「今の住まいに建て替えたのは14年前。当時の住まいが古くなり、ガス配管のトラブルもあったため 、建て替えざるをえなくなったんです。じゃあ、これを機に"いずれ子どもが結婚後に同居できる住まいを"と二世帯住宅を建てました。当時子どもたちはまだ結婚もしていなかったですけどね。幸いなことに息子に"同居でもいい"というお嫁さんが現れたのでラッキーでした」
「ですから、最初から結婚が"同居"前提でした。そういう流れになっていたというか(笑)。でも当時の私の勤務先にも近かったですし、自分で新居を探すよりオトク、一緒に住まないなんてもったいない!って考えていました。それに結婚と同時に同居、のほうが、"生活がそういうもの"と思えるから、後から入るより案外楽かな、とも思ったんですよね」
「実は、うちの実家も兄夫婦が私の親と同居しているんです。だからあまり抵抗感がありませんでしたね。それに、同居、といっても、私は働いていたし、キッチンもお風呂も別、2階に直接入る玄関もありましたから、子どもが生まれる前までは特にひんぱんに行き来する、という感じではなかったんです」
「今はこうした完全分離の二世帯住宅はめずらしくないですけど、14年前は新しかったんですよ。私も自分の趣味に忙しいし、お互いの生活に立ち入らない家のほうがいいなと思って、全部別の間取りにしたんです」
「特に子どもが生まれてから同居のメリットを実感していますね。お義母さんの協力なくしては、育児と仕事の両立はできません!!という感じ。昨年まで上の子と下の子が1年間別の保育園で、しかも遠くて送り迎えが大変だったんです。だからよく朝の登園の付き添いをお願
いしていました。さらに子どもが熱を出すと保育園を休まないといけませんが、仕事はそんなに休めない。そんなときにもお願いできて大助かりでした」
「娘家族も近所に住んでいて、2歳の娘がいるんです。3人の孫をそれぞれの保育園に送っていくのに朝は大忙しでした。でも身近で孫の成長を見守れるのはうれしい。大変だけれどかわいくて仕方ないですから」
「じっくり向き合って遊んでくれるのも助かります。たまに会うおじいちゃんおばあちゃんじゃないですから、きちんと叱ってくれるのも心強い。おむつがとれたのもお義母さんのおかげ。それから食材のおすそわけもありがたいです。よく子どもたちが下階で、茹でたばかりのほうれん草など、野菜のつまみ食いをしているみたいで、"じゃあこっちは1品少なくてもいいや"って手抜きしてます(笑)」
「それが特にないんです。というか私、本当に何も気を使っていないんですよ。おすそわけをもらっても"私、ピーマン食べられないんです"って言っちゃう嫁なんで(笑)。というか、たぶんお義母さんにすごく気を使ってもらっています。それに家にずっといる専業主婦ではないので、そんなに四六時中一緒にいるわけじゃないし、むしろ助けてもらっていることばかりですからね」
「お互い、気になることは言い合っていると思いますよ。私も自分の習い事で忙しいので、干渉する暇がないんです(笑)。今は、ちょっと孫育てがひと段落したので、ずっとお休みしていたソシアルダンスやピアノのお稽古も再開しますし、今はガーデニングにもはまってるんですよ」
1階が親世帯、2階が子世帯。2階に外階段の玄関があるが、子どもが生まれてからは使わず1階の玄関を共通で使っている
「同居」しかも「嫁、姑」となると抵抗感があるかもしれないが、「嫁のアレコレに口を出す」姑像は古いもの。自分の趣味にも忙しいイマドキの親世代には干渉するヒマはないようだ。むしろ、働くママにとっては姑は心強い助っ人で、姑側からすれば、自分は孫育てを楽しみつつ、「常に感謝される」というのは実の娘にはない喜びを得られるなど、相互が利益を得られるはず。さらに夫の収入が伸び悩む現代において、妻がフルタイムで働けることは最大のメリット。甘えられるところは甘えつつ、お互いの生活には干渉しすぎない「イマドキ二世帯」。住まい選びの選択肢のひとつにしてみては?
取材・文/長谷井涼子 漫画・イラスト/木村吉見 デザイン/キュリオデザイン