“学問の府”という意味から名付けられた文京区。その名のとおり、日本の最高学府である東京大学をはじめ、数多くの大学の本部が設置されている。また、かつては夏目漱石や樋口一葉、森鴎外といった明治期の文豪も居を構え、全体的にアカデミックな雰囲気に包まれたエリアである。
実際、教育環境は充実している。23区では4番目に小さい面積でありながら、私立の中学校や高等学校の数は2番目に多い。東大の登竜門とされるような小学校もあり、子どもを入学させるため当該の学区域に引越してくる保護者もいるほどだ。教育熱心なパパママにとっては大きな魅力かもしれない。
また、行政による子育て世帯へのサポートも多岐にわたっている。土曜日の午前中に実施される「サタデーパパママタイム」は、子育てミニ講座やパパママ交流の場を提供。さらに、離乳食にも役立つメニューを学べる「プレママ・クッキング」や、4カ月までの新生児がいる家庭に助産師や保育士が訪問相談をしてくれる「こんにちは赤ちゃん訪問事業」なども実施。ほかにも、昨年4月には自立した大人への成長を支援する中高生向けの専用施設「b-lab(ビーラボ)」が開館されるなど、子どもの成長段階に沿った包括的なサポートが展開されている。なお、待機児童の数は東京23区のなかでは少ない方だが、認可保育園への入園は狭き門だ。文京区では御茶の水女子大学と共同で、同大学の敷地内に区立の認定子ども園を開園するなど新たな試みも行っているが、引き続き定員拡大などの対策が必要となる。
それぞれの街に目を向けてみると、下町の風情を残す散策スポットとして人気の「根津」や「千駄木」、東京ドームシティが広がる「後楽園」、明治以降に政官財界人の邸宅が多く建てられた「本駒込」、東京大学の本郷キャンパスがある「白山」など、多様な表情をもつエリアに分かれている。自然豊かなスポットも多く、水戸徳川家の屋敷内につくられた日本庭園「小石川後楽園」は国の特別史跡及び特別名勝に指定。また、本駒込の六義園や目白の椿山荘、さらには季節の花々にまつわるイベントも充実していて、湯島天神の「文京梅まつり」「文京菊まつり」、根津神社の「文京つつじまつり」には、区外からも多くの人が訪れる
一方、春日・後楽園駅の周辺では再開発も進んでおり、オフィスや住戸として活用されるビルが集まる約2.4haの市街区が整備されている。街区には緑豊かな広場空間「グリーンバレー(仮称)」や、地下鉄駅までの動線をバリアフリー化する地下広場、歩行通路など生活者に配慮した空間づくり同時に整備するなど、環境にも配慮。施設には保育所や、医療施設も入居予定で、周辺地域の暮らしにもプラスになりそうだ。
ちなみに、「住みたい街ランキング」では、30位までさかのぼってみても、文京区に属する街はランクインしていない。それでも、住みたい行政区で5位につけているのは、区全体のイメージがよほど高いのだろう。