「定期借家」とはどんな賃貸?普通借家との違いは?メリット・デメリットも解説

最終更新日 2023年08月08日
「定期借家」とはどんな賃貸?普通借家との違いは?

「定期借家(ていきしゃっか)」という言葉を聞いたことがあるだろうか? 賃貸物件の契約形態に関する用語なのだが、最近問題視されている空き家の有効活用策としても注目されているのだ。ここでは、定期借家とは何か、普通借家との違い、定期借家はどういうメリットがあるのかについて、借りる側の立場から説明したい。

「定期借家」とは、どういうもの?

平成12年3月に「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」に基づき、優良な賃貸が供給されやすくなることを目的として導入された「定期借家制度(定期建物賃貸借制度)」により定められた賃貸住宅が定期借家である。
具体的には、賃貸借契約で定めた契約期間が満了すると、更新はできず契約終了するものだ。ただし、貸し主と借主の双方が合意すれば、再契約が可能である。

定期借家制度が導入された狙いは、良識のない借主に居座られたり、退去してもらうために多額の立ち退き料が必要になるなど、従来までの貸主の不利を是正することにあった。この制度により、貸主が安心して貸せるようにすることで、良質な賃貸住宅の供給増を目指している。
ちなみに、借主にとってのメリットについては、下で紹介する。
なお、ウィークリーマンションやマンスリーマンションなどもこの定期借家制度を利用している場合が多い。

■定期借家制度の認知(令和3年度)
定期借家制度の認知
出典:国土交通省「令和3年度住宅市場動向調査報告書」より

国土交通省の「令和3年度住宅市場動向調査報告書」によると、「定期借家制度(定期建物賃貸借制度)」に関する認知度は「知っている」15.1%と「名前だけは知っている」21.2%を合わせると4割弱であるが、それに対して「知らない」と回答した人は6割超という結果になっている。

普通借家と定期借家の違い

大きく異なる点として「契約の更新」の違いが挙げられる。
「普通借家」は借主が希望すれば契約期間が満了しても契約は更新されるが、「定期借家」は契約の更新ができない。つまり、契約期間が満了したら確実に終了する貸家契約である。「定期借家」が終了した場合でも、貸主借主合意のもと「再契約」は可能だが、「普通借家」の契約更新とは異なり、従前の契約内容と異なるケース(賃料があがるなど)もあり得る。

また、「普通借家」では契約期間を1年未満とすることはできないが、「定期借家」の場合は「定期借家3か月」などといった1年未満の契約も可能である。契約締結方法も、「普通借家」は口頭契約できる(あくまで法律上の話で実際には契約書を作るのが普通)。それに対し、「定期借家」は必ず契約書を作らなければならない。さらに契約書とは別の書面で賃貸人が説明しなければならない。「定期借家」は「普通借家」に比べて借主にとって不利な面が多いため、注意を促すために規定が設けられているのだ。しかし、一般的に、普通借家物件に比べて定期借家物件の方が家賃設定が低いことが多い。それぞれにメリット・デメリットがある「普通借家」と「定期借家」の相違点について簡単に下表にまとめてみた。参考にしながら条件に合う物件を選んでほしい。

普通借家 定期借家契約
契約期間の満了と更新 借主が希望すれば更新される
※貸主が拒む場合は正当な事由が必要
借主が希望しても更新はできない
※貸主借主双方が合意すれば「再契約」は可能
1年未満の契約 できない できる
契約締結 口頭でも可
※法律上の話。実務では契約書を作成するのが一般的
書面の契約が必要
※令和4年5月18日から電子メール等による契約も可能に
※契約書とは別の書面で賃貸人からの説明が必要
中途解約 契約に定めていなければ中途解約はできない 一定の条件(※)を満たせば借主からは中途解約ができる
※200m2未満の居住用建物で転勤、療養等のやむを得ない事情で使用が困難な場合

定期借家の物件数って、多いの?

平成30年の全国の賃貸住宅は1906万5千戸にのぼり、住宅全体の35.6%となっている(総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査」より)。そのうち普通借家(一般的な借家)の割合は96.0%を占めており、定期借家制度を利用している借家は1.9%(36万戸あまり)に過ぎない。(国土交通省「令和3年度住宅市場動向調査報告書」より)
海外の賃貸借契約では一般的な契約形態であり、日本でも物件数拡大の余地があると言えるだろう。

■賃貸契約の種類
定期借家制度の認知
出典:国土交通省「令和3年度住宅市場動向調査報告書」より

定期借家を借りるメリットとは?

