今年1月から深夜帯で放送されているドラマ『山田孝之の東京都北区赤羽』(テレビ東京ほか 毎週金曜深夜0:52~1:23)が話題を集めています。俳優として根深い悩みを抱えた山田孝之さんが、赤羽の街と人を描いた漫画『ウヒョッ! 東京都北区赤羽』に感化され、赤羽に引越してからの日々を追うというドキュメンタリードラマ。地元の人が集まるスナックや占いの館、ビルの上にある神社などディープなスポットや個性的な人々も登場し、ドラマのみならず街自体も注目されています。
そんな赤羽ですが、「みんなが選んだ住みたい街ランキング2015 関東版」の「実は穴場な街ランキング」(※)で2位にランクイン!さらに「2014年版 不動産のプロがおススメする街ランキング」(※)の「実は穴場な街ランキング」でも、なんと3位にランクインしているのです。ドラマの舞台にも選ばれ、不動産のプロもイチオシということで、いまジワジワきている赤羽とは……? 実際に街を歩きながら、その魅力を探ってみました。
(※)リクルート住まいカンパニー調べ
東京都と埼玉県の境に位置する北区。その北部に位置する赤羽は「北の玄関口」とも呼ばれ、交通の利を活かして流通や商業が発達したエリアとしても知られています。
まず、赤羽の特徴についてまとめてみました。
これらの特徴から、赤羽は
(1)生活の利便性が高い
(2)子育てファミリーが暮らしやすい
(3)昔ながらのディープな居酒屋が多い
という、三つの顔をもっている街と言えるのかもしれません。こうした点をふまえながら、さっそく赤羽を歩いてみたいと思います。
赤羽界隈を実際に歩いてみると、昔ながらの商店街と落ち着いた住環境が整っています。赤羽がある北区では近年、子育て支援に力を入れているそうです。その経緯について、北区役所の子ども家庭部・子育て支援課長の長沼さんに話を聞きました。
北区は東京23区のなかでも少子高齢化が加速度的に進んだ区で、平成13年の調査では65歳以上の高齢者が占める割合が20%を超えました。この結果を受けて、首都圏全体の子育て中のファミリー層に『北区に住みたい』と思ってもらえるような環境やサービスを発信していこうという方針を決めたのです。
そうして、子育て支援策の開発に重点的に取り組み、北区の実情や区民のニーズに合うように独自の支援策を確立していきました。平成18年には先駆け的に中学3年生までの入院・通院の医療費助成をスタート。また、最近では中高生世代が安心して過ごせる居場所をつくるため『ティーンズセンター』を設置していく計画も始まり、友だち同士で語らいができる場やダンスをはじめとするスポーツができる場として展開していきます」(長沼課長)
「子育てするなら北区が一番」をスローガンにしていることもあって、子育てに必要なサポートはすぐに実現させるというスピード感と意気込みが感じられます。なかでも、北区ならではのオリジナリティある子育て支援をいくつかご紹介しましょう。
上記のほかにも、様々な子育て支援策を展開しています。こうした取り組みの成果もあってか、出生率も上昇。平成15年には過去最低だった「0.95」という合計特殊出生率(女性一人が一生のうちに産む子どもの数)が、平成25年には「1.18」まで回復したといいます。
さらに、就学前児童の保護者を対象にした子育てニーズ調査では、北区における子育ての環境や支援の満足度を5段階評価してもらった結果、「4」という評価が4割超え。また、今後も「北区で子育てをしたいか」という項目に対しては約9割が「はい」と回答。区の取り組みは確実に住民の手助けとなっているようです。
また、区内にはママが気軽に足を運べるスポットも点在しています。なかでも、0歳から18歳未満までの児童を対象にした「児童館」は、小学生や乳幼児親子を中心に年間約80万人が利用。北区全体で25カ所と数もかなり多く、区内のどこに住んでいても徒歩10分程度の場所にあるので便利です。そのなかから今回、赤羽駅からも近い「赤羽児童館」を訪問してみました。
こうした乳幼児クラブは無料で利用可能とのこと。ほかにも、妊婦を対象にしたものを含め、5つの乳幼児クラブを開催。この日もほかに、1歳児が対象のクラブも行われていました。そこで、子どもと一緒に参加していたお母さんに、赤羽での子育てについて話を聞いてみることに。
「引越してからすぐ児童館を利用させてもらいました。保育園に預けずに子育てをしていると、外に出ることも減って悩みを相談できる人が少なくなりがちなのですが、児童館に来ることで職員に相談ができるので、とても心強いです。また、お母さん同士の交流や、子ども同士の触れあいも生まれるので、ありがたいですね」(42歳・子ども1歳・赤羽在住歴1年)
「北区は児童館が身近にたくさんあるので、2つくらい掛け持ちさせてもらって、いろいろなクラブを体験させてもらっています。あと、子どもが外に出たがるのですが、どんなところに連れていけばいいのか分からないときなどは児童館の職員さんに教えてもらったりしています。ちょっとした相談にも親身になってくださるので本当に感謝しています」(36歳・子ども1歳半・赤羽在住歴約20年)
児童館の存在はもとより、どのお母さんも子育て支援に対する満足度は高い様子。赤羽での子育てのしやすさは確かなようです。
ファミリーが住みやすい環境が整っている赤羽ですが、一方で庶民派の居酒屋が多い街としても有名です。なかでも、1000円でベロベロに酔っ払える、いわゆる”センベロ”がかなう飲食店が集結しているのが赤羽駅東口すぐの「赤羽一番街商店街」。朝から営業しているお店も多く、お酒好きをはじめグルメな人々も多く訪れます。毎年4月には、地元の商店主たちがエイプリルフールにちなんで実施したことに端を発する「赤羽馬鹿祭り」を開催。パレードや御輿が登場し、商店街を中心に2日間で約20万人が来場するそうです。
2017年4月には赤羽台団地のすぐそばに、東洋大学の情報系学部が開設される予定。北区役所の政策経営部企画課の青木さんは、「団地に住む方と大学生との交流や、地域産業と大学の連携協力に結びつけていけたら」と話します。
「大学開設が予定されている周辺の赤羽台、桐ケ丘団地は、高齢者の多い北区でも特に高齢化率が高い地域です。大学のキャンパスができて、学生の皆さんがこの地域に通われたり住まれたりすることで、地域の方との交流が生まれ、地域社会の活性化につながることを期待しています。そして、学生の皆さんに『ずっと住みたい』と思っていただけるような街にしていきたいと思っています。
また、学校法人東洋大学と北区は包括協定を締結しており、産学連携の推進や講演会の開催、スポーツに関する事業など、さまざまな連携を行っているところです。今後、赤羽台地域に大学が開設されるにあたって、学生の皆さんにご協力いただく事業なども、一層進めていきたいと思っています」(青木さん)
下町のような懐かしさや人情に触れることができる赤羽は、子育て世代にも優しい街へと変化していました。大学キャンパスの開設によって若者が増えることで、今後さらに新たな活気とにぎわいが生まれることでしょう。多様な魅力を兼ね備えた赤羽は、東京にいながらほっと一息つける、そして、あらゆる年齢の人が暮らしやすさを感じられる温かい街でした。
取材・文:末吉陽子(やじろべえ) 撮影:藤本和成