今回、SUUMO編集部が注目したのは「みんなが選んだ住みたい街ランキング2015 関東版」(リクルート住まいカンパニー調べ)の「穴場だと思う街ランキング」8位、「今後、地価が値上がりしそうと思う街ランキング」5位にランクインした神奈川県の海老名。
以前から大規模開発が進む住宅地&商業地として、神奈川県民の間ではそれなりに注目を集めていた海老名ですが、2015年10月に西口地区がリニューアルされ、大型商業施設「三井ショッピングパークららぽーと海老名」がオープンしたのをきっかけに、注目度がアップ! 最近はテレビや情報誌に取り上げられる機会も増え、今後は「住みたい街」の上位へと着実に進化していくことが予想されます。
海老名とはいったいどんな街なのか? みんなが穴場と思う理由はどこにあるのか? ららぽーとオープン直後の街を歩きながら、海老名の魅力を探ってみることにしました。
県外や都内に住む人のなかには「海老名」という地名を聞いても、「ららぽーとがオープンしたことはニュースで知っているけど、どんな街なのか、いまいちピンとこないなぁ……」という人が多いと思われるので、まずは街の概要を簡単に説明しておきましょう。
海老名は神奈川県のほぼ中心部(県央)に位置する街。今でこそ人口約13万人を誇るベッドタウンとなっていますが、40年ほど前までは駅まわりにはほとんど何もなく、見渡す限りの田園風景が広がっていました。1980年代後半に東口の開発がスタートし、2002年に複合商業施設「ビナウォーク」が完成したのが、海老名が注目されるようになったきっかけです。
その後しばらくは「海老名でにぎわっているのは東口のみで、西口は田んぼが続く田舎町」という状況が続いていましたが、2012年に西口の開発事業が始まり、2015年10月に大型商業施設「ららぽーと海老名」がオープン。西口地区の開発が進んだことで新たな人の流れが生まれ、今や、ただのベッドタウンから、ショッピングやグルメ目的でわざわざ足を運びたくなる街へと大きく変貌を遂げています。
都心からは若干遠いイメージがある海老名駅ですが、小田急線とJR相模線、相模鉄道の3路線が乗り入れていて、都心や横浜方面への通勤通学には意外に便利です。
現時点では新宿まで所要時間約50分(小田急線急行利用)、横浜までは所要時間約25分(相模鉄道特急利用)となっているものの、2016年3月の小田急線のダイヤ改正で特急ロマンスカーの停車が決定しているため、来年春からは都心部へのアクセスが格段に便利になります。さらに2018年には相模鉄道がJR横須賀線と直通運転、2019年には東急東横線と直通運転を開始する予定で、新横浜駅や渋谷駅へも乗り換えなしで行けるようになります。
また、東名高速道と圏央道が走っている海老名は、マイカー保有者にとっても魅力的な街で、都内や湘南、埼玉方面へ気軽にドライブを楽しめるだけでなく、お盆やお正月にマイカーで帰省する際にも便利です。
まずは、10月29日に西口にオープンしたばかりの海老名の新名所「ららぽーと海老名」に足を運んでみることにしましょう。ららぽーと海老名は、ファッション、雑貨、レストランなど、全263店舗からなる駅直結型の巨大商業施設。神奈川県初出店となるグルメ店や、スタイリッシュなショップが多いことで話題を呼んでいますが、三井不動産商業施設本部リージョナル事業部の小島部長は、「この施設の一番の魅力は、人が交流する場所としてのコミュニティーゾーンを備えている点にある」とおっしゃいます。
「3階にエビセン・コアシス、4階にエビセン・フラットと名づけたセントラルゾーンを配置したのが、海老名店の最大の特徴といえます。エビセンとは、空間デザイン・ショップ・イベントの三つの柱を融合したスペースで、コアシスでは、”コドモゼミ”(親子で楽しめるイベントやワークショップ)を。フラットでは”大人ゼミ”(おとな向けの学びや体験をテーマにしたイベントやトークショー)を順次開催予定です」(小島部長)
ちなみにエビセンゾーンは、ただのイベントスペースではありません。コアシスには子どもを対象にした英会話フィットネスや写真館、フラットにはインテリアショップやブックカフェなども併設されていて、モノを使ってコト(体験)を生み出し、それによってヒトとヒトをつなげていくのが、このゾーンのコンセプトとなっています。