定期借家物件の場合、借りる側のメリットはどのようなものがあるのだろうか。
主なメリットとして下記の6つが挙げられる。

1)1年以下の短期間での契約が可能である。
2)貸主は借り手がつかないということを避けるために、賃料を相場より下げたり、礼金を不要とするなどの事例が多い傾向にある。
3)再契約をする場合、従前の契約内容を見直すことが可能である。
4)通常の賃貸用住宅だけでなく、リロケーション物件(転勤期間中など一定期間だけ自宅を賃貸にする物件)の分譲マンションや一戸建てなど、良質な住宅を賃借できる可能性があり、物件選択の幅が広がる。
5)地方の物件を別荘やセカンドハウスとして利用することが可能である。
6)契約期間が5年~10年といった長期間の場合であれば、普通借家契約の場合に必要な更新手続きを行う煩わしさがない。

定期借家契約のデメリット・注意点

借りる側として、定期借家契約は通常借家の契約と違って、特別に注意しなければならないことがあるのだろうか。契約時に注意したいポイントを紹介しよう。

定期借家であることが明記されているか? 契約時に下記の3点について確認しよう。
(1)貸主もしくは不動産仲介会社から、「更新がなく期間の満了により終了する」ことを契約書とは別に書面で説明されたか
(2)書面による契約書が作成されているか
(3)契約書に契約期間(契約終了年月日)が明記されているか
借主側から中途解約はできるの? 中途解約は基本的にはできない。ただし、床面積200m2未満の居住用の建物については、借主が、転勤、療養、親族の介護などのやむを得ない事情により使用が困難となった場合には、借主から中途解約の申し入れをすることができる(申し入れの日から1カ月後に賃貸借契約が終了する)。
契約期間満了の通知とは? 契約期間が1年以上の場合には、貸主から借主に対して、期間満了の1年前から6カ月前までの間(通知期間)に「期間満了により賃貸借契約が終了する」ことを通知する必要がある。ただし、貸主が通知期間経過後に通知した場合、その通知の日から6カ月間は借主は建物を引き続き使用することができるが、その後は、再契約が整わなければ、退去しなければならない。
再契約はできるの? 契約時に貸主に再契約の可否や再契約時の金額、段取りについて確認しておこう。もし、長く住みたいならば、契約期間が5年、10年などの長期間の物件を探してみるといいだろう。

定期借家物件の大家さんになるには

賃貸経営というと、土地を買って、アパートを建てて…と、継続的に運営していく「大家さん(賃貸オーナー)」というイメージがあると思うが、実は、持ち家がある人なら誰でも大家さんになれる機会があるのが定期借家の特徴と言える。
自宅や別荘などを未使用の期間だけ定期借家として貸し出せば良いのである。極端に言えば、1日でも10年でも貸出期間の設定は貸主の自由。長めに設定すれば、その間、貸主は確実に収入を得ることができるわけだ。

では、普通の人が一体どういうケースで大家さんになれるのかを紹介しよう。

[活用例1] 転勤期間だけ留守宅を賃貸として貸したい

急な2年間の海外転勤の辞令が…。自宅を売るのか? 貸し出すのか? 空き家のままにしておくのか? 戻って来る時期が分かっている場合、不在期間を定期借家として貸し出すことで、空き家や自宅を手放すこともなく、賃料収入を得ることが可能だ。

[活用例2] 親が住んでいた一戸建てを貸したい!

高齢の親が交通・生活利便性が良い住宅に住み替える場合や親と二世帯住宅で同居する場合、親が亡くなった場合など、親の住居を空き家にせずに、定期借家として活用が可能。

[活用例3] 別荘・セカンドハウスを未使用期間だけ貸したい!

リゾート地や地方に所有している別荘やセカンドハウス。オフシーズンは使用していないという人は多いのではないだろうか。オフシーズンの短期間だけ、近隣相場より安めで定期借家として貸し出すことで有効活用が可能。

[活用例4] 田舎へ移住している間だけ自宅を貸したい!

田舎や地方への移住をした人の中には、一定期間で自宅に戻る人もいるとか。そういう場合、定期借家にしておくと、気兼ねなく戻って来れるので安心だ。まずは期間を決めて、永住できそうなら売却するなども状況に合わせて検討できる。

現在、定期借家物件は、普通借家に比べても物件数は圧倒的に少ない状況である。しかし、有効な空き家活用法として、個人や企業の遊休資産の有効活用法として、定期借家は今後の賃貸住宅選びの選択肢を広げてくれる存在になるのではないだろうか。

●国土交通省発行 パンフレット「定期借家制度をご存じですか…?」(PDF)
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/teishaku/pamphlet-shosai.pdf

●定期借家推進協議会
http://www.teishaku.jp/

●「定期借家」の賃貸物件を探す
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まとめ

定期借家契約とは、契約期間が満了すると更新はできず契約終了するもの(双方合意すれば再契約が可能)

定期借家のメリットは、1年以下の短期関契約ができたり、長期契約の場合は、2年間ごとの更新手続き・更新料が不要であること

デメリット・注意点は、中途解約は基本的にはできないということ。再契約の場合は、従来の契約内容を見直すことができるため、大家さんに金額や段取りを確認しよう

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取材・文/SUUMO編集部
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