23区の西部に位置する杉並区。都会と郊外、両方の良さを併せ持ち、かつては文化人や学者が多く移り住んだことでも知られる。江戸時代には農村地帯が広がっていたが、関東大震災以降に都心の被災者が郊外へと移住しはじめたのを機に宅地化が進み、発展してきた。
区内にはJR中央線・西武新宿線・京王井の頭線・東西・丸の内線などが通り、都心へのアクセスも良好。また、杉並区内には約60路線ものバスが運行されているほか、市営のコミュニティバス「すぎ丸」も3路線ある。大人も子どもも1乗車一律100円(未就学児は無料)と利用しやすく、区民の交通手段として活用されている。
区内で人気のエリアは、高円寺や西荻窪。ともに独自のカルチャーが根付く。高円寺はかねてより古着屋やライブハウス、安居酒屋といった若者を引き付けるスポットが多い。そのため、多様な若者文化が集まり、独特の空気感を生み出している。また、西荻窪にはアンティーク家具の店が多く、昭和レトロブームの波を受けて注目が集まった。最近では個性的な飲食店やカフェ、雑貨店の出店ラッシュが続き、若い女性からも熱視線を注がれている。
また、行政サービスも住民の声を反映しながら、常に改善が図られている。子育て支援については、保護者への相談にきめ細かく対応できるよう「すぎなみ保育コーディネーター」を配置。さらに、保育園待機児童の解消につなげようと区保育室や認証保育所を増やし、サポート体制の拡充をはかっている。また、高齢者への支援策として、介護保険などの公的サービスを受けていない75歳以上を対象に、「安心おたっしゃ訪問」をスタート。支援センターの職員が困りごとなどを確認し、孤立を防ぐとともに問題把握に努めているようだ。
ほかにも、全国の自治体に先駆けて、革新的な取り組みを展開している。教育の分野では小学校教師の質を高めるために、各界から教授陣を集めた実践的指導を施す養成塾「杉並師範館」を区費で開設している。また、地域振興に向けた取り組みも活発で、区役所に「産業経済課アニメ係」を設け、国際的に評価が高まるアニメを地場産業に据えて、活性化に向けた試みが推進されている。
区民の”不満”を解消するために、真摯な取り組みを進める杉並区。暮らしに刺激を与えてくれるカルチャーと、住みやすさを追求する行政の姿勢が、支持されている理由なのだろう。