを向かれてしまいます。ましてやリピートしてもらおうとなると、それはもう毎日が真剣勝負ですよ。だから常に危機感と緊張感を持ってやっています。

番長「明確な意識のもとにパティシエをなさっていますが、この世界に入ったきかけは?」

山口「実は、子どものころは甘いものは苦手で食わず嫌いでした。が、高校生のときに体調を崩して入院し、病床で食べたケーキがあまりに美味しくて……ケーキってこんなにも甘くて美味しいものだったのか、と、癒やされ励まされたのです。そのときにケーキをつくる仕事をはっきり意識しました。」

番長「なるほどケーキの優しさに触れ、目覚めたわけですね。 あっ!それで店名に“Tendresse”(フランス語で“優しさ”)と付けられたのでは?」

山口「さあ、どうでしょうか……?(笑)」

●ミステール(580円)

【スイーツ番長presents:パティシエのいる街には幸せが住む】Vol.14 patisserie Tendresse(パティスリー タンドレス)一乗寺

ウォッカが効いたバナナムースの中に、4種の柑橘(オレンジ、ブラッドオレンジ、カラマンシー、ピンクグレープフルーツ)のムースを閉じ込めた。周りに貼られた極薄チョコレートの儚いパリパリ感も有意義。

●ピエモン(630円)

【スイーツ番長presents:パティシエのいる街には幸せが住む】Vol.14 patisserie Tendresse(パティスリー タンドレス)一乗寺

ライムのホワイトチョコレートムースに、フランボワーズを忍ばせたパッションフルーツクリーム、ピスタチオ生地。濃厚な甘さと鮮烈な爽やかさの兼ね合いがお見事!

●テュラン(580円)

【スイーツ番長presents:パティシエのいる街には幸せが住む】Vol.14 patisserie Tendresse(パティスリー タンドレス)一乗寺

スペインで有機栽培された栗をシャンティとババロアに仕上げ、ヘーゼルナッツのダックワーズ生地と重ねた。栗のケーキ=モンブラン、という一筋縄ではいかないのがタンドレス。

●ブラ・ドゥ・ヴニュス(580円)

【スイーツ番長presents:パティシエのいる街には幸せが住む】Vol.14 patisserie Tendresse(パティスリー タンドレス)一乗寺

洋梨のシロップ漬けを入れたキャラメルクリームを、スパイシーなビスキュイ生地で覆った“ヴィーナスの腕”。店名ピックの接着剤になっているバタークリームも、味わいのアクセントとして計算されたものだというから驚きです。

一乗寺といえば、剣豪 宮本武蔵と足利将軍家の兵法家 吉岡一門の決闘の場「一乗寺下り松」が有名だ。現在その場所は一本の松と石碑で標すのみで、付近一帯はタンドレスのある住宅街となっている。そして、今、この地で山口シェフが、正に武蔵のごとくフランス菓子に真剣勝負を挑んでいるのである。

山口貴之シェフProfile
【スイーツ番長presents:パティシエのいる街には幸せが住む】Vol.14 patisserie Tendresse(パティスリー タンドレス)一乗寺学生時代に菓子に強い興味を持ち、パティシエを志す。自身が尊敬する某有名店のシェフのもとで研鑽を積み、1999年パティスリー「ベック・ルージュ」をオープン。一旦クローズし、イートインスペースを設け、2009年「パティスリー タンドレス」としてリニューアルオープン。実は庶民的な和菓子が大好きで、あんこは粒餡派。

ShopData
【スイーツ番長presents:パティシエのいる街には幸せが住む】Vol.14 patisserie Tendresse(パティスリー タンドレス)一乗寺pâtisserie Tendresse(パティスリー タンドレス)
京都市左京区一乗寺花ノ木町21-3
Tel:075-706-5085
テイクアウト11:30~19:00、イートイン13:00~18:00
定休日:火 準備休業:水・木・金
(営業日は土・日・月ですが変更もあるのでHPをご確認ください)
叡山電鉄一乗寺駅より徒歩10分
HP:http://kyotocake.com
一期一会の作品主義をモットーに、クオリティの高さを求め、少品種・少量生産に徹するため、お菓子づくりのほとんどをシェフが行っている。その完璧主義ゆえに、今のところ営業日は週3日となっているが、週替わりでケーキメニューを更新しており、過去には僅か半年間で110種のケーキが登場していることからもその尋常ではない仕事ぶりがうかがえる。(ケーキ販売情報はその都度HPでも確認できます)
ときには持ち帰りに不都合な繊細なケーキもあるので、迷わずイートインで楽しもう!

(取材、著、写真:スイーツ番長/取材、データ文:蓮沼ちひろ)

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