なじみのない街に新しく住み始める人のなかには、「うまく地域の輪のなかにとけ込めるだろうか? 新しい友人ができるだろうか?」と不安を感じる人も多いようですが、こうした文化的交流スペースがあれば、同じ趣味をもつもの同士や、子育て中のママたちのコミュニティが自然につくられていくはずです。
もうひとつ、ららぽーと海老名で、取材班が注目したのが、3階のフードコート「エヴィーバ!」。通常フードコートというとファミリー向けのイメージがありますが、ここは23時まで営業していて、アルコールやおつまみも類も提供しています。夜間はBGMや照明がムーディーに変わり、落ち着いた雰囲気のなかでディナーやお酒が楽しめるので、会社帰りにふらりと立ち寄って一杯やるのにもよさそうです。
次に東口を歩いてみましょう。ららぽーとが建つ西口は、JR相模線の駅がある場所で、小田急線と相模鉄道が乗り入れている海老名駅東口へは、屋根付きの連絡デッキで結ばれています(徒歩約3分)。
東口と西口の間に広がる約3万5000m2の「駅間エリア」は、今のところ空き地が目立ちますが、2016年から再開発工事が始まり、2025年には、マンション(31階建ての高層分譲マンション3棟)や商業施設2棟、オフィスビル2棟などが建ち並ぶ新しいエリアに生まれ変わる予定です。
デッキを渡りきった先に広がる東口には、「海老名中央公園」をぐるりと取り囲む形で「ビナウォーク」が建っています。ここは、デパート、ファッション、レストラン、生鮮食品店、医療機関、学習塾、シネコンなどが入った6つのビル「ViNA 1〜6番館」からなる巨大複合施設で、二階通路が施設間をつないでいるため、雨の日でも傘をささずに買い物や食事が楽しめます。
また東口には、ビナウォーク以外にも、ダイエーが入った「ショッパーズプラザ海老名」や「イオン」、「ヤマダ電機」などがあり、普段の生活のなかで必要なものは、すべて東口周辺だけでそろってしまいます。
そう言ってしまうと、西口に新しくららぽーとがオープンした意味が薄れてしまいそうですが、ららぽーととビナウォークでは扱う商品や店舗の雰囲気が少々異なっています。都会的なイメージが強いららぽーとに対し、ビナウォークは気軽で庶民的。普段使いの買い物には東口を利用し、ちょっぴりよそいき気分のときは西口を利用するという住み分けが、今後は徐々に進むと思われます。
それにしても海老名を訪れて驚かされるのは、チビッコの多さです。日曜にビナウォークを歩いているのは、ほとんどが子ども連れのファミリー客。公園内を嬌声をあげながら元気に走り回る大勢のチビッコたちの姿を見ていると「日本が少子化で悩んでいるのは本当なのか?」と疑いたくなってくるほどです。
なぜ、海老名にはこれほどまでに、子どもの姿が多いのでしょうか? 中央公園で幼児を遊ばせていた30代のご夫婦に理由を尋ねたところ、こんな答えが返ってきました。
「じつは海老名市は神奈川県のなかでも、子育てがしやすい街として有名なんですよ。子どもの医療費は無料。子育ての相談にのってくれる施設も充実しているし、おまけに郊外に一歩足を延ばせば自然もたっぷり残っている。私たちのような子育て中のファミリーにはうってつけの環境だと思いますね」
海老名市では、どんな子育て支援制度が実施されているのでしょう? 具体的な内容を市役所に尋ねてみました。
「海老名市では、子育て中のファミリーに安心して暮らしていただけるように、入院・通院ともに中学卒業まではすべて無料となっています。所得制限も特に設けてはいません。医療補助は市の財政状況を見ながら変化していくものなので、この先どうなるかの確約はできませんが、行政としては、今後もできる限り若いファミリーを応援させていただくつもりです」(海老名市役所保健福祉部子育て支援課)
東京都では中学卒業までの医療費免除がすでに当たり前となっていますが、神奈川県では市町村によって制度にばらつきがあります。例えば同じ県央エリアでも、相模原市と座間市は0歳〜小学6年まで通院&入院とも無料、中学1〜3年生は入院費のみ無料(1歳以上は所得制限あり)。大和市は0歳〜中学卒業まで通院&入院とも無料(1歳以上は所得制限あり)などとなっています。こうした状況を鑑みても、海老名市は子育てファミリーに対して、特に優しい街といってよさそうです。
また海老名市は、保育所の利用待機児童(現時点での待機児童数は0〜2歳児を中心に35名程度)を減らすため、保育園の整備にも積極的に取り組んでいます。市内には現在、公立保育園が6園、私立認可保育園が12園ありますが、平成29年度を目標に120名定員の保育園を1園、ゼロ歳児から2歳児に特化した保育園を2園(定員70名・90名)新しく設置する予定だとか。
ほかにも近隣のママたちとの情報交換ができる「子育て支援センター」や、育児の相互援助を行なう会員組織「ファミリーサポートセンター」など、子育ての関連の施設が充実しているのも、海老名市ならではの魅力です。
子育て中のパパやママにとっては、周辺の自然環境や文化環境も気になるところです。開発目覚ましい海老名駅周辺だけ見ると、人工的につくられた新しい街という印象がありますが、じつは海老名は歴史や文化を秘めた街で、古代から人々が住みはじめ、奈良時代には「相模国の国分寺」が置かれていたそうです。
ビナウォークを抜けた先には、今も「相模国分寺跡」が広大な原っぱとして残っているほか、縄文時代の遺跡や、古い社寺が市内に数多く点在しています。
また、市内にはホール(文化会館)や資料館、図書館、運動場などの文化施設も充実しています。なかでも注目すべきは、2015年10月にリニューアルオープンした「海老名市立中央図書館」。ここは民間企業(カルチュア・コンビニエンス・クラブと図書館流通センター)が海老名市から指定管理業務を請け負う形で生まれた施設(いわゆるTSUTAYA図書館)で、1階にはスターバックスコーヒーが併設されているほか、屋外テラスやキッズスペースも設置され、これまでの図書館の常識を打ち破るほど快適な空間となっています。
では、次は自然環境について見てみましょう。実際に海老名を訪れてみると分かりますが、マンションや商業施設などの都市機能は駅周辺に集中していて、駅から一歩離れると、緑豊かな丘陵地(東口)や、田んぼが続くのどかな風景(西口)が延々と広がっています。
さらに西口から15分ほど歩いた場所には、一級河川の相模川が流れていて、川の近くに整備された「県立相模三川公園」では、スポーツや鮎釣り、川遊び、バーベキューなど、四季折々の遊びがたっぷり楽しめます。自然環境はまさに申し分ないといっていいでしょう。
住環境の面に注目しても、神奈川県の県央エリアにある厚木市や座間市、相模原市、大和市などと比べて、優れている部分があります。これは人によって好き嫌いが別れるところですが、新興住宅地として1980年代以降に開発された海老名には、古い飲屋街や風俗街などの歓楽的な要素がほとんどありません。夜の繁華街としてもにぎわいを見せている厚木や大和、相模大野などと比べると、海老名は非常に健全な街。子育て中のファミリーにとっては、のどかな自然環境とともに治安の良さも、街としての大きなアドバンテージになっているといっていいでしょう。
話があちこちに飛んでしまったので、一度ここで海老名の魅力をまとめておきましょう。
改めて魅力を挙げてみると、すでに完成された街のように感じられるかもしれませんが、海老名はまだ発展途中にあります。今のところは、県央エリアの中心は隣接する厚木市というイメージが強いものの、今後、海老名駅西口には高層マンションや商業施設がどんどん増えていくことが予想されますし、西口と東口にまたがる駅間エリアの再開発も目下進行中です。のびしろを十分もった街だけに、今後の街の動向によっては、さらに利便性の高い理想的な住宅地へと変貌していくことが期待できそうです。
では最後に、記事を読んで「ぜひ、海老名に住んでみたい!」と思った方のために、おおよその物件相場を紹介しておきましょう。
マンションのほとんどは駅から徒歩15分圏内に建っていて、新築マンションは3500万円(3LDK)前後が主流。賃貸マンションの平均家賃は、3LDKで9.6万円、2LDKで8.01万円、ワンルームで5.8万円(2015年11月現在)。中古分譲マンションなら2000万円以下の物件もあります。
価格だけを見ると、「穴場だと思う街」、「今後、地価が値上がりしそうと思われる街」にランクインしたわりに、おトク感に乏しい気がしますが、恵まれた住環境や、今後さらに発展を遂げることを鑑みると妥当な価格と思われます。
悪く言えば「都会でも田舎でもない街」、プラスの言い方をすれば「都市の快適性と、のどかな田園風景が共存した街」、というのが現時点での海老名の印象ですが、人口が年々増え続けているのを見ると(人口増加率県内5位・平成22年度国勢調査調べ)、今後、海老名は「県央の核となる大都市」へと成長し、やがては「住みたい街ランキング」にランクインしてくることが予想されます。できれば人気が沸騰して家賃や分譲価格が上がる前に、物件を探し始めるのがいいかもしれませんね。