
老後資金って、どのくらいあれば安心なの?
住宅取得を検討時に資金計画を立てる際には、住宅ローンの組み方だけでなく、将来の教育資金や老後資金のことも考慮し、冷静に検討を繰り返した上で安全な資金計画にすることが重要です。
しかし、教育資金は平均額などをもとに、ある程度の金額を想定することは可能ですが、老後資金については、単純に平均額を使って想定した金額を準備しておけば安心できるかというと、実際にはケースバイケースだといわざるを得ません。
毎月の生活費は人によってかなり違う可能性があり、老後に受け取れる公的年金などの金額も同様です。極端にいえば、60歳時点で準備しておくべき老後資金の額が、1000万円程度の人もいれば、1億円程度の人もいるのです。
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また、さらに難しい問題として、老後を迎える20年後や30年後の物価水準がどうなっているのか、公的年金の支給額がどうなっているのか、などによっても準備しておくべき金額はかなり変わってきます。そういう意味では、このくらいの金額が準備できていれば確実に安心だといえる水準を正確に求めることは、誰にも不可能なのです。
とはいえ、正確に求められないまでも、ある程度の金額を想定しておくことは重要なので、物価水準や公的年金の支給額などが大きくは変化しないという前提で簡単に計算する方法を紹介しましょう。
まずは、毎月の老後生活費を予想します。生命保険文化センターの調査によれば、最低限の老後生活を送る費用としては月々約24万円、ゆとりのある老後生活を送るための費用としては月々約38万円が必要だそうですが、これらはあくまでも平均的なもの。重要なのは、現在の生活費をもとに将来かかるであろう生活費を予想することです。
毎月の生活費の内訳としては、
・食費や光熱費などの「基本生活費」
・家賃や住宅ローンなどの「住居費」
・学校教育費や家庭教育費などの「教育費」
・生命保険や損害保険、共済などの「保険料」
・交際費等の「その他支出」などに分類することができます。
細かく分ければもっと分類することは可能ですが、ある程度大きな分類で考えても問題ありません。
そして、これらの支出項目のうち、老後生活においてもかかる費用を考えます。
まず、「基本生活費」は、老後においても必ずかかります。子どもにかかる食費や通信費などは不要になる可能性が高いですが、老後生活費を想定する場合は、現在と同額か、1割減くらいで想定するのが無難でしょう。
次に、「住居費」。住宅ローンの返済が老後を迎えるまでに終了するのであれば、老後における住居費は、固定資産税や管理費・修繕積立金などの維持費の負担のみになります。一戸建ての場合で年間10~20万円、マンションの場合で年間30~60万円程度を想定しておくくらいで問題ないと思われます。
そして、「教育費」や「保険料」は、老後はあまりかからないのが通常です。最近は、「終身払い」ということで一生涯保険料の支払いが続く生命保険などもありますが、基本的には自動車保険や火災保険、地震保険などの保険料を毎年支払っている場合に、ある程度想定しておけばよいでしょう。
最後の「その他支出」は、老後においては交際費などの負担が多少重くなる可能性があります。また、医療費の負担なども一般的には重くなる傾向にありますので、それらを考慮して、現在の家計でかかっている費用の2割増か3割増くらいで考えておいたほうが無難でしょう。
このような流れで求められた老後の生活費が、仮に毎月20万円だったとすると、公的年金の支給額が現在の平均的な水準(夫婦2人で毎月23万円程度)と同程度であれば、年金だけでも生活はなんとかなりそうだといえますし、年金額が将来的に減らされる可能性があることを考えると、ギリギリ足りるかどうかといったところだと思われます。
もし、こうした計算をして不足額が発生しそうなときには、85歳まで生きた場合や90歳まで生きた場合など、いくつかのケースでトータルの不足額を計算してみるとよいでしょう。
仮に毎月5万円の不足が発生する場合は、年間60万円、60歳から85歳までの25年間では1500万円、90歳までの30年間では1800万円の不足となります。さらに、毎月10万円の不足が発生する場合は、年間120万円、60歳から85歳までの25年間で3000万円、90歳までの30年間では3600万円の不足となります。また、昭和36年4月生まれ以降の人は年金支給は65歳からとなりますので、定年になった後、支給開始までの生活費も必要です。
一般の会社員の場合は、これらの不足額を退職金や企業年金などでカバーできればいいですが、カバーできない可能性があるなら、退職までにきちんと貯蓄しておく必要があります。
このように、住宅ローンを組む際には、あらためて現在の収支状況から将来の収支状況を予想して、老後生活に支障を来さないかどうかを冷静に判断する必要があります。あわせて貯蓄の計画も同時に立てるくらいの慎重さが欠かせません。将来の物価水準や公的年金の支給額などを正確に予測することは困難ではありますが、少し悲観的だといえるくらいの予想をしておいたほうが、安全な資金計画を立てられる可能性が高まるでしょう。
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文/菱田雅生 イラスト/杉崎アチャ
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