マンガやアニメにまつわる店舗が集まるサブカルの殿堂「中野ブロードウェイ」、コンサートや結婚式が行われる「中野サンプラザ」など、有名スポットが点在する中野。JR中野駅前には商店街がいくつも連なり、人通りが絶えないにぎやかで少し懐かしさを感じる庶民的な街といったイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そんな中野が駅前の再開発を経て、新しい街に生まれ変わっています。それに伴い注目度も高まっており、SUUMOが毎年実施している「住みたい街ランキング2014」では、12位にランクイン。また、住宅や不動産関連で働く人の声をまとめた「不動産のプロがおススメする街ランキング」でも、1位 吉祥寺、2位 武蔵小杉に次いで、品川と同順の3位に中野がランクイン。さらには、不動産のプロが選ぶ「実は穴場な街ランキング」では、堂々の1位を獲得しているのです!
不動産のプロが推している中野には、いったいどんな特徴があるのでしょうか? じっさいに街を歩きながら、編集部が発見した魅力を紹介したいと思います。
まずは、中野についてザッとおさらいしてみましょう。
また、中野区に住む人の半数以上が単身世帯であり、20代の人口比率が高いのも特徴。ちなみに、「あなたは、もう忘れたかしら」から始まる歌詞で有名な昭和の青春ソング『神田川』のモデルになった場所も中野界隈といわれています。かねてより若者が住む街として定着しているのかもしれません。
では、地元の人々は中野の住環境をどうとらえているのでしょうか? 中野に本社を置く不動産会社「スペース」の西村亘さんと白髭純一さんにお話を伺ってみました。
「再開発で駅前が一新され、オシャレなお店やカフェも多くなりました。昔ながらの小さな商店も元気なので商店街も活気づいていますし、いい意味で新しさと古さが共存している街だといえるのではないでしょうか。新宿から数分という利便性抜群の場所にある割に、家賃相場が低いのも魅力だと思います」(西村さん)
「最近は駅周辺を中心に単身者向けのワンルームアパートが増えていますね。あとは築年数の経った建物が多いため、リノベーションをして内装を綺麗にして貸し出しているケースが多くなってきました。そうした影響もあってか、若い女性もじわじわ増えてきているように感じます 」(白髭さん)
西村さんのお話を参考に中野という街の魅力をざっくりまとめると
1. 再開発で街が綺麗になっている
2. 交通の利便性とコスパの良さ
3.昔ながらの商店街に活気がある
4.若い女性にとっても暮らしやすく、人気が高まっている
といった点が挙げられそうです。
では、そうした観点をふまえ、さっそく街を歩いてみましょう。
もともと暮らしやすさという点では抜群の環境を誇っていた中野ですが、最近は再開発という点でも注目を集めているようです。北口左方向に広がる駅前再開発エリアの「中野四季の都市(まち)」にやってきました。
東京ドーム約3.6個分の敷地には、住宅棟や高さ100m、地上21階建てのオフィスビル「中野セントラルパーク」、明治大学と帝京平成大学の中野キャンパス、早稲田大学の留学生向けの寮として利用されている中野国際コミュニティプラザがあります。なお、この一連の再開発で中野エリアには約2万人もの新たな人口流入をもたらしたそうです。
北口の整備は今も進行中で2018年以降に完了する予定。ほかにも新北口駅前広場ができるとか。今後もさらににぎわいそうです。
再開発による街の変化について、再開発と同時期に活動をスタートさせた「中野区観光協会」の理事長・宮島茂明さんにお話を伺いました。
「長い間変わらない場所だった中野が、いま再開発をきっかけに一気に変化を遂げています。そうした背景がありながらも、中野だったらイベントにしても事業にしても何かやれそうだなという空気感がありますね。中野はとてもオープンで、コミュニティの接点を持ちやすい土地柄です。都会でありながらお祭り事にも積極的で、横のつながりができやすいですね。観光協会として、今まで中野に住んでいた人とこれから中野に住む人をつなげていきたいですね」(宮島さん)
今後の展望を伺うと、「大学のキャンパスもできたので今後は学生と協働して、インターンの受け入れや学生主体の企画などを考えていきたい」と熱い思いを語ってくれました。再開発を契機に、街全体が活性化の方向へ勢いを増しているようです。
現在、中野区の総人口は約30万人で、その人口密度は23区中3位となっています(平成25年1月1日現在、住民基本台帳より)。中心部でもあるJR中野駅周辺には昼夜問わず多くの人が集まり、学生や主婦をはじめご高齢の方まで多くの人々が行き交っていました。
中野駅に乗り入れているのは、中央線・東西線・総武線の3路線。中央線快速に乗れば新宿まで約5分、東京駅まで約18分とアクセス良好。また東西線で大手町や浦安方面に、総武線で秋葉原・千葉方面に出ることができます。
アクセスの良さに続いて気になる家賃ですが、1K・1DKの場合は中野駅周辺の相場が8万2300円。ちなみに、新宿からの距離が中野と同等の代々木上原駅周辺の相場は9万5700円、また、ターミナル駅から急行(快速)で1駅という同じような立地の中目黒駅周辺の相場は10万6800円となっています。やはり中野は割安でコスパが良いといえそうです。(SUUMO掲載情報より 2014年11月27日時点)
続いて、北口を出て右手、買い物客でにぎわう「中野サンモール商店街」をのぞいてみます。
さらに、中野サンモール商店街から東側に脇道を進んでいくと、レトロな趣漂う「昭和新道商店街」を発見!
夜に華やぐ通りのためさすがに昼間は静かです。……と思っていると、どこからかギターの音色が聞こえてきました。
確かにこうしてみると商店街や飲食店の充実ぶりは目を見張るものがあります。地元の方々が集まるお店もたくさんあって、住むと本当に楽しそう。こうした中野のにぎわいはいつごろから形作られていったんでしょうか?中野サンモール商店街理事長の大月浩司郎さんにお話を伺いました。
「現在の中野サンモール商店街があるあたりは、すでに昭和の初めには商店街があり、終戦後に闇市ができたのですが、ロケーションの良さに恵まれていたこともあって人通りが多い場所でした。しかしその後、新宿や渋谷など魅力的な商業エリアが増えていくなかで、中野の商店街は古びたイメージから抜け出せずに置いてきぼりになり、低迷していた時期が長くありました。その後、中野ブロードウェイに『まんだらけ』が入ったことがきっかけで “中野=サブカル”という文化が生まれ、幅広く注目されました。そうして人が集まるようになり、商店街もだいぶ活気を取り戻しましたね。最近では外国からの旅行客も増えてきているんです。とんがったコンセプトの個店が多いので、そのお店目がけてピンポイントで訪れる人も多いんですよ」(大月さん)
確かに飲食店をはじめ店主のこだわりを感じるお店が多い印象。住んでみるといろいろな世界感に触れることができ、刺激や発見がありそうです。
日が暮れてきたところで、駅に戻ってみると「まちなかのバル」の前夜祭が駅前の広場で行われていました。「まちなかのバル」はチケットを購入し中野駅周辺の飲食店をはじめとする40近いお店を巡るイベント。なぜか、中野にある探偵社も参加。そのゴチャ混ぜ感も中野らしい魅力です。ちなみに、こちらのイベントを企画したのは、先ほどお話を伺った宮島さんが理事長を務める「中野区観光協会」。
前夜祭の司会を務めるのは、現役看護師にして中野在住のアイドル、メトロポリちゃんV(ファイブ)さん。
中野の魅力について聞いてみると、「こんな奇抜な私でも受け入れてくれるウェルカムな温かさがあります。私は一人暮らしですが、女性一人でも気兼ねなく食べに行けるご飯屋さんもたくさんありますし、衣食住が満たされていて本当に暮らしやすいんです」と教えてくれました。
確かに街を歩いていると、女性が一人で入りやすそうな飲食店も多いような気がします。そう思いつつ、歩みを進めていると中野駅南口から徒歩3分ほどのところに、こじんまりとした料理店「tententen中野」を発見。
カウンターがメインの10席ほどの店内では、全国から厳選したこだわりのカップ酒を25~30種類楽しむことができます。旬魚のお刺身や季節の食材を使った煮物など、お酒のお供も盛りだくさん。木目調で温かみのある店内は、ほとんどが女性の一人客で埋まってしまうそう。この日カウンターに立っていた女性のスタッフさんも関西から中野に引越して3年、「中野に住む人は優しい人が多くて、都会なのに田舎の近所づきあいのようなつながりもできます。住み心地は抜群です!」と太鼓判。
個人的に中野というと、男性向けの街というイメージでしたが、最近は女性のニーズにも応える街へと変化しつつあるようです。
新宿などの都心に隣接し、再開発によって働き世代や学生たちが増えるなかでも、どこかホッとするような懐かしさがある中野。商店を営む地元の方々のこだわりは受け継がれながらも、新しい文化や暮らし方を受け入れてくれる懐の深さ、それが中野の住みやすさの根底にあるのかもしれません。また、女性が一人でも気にせず入れるお店が多いのも、中野の新たな魅力として、今後注目されていくポイントではないでしょうか。「不動産のプロがおススメする街ランキング」だけではなく、「みんなが選んだ住みたい街ランキング」で上位に飛躍する日も近いかもしれません。
取材・文:末吉陽子(やじろべえ) 撮影:古末拓也