京都市の中心部を占める中京区。一昨年は12位、昨年は9位と徐々にランクを上げ、今年は6位まで上昇した。世代別の内訳をみると、シングルで5位、DINKSで7位、ファミリーでは9位と、各年代とも前年よりも順位を上げている点に注目だ。
2015年国勢調査によると京都市中京区の人口は10万9305人で、5年前よりも3999人・3.8%増加した。京都市全体の人口は横ばい傾向にあり、減少している区も多いなか、中京区では、2000年ごろを境にして人口増加のトレンドが継続している。都心回帰の動きが始まり、再開発などによって区内でも住宅供給が増える一方、高額物件に対しても富裕層からのニーズがしっかりと存在しているということが背景にありそうだ。
また最近は、京町家をリノベーションすることによって住居や店舗、シェアハウスなどに再生させる動きが20代・30代を中心に注目されている。「京都暮らし」を始めてみたい、という若年層が増えていることも人口増加の一因にあるだろう。
しかし、人口が増加すると、保育施設のキャパシティが足りなくなるのはどの街にも共通の課題だ。京都市の場合は2015年4月時点で2年連続の待機児童数ゼロを達成しているが、カウントの方法などによって、数字には表れないけれど子育てに悩みを抱える人もいるはず。引き続き手厚い対策が求められることになりそうだ。
区域全体に目を向けると、北は丸太町通、東は鴨川、南は四条通、西は西小路通あたりが他区との境界となる。鉄道路線は市営地下鉄東西線が中央を横切るほか、阪急京都線も中京区をかすめるようにして終点河原町まで延びている。鴨川沿いには高級ホテルも誕生し、観光客でにぎわう繁華街もある。それでいて、一本小路に入ると町屋や昔ながらの商店、さらに、低層のマンションが居並ぶ独特の街並みが広がっているのが中京区の特徴だ。
美しく調和のとれた街並みが保たれている背景には、景観保全条例の存在がある。建築物の高さが厳しく制限され、高層マンションなどの建築を制限することで景観を守っているのだ。また、細い路地が縦横に張り巡らされているため、まとまった土地を入手して大型マンション建設を行う事もハードルが高い。
特に御池、五条、河原町、堀川の各通に囲まれた「田の字地区」で分譲されるマンションには希少性があり、価格は1億円を超えるケースもあるのだが、こうした億ションも最近は好調に売れている。京都に憧れを抱く内外の富裕層が、別荘的な利用を前提にして購入しているケースもあるようだ。定住層ではなく、セカンドハウス層が増えることは都市にとっては必ずしも望ましいことではないだろうが、街の活性化や経済的な波及効果は期待でき、さらに求心力を高めることにつながるだろう